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同居人の女の子達は肉食乙女  作者: トン之助
第二章 関係構築編
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乙女の戦いと乙女の秘密

 「なんだ……コレ」


 ソフィアの体調が良くなって翌日の月曜日の朝、俺はリビングの椅子で呆気に取られていた。


 「さぁ始まりました! 第2回……いや第2週『彼の隣は私のモノよ杯』実況はワタクシ、ショーマの正妻でお馴染み如月ソフィアがお送りします」


 「「「「「誰が正妻だぁぁぁ」」」」」


 俺含め、全員からのツッコミが炸裂する。そんなソフィアさんは……


 「だって〜昨日〜ワタシの〜初めてを〜」


 何言っちゃってんの?このロシアン娘は!


 「しょうくん?」

 「翔馬……」

 「先輩……」

 「全裸の刑だな」


 4人のこの反応よ!

 違うから、断じて違うから!


 そんな俺の否定は無に消え、肉食獣達の餌食になった……物理的に。


 「ぜぇ……はぁ……で、コレは?」


 俺はなんとか抜け出して、ソフィアに尋ねる。


 「今週のショーマの伴侶を決める戦いよ」

 「…………帰っていいか」

 「あなたの家はここよ! そしておかえりのキスを……」

 「やめいやめい! また、俺の意識が無くなるから」


 そんな彼女らは……風船をお尻に着けて、手には柔らかい棒を持っている。


 「コレは……」

 「戦いよ!」


 内容は風船を割って最後に残った1人が勝者となるバトルロイヤル方式。

 ちなみに前回は弥生さんとの激闘の末、ソフィアが勝利を掴んだのだとか……


 「あの……もう学校に……」

 「だまりなさい翔馬! これは負けられない乙女の戦いよ!」


 いつにもまして睦希が凄いやる気に満ち溢れている。小耳に挟んだ情報によると、皆とのアドバンテージを埋めるために必死なんだとか。


 「それでは……位置について……よーいスタートっ!!」


 ソフィアのノリノリな掛け声と共に戦いは始まる。


(ソフィ……体調良くなって良かったな)


 乙女の戦いを観戦しながら……俺はそんな事を考えていた。


 「おっ……葉月が会長を脱がせた! ってかなんで棒で脱げるんだよ……」

 「会長の仕様じゃない?」


 その隙に睦希が会長の風船を割る。


 「おおーと……弥生さんの流れるような回転からの〜葉月が危ない!」

 「いやいや……葉月の空手で鍛えられた体捌きは凄いぞ!」


 その後の展開は一進一退……3人共が満身創痍……そしてもれなく下着姿。


(会長の全裸体質がここまで侵食してるとは……)


 的はずれな事を考えつついよいよ決着の時。意外や意外……残ったのは、


 「はぁ、はぁ……やるわね……葉月」

 「ふぅ……ふぇ……睦希お姉ちゃんも……なかなかですッ」


 大方、弥生さんが勝つと思っていたのでこの2人が残るとは思ってなかった。

 そして……


 「覚悟ッ葉月!」

 「推して参る!」




 パァーン





 「やったわ〜! 翔馬の妻の座は私のものよ〜」

 「誰が妻だ、誰が……ったく」


 睦希の勝利に終わった。

 直前に葉月が、会長の脱いだ服に足を滑らせて、そのまま睦希の棒が風船を割る形で幕を閉じた。


 ◆

 「じゃあいってきまーす、皆遅刻するんじゃないわよ〜」

 「お前が言うな」

 「あてっ」


 睦希にデコピンをしつつ、2人で玄関を出る。まぁ遅刻はしないだろうが……


(それにしても……ずっとこの状態が続くのだろうか)


 「なんか不満そうね?」

 「はぁ……朝から元気な奴とは違うんだよ」

 「ねぇ……せっかくだから妻の権限で腕組んでいい?」

 「唐突だな……あと妻じゃない。まぁ怪我してない方で頼む」

 「オッケー」


 睦希ってこんなだったっけ? と思いながら2人で登校する。少し蒸し暑くなってきて制服が汗ばむ陽気。見ると睦希の制服も汗で少し透けている。しかしそんな事はお構い無しと言わんばかりに引っ付いてくる。


 「なぁ……睦希さんや」

 「なぁにダーリン」

 「はぁ、まぁいいや……俺のどこが好きなんだ?こんな優柔不断男他にいないぞ?」


 俺は昨日のソフィアとの事を改めて考えて、この機会に皆から事情聴取ならぬ、なぜ俺なのか?という事を聞いて回ろうと考えたのだ。


 「そんなの……わかんないわよ?」

 「はっ?」


 睦希は少しモジモジしながらそんな事を言い出した。


 「えっと……もう一度聞いていいか?」

 「なんど聞いても同じだと思うけど……」

 「……理由がない……か」

 「そうね……明確な理由なんて忘れたわ。ただ、気づいた時には頭の中にいっつも翔馬の姿があった。それは引っ越してから益々強くなったわ」

 「そっか……」


 恋は盲目と言うけれど、理由なんて無いのかもしれない。理由がなきゃ好きになっちゃいけない等と言うつもりも、毛頭ない。


 「ねぇ翔馬……」

 「なんだぁ?」

 「私の事……好き?」


 俺は睦希のその質問に答える事がなかなか出来ないでいた。ソフィアとの一件以来、軽はずみな言動は良くないと思ったからだ。だからこそ、いつの日か言ったセリフをもう一度言おう。


 「睦希の事を好きになる努力をする。だから時間をくれ」


 これが正解かなんてわからない。きっと誰にも……ただ、目の前の女の子を悲しまたくないだけの……俺のエゴ。

 そんな俺に彼女は……


 「うん! たくさん好きになってもらうよう攻めていくから!」

 「お、おう……」

 「あとこれは乙女の戦いと、乙女の条約なの」


 聞きなれない単語が飛び出した。


 「……条約?」

 「そっ! 今朝早くソフィアから招集がかかったの」

 「ソフィから?」


 俺が寝ている時に何かしてたのか。


 「ソフィアから正直な気持ちを聞いたわ……翔馬を独占したい事、でも私達の事も大好きって気持ちも……」


 なるほどな……だから今朝はあんなに吹っ切れてたのか。


 「それで、私達も思い思いの事を皆で話し合ったの」

 「ちなみに内容を聞いても?」

 「ふふっ! 乙女の秘密よ!」


 笑う睦希はスキップをしながら俺の前を歩く。まるであの頃に戻ったようなその表情は無邪気で、清々しい顔をしていた。

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