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同居人の女の子達は肉食乙女  作者: トン之助
第二章 関係構築編
71/94

覚める悪夢と実りの果実

 ◆

 「お前には失望したよ、自分で勧誘しておいて、結局自分が1番じゃなきゃダメなんだな」


(待って……ワタシはそんなんじゃ)


 「さっき言ってたじゃねぇか、他の女が俺とくっついてるのを見るとムカムカするんだろう?それで俺に八つ当たりしたんだろうが?」


(違う……ワタシは……)


 「じゃあな……」


 彼はワタシに背を向けて暗い暗い闇の中へと歩いていった……


 ◆


 「ッ!ショーマぁぁ」


 「どうした?ここにいるぞ」


 ワタシはベッドの上で天井に向かって手を伸ばしていた。そしてその手をひんやりとしたショーマの手が包み込む。


(はぁ……はぁ……夢……)


 「怖い夢でも見たのか?」

 「……はぁ……はぁ」


 呼吸を整えるのに苦労しているとショーマが冷たいお水を差し出してくれた。


 「……ほら」


 差し出された水をベッドから上半身だけ起こし、ゴクゴクと飲み干す。


 「落ち着いたか?」

 「……うん」


 深みのある彼の声……普段、ワタシ達の会話にツッコんでばかりの印象とは全然違う。2人きりのときのショーマはいつもの100倍カッコよく見える。


 しかし……さっきの悪夢が現実になるんじゃないかと思って、またブルりと震えてしまう。


 「してほしい事はあるか?」


 リビングでの一件の後、ショーマはワタシに寄り添って一緒に居てくれた。今はワタシの部屋で椅子に座り隣で心配そうな顔をしている。幸い今日は休日なのでずっと傍にいてくれる。


 「……手を握ってほしい」

 「……わかった」


 彼はワタシのおでこに冷たいシートを貼り直して、氷枕の氷を取り替えたあと、熱くなったワタシの手をそっと握る。


 「……冷たくて気持ちいい」

 「まだ、少し熱があるんだろう……傍にいてやるからゆっくり休め」

 「……うん」


 力なく答えたワタシに微笑む彼。


 「……ソフィ」

 「……な〜に?」


 ワタシが夢の世界に旅立つ前に、小声で話しかけてくる。頭がボーっとして曖昧な返事をする。


 「元気になったら……またデートに行こう」

 「……うん、約束」


 その言葉を最後にワタシは夢の中……幸せな夢の中へと沈んでいく。



 ◆


 どれくらい寝ていただろうか……ワタシは軽くなった瞼をゆっくりとあける。


 「……ぐぅ……ぐぅ……」

 「……」


 声の方を見るとワタシの手を握ったまま眠るショーマの姿がそこにはあった。


(……ずっと看病してくれていたの?)


 ワタシはその事が嬉しくて、ショーマの頭を優しく撫でる。


 「……ん……ソフィッ…………はっ」

 「おはよう、ショーマ。ワタシはここにいるよ」


 彼は慌てた様子でワタシの名前を呼び、一瞬夢か現実かわからないままじっと見つめてくる。


 「……夢……か……」

 「どんな夢を見てたの?」

 「……その、なんつうか……俺の優柔不断ぶりにソフィが愛想を尽かして、出ていっちまう夢をだな……」


 ショーマの言葉にワタシはほんの少しだけ嬉しくなった。同じような夢を見た事に、そしてそれに対して悲しんでくれた事に。


 「大丈夫だよショーマ……ワタシはここにいるから」

 「……お、おう……その、安心したよ」


 ショーマがしてくれたようにワタシもそっと彼の手を握る。


 「今、何時だ?」

 「えっと……日曜日の朝方かな?」

 「げっ!風呂もメシも食ってねぇぞ?」

 「あははははッホントだね!」


 ショーマは自分の体を鼻で嗅ぎ始める、それがおかしくてワタシも笑ってしまった。


 「体調はどうだ?」

 「うん、スッキリしてる」

 「念の為、熱計るか……」


 彼はそう言って体温計を取り出そうと立ち上がるが、ワタシはその手を強引に引っ張り、ショーマをベッドに引きずり込む。


 「……もしもし、ソフィアさん?」

 「な〜に?ショーマさん」

 「どうして俺をベッドの中に?」

 「なんとなく」

 「さいですか……」


 ワタシは片時もショーマと離れたくなくて、彼の温もりを感じていたかった。そしておもむろに、彼の手をワタシの服の中に入れる。


 「ソフィアさん!?」


 ワタシの2つの果実が実る服の中へと……


 「……熱ある?」


 今までショーマから触られた事がなかったその2つの果実が、今この瞬間実りを迎えたように熱くなっている。


 「ッあん……」

 「変な声だすなよ」

 「だって……気持ち……いい」

 「まだ……熱……ある……な」


 彼は諦めたように、ワタシの果実を優しく収穫してくれた。その事実がたまらなく嬉しくて、少しだけ前に進めた気がした。


(弥生さんありがとうございます。ワタシ達は肉食系女子ですもんね)


 「ショーマ……大好きだよ。もう……離さない。覚悟してよね!」

 「……お手柔らかに頼む」


 それと一番欲しい言葉を添えて。


 「俺も離さない」



 結局、睦希達が起こしにくるまで、ワタシはショーマの手の温もりを肌で感じ続けた。



 ワタシはやっと、自分に正直に生きよと思えた……そんな晴れやかな心の日曜日。

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