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同居人の女の子達は肉食乙女  作者: トン之助
第二章 関係構築編
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心とカラダのバランス

 チクタク……チクタク……


 時計の音がやけに大きく聞こえるリビングで、ワタシとショーマは向かい合って座っている。


(……なにから話せばいいんだろう?今のワタシはショーマと話す資格なんか……)


 ワタシ弥生さんから聞いたショーマの事を頭の中でぐるぐる考えていた。彼がワタシの為を思ってくれていた事。皆に協力を仰いでくれていた事……それなのにワタシは……


(まずは……謝らなくちゃ、ワタシが八つ当たりでショーマを傷つけたのだから)


 「ショ……」

 「ごめんな、ソフィ……」

 「…………ぇ」


 ワタシより先にショーマが謝ってきた。


(違うッ!謝るのはショーマじゃなくてワタシの方なのに……)


 それでも、ワタシの口からは言葉がでない。そんなワタシにショーマは申し訳なさそうに口を開く。


 「……ソフィが悩んでいた事は知っていた。ただ、結局何に悩んでいたかまではわからないまま、ずるずるとした日が続いた」

 「…………」


 彼の話している顔を見ると、今まで見た事無いくらい落ち込んでいた。少し前、睦希から聞いた両親を亡くした時に見せた表情が、今みたいな顔なのだろうか……彼は続ける。


 「俺はさ……その優柔不断だから……その事でソフィや皆を傷つけてるんじゃないかって思ってる」

 「……そんな事」


 ワタシはショーマのその思いを聞いた時に、胸が締め付けられそうになった。


(優柔不断はワタシの方よ……皆を誘うだけ誘って、勝手に嫉妬して、勘違いして、怒って、妬んで、それでも諦め切れなくて……)


 「……こんなことなら……」


(やめてッ!それより先の言葉を言わないでッ)


 「す…………に……ッ」

 ………………

 …………

 ……


 ワタシはショーマに抱きついていた。その先の言葉を聞きたくない一心で無我夢中でショーマに抱きついていた。


 「……ぅぅ……」

 「…………ソフィ……分かってやれなくて……ごめんな」

 「ううん……謝るのはワタシの方……ショーマは何も……これっぽっちも悪くない」


 彼は一瞬戸惑ったが観念したのかソっとその腕をワタシの背中に回してくれる。

 そしてワタシは彼の温もりの中で……胸の奥から溢れる涙の決壊を解き放つ。


 「う、うぅ……うわーん……ごめんなさいショーマぁぁぁ」

 ………………

 …………

 ……

 ワタシが泣き止むまで、暖かな腕で抱きしめてくれる。風邪の時よりもずっと熱い想いが胸を満たしてくる。


 そして、ひとしきり感情を解き放ったワタシに彼はホットミルクココアを用意してくれた。


 「……あったかい」

 「落ち着いたか?」

 「……うん」


 彼と隣通しにソファに座る。そして、ワタシの泣き声で目を覚ましたしらたまを彼が抱き寄せる。


 「ニャー……」


 ワタシにしらたまを預けた彼が優しく口を開く。


 「……ソフィ……聞かせてくれるか?」


 ワタシが何に悩んでいたのか……

 どうして怒ったりしたのか……

 そして、どうやったら仲直りできるのか……


 彼はワタシの肩を抱き寄せながら、そう言葉を紡ぐ。


(ワタシも仲直りしたい……そしてもっと一緒にいたい……あなたの傍に)


 「……聞いてくれる、ワガママなストーカー娘の話を……」

 「……監視者じゃなかったのか?」

 「ううん……今から話すのはただの、ストーカーの話だから」

 「……そっか」



 ワタシはその日の朝日が差す頃までショーマに今までの黒い気持ちを伝え続けた。

 瞳から雫が流れる事もあったけど、その度に優しくティッシュで拭ってくれる。ワタシの思いを一つ一つ噛み締めながら、彼は少し考えるような表情で優しく微笑んでいた。


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