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同居人の女の子達は肉食乙女  作者: トン之助
第二章 関係構築編
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後悔と反省と後押しと【如月ソフィア】

(なんであんな事言ったんだろう)


 私はベッドの中で、うなされながら今朝の事を思い出す。


『ショーマなんて大嫌い』


 今までも……そして今週になってからもショーマが私にどれだけ優しく、そして自分を犠牲にしてまで尽くしてくれたか。


(最悪の女ねワタシは……)


 心のままに叫んだあの時の光景を思い返しながら自分の頭に手を当てる。


(ショーマが皆とキスする事なんて日常茶飯事だったじゃない……それもワタシ達から一方的に)


 そして月曜日の事を思い出す。


(ショーマが自分からしてくれたのは、アレが初めてだった……だからちょっと浮かれていたんだ)


 それに……


『後ろじゃなくて、隣で一緒に前を見よう』


 あの言葉がワタシにとって、どれほど嬉しかったか……ショーマは気付いていない。特別になれたような気がした。自惚れだってわかってる。


(ただ……アナタの隣にずっと居たい)


 だからだろう、ここ最近のワタシの違和感にショーマも気づき始めている。昨日デートに誘ってくれたのもワタシを心配しての事。


(はぁ……顔を合わせずらいわ……)


 ふと時計を見ると……お昼の時間を過ぎていた。今日一日休みになったので、寝巻き姿のままだ。寝汗をかいたのとお腹が空いたので動こうとするが、体がだるくて起き上がれない。


(……まだ、熱があるのかしら)


 そのまま起き上がる事無くベッドに体をあずけてしまう。そんな時……


 コンコンッ


 「……ソフィアちゃん?弥生だけど、起きてる」


(……えっ?弥生さん?今日は大学のハズじゃ……)


 家に誰もいないと思っていたから、突然の訪問にビックリしてしまった。そして、今朝ショーマに八つ当たりにも似た事をしてしまった事の罪悪感と、張本人の来訪に胸が苦しくなる。

 それでも……


 「……はい、起きてます。どうぞ……」


 「失礼するわね」といって入ってきた弥生さんは、お盆と濡れたタオルを抱えて入ってきた。


 「……弥生さん、今日大学じゃ」


 弥生さんは少し困った顔をしたが、やがて観念したのか……


 「午前中だけね、午後は……サボっちゃった」


 てへっと笑うその顔は、幼く無邪気に見えてワタシ達よりよっぽど子供なんじゃないかと思えてきた。


(敵わないなぁ……)


 ワタシはまた黒いモヤモヤした気持ちが込み上げてくる。しかし弥生さんの次の一言でその感情は霧散する事になる。


 「それにね……しょうくんからのお願いなの」

 「……えっ?」


 ショーマからのお願い……その言葉にワタシは弥生さんをまじまじと返した。


 「今朝、しょうくんが私にソフィアちゃんの看護をお願いしてきたの。『多分ソフィアは

 色々抱えてるだろう、女同士の方が話しやすい事もある、俺じゃ……力になれそうに無いから』って」

 「……そんな事」


(ワタシはショーマに八つ当たりしただけだ、ワガママで嫉妬して、ショーマの優しさに甘えただけだ……)


 「ソフィアちゃん……しょうくんが言ってたわ……」

 「……な、にを」


 ワタシは頭が割れそうな程の罪悪感に押しつぶされながらも弥生さんの声に耳を傾ける。


『ソフィアにはずっと笑っていてほしい。アイツはずっと一人で耐えてきたんだ。だから俺が……俺達がアイツを支える。寂しいなんて感情をアイツから……ソフィアから取り除きたい!だから皆には協力してほしい』


 「…………」


 ワタシはなんて愚かなんだろう……自分一人で彼を独占したくて……それが叶わないから嫉妬して怒って怒りに任せて、彼を……ショーマを傷つけた。


 「会長の誕生日会の後だったわね……しょうくんがそう言ったのは」

 「それって……」


 ワタシはそこで確信してしまった。ワタシはあの時、ショーマが会長にネックレスをプレゼントしている所を見てから、この感情がとてつもない勢いで湧き出て来たんだと理解した。


 「しょうくんって、本当に私達の事をよく見てるわね」

 「……えっ?」


 ワタシは弥生さんの言葉がわからずに聞き返していた。しかし弥生さんはそれには答えずにお盆の料理をベッドに座りながら渡してくる。


 「まぁ……今度はソフィアちゃんの話を聞かせてね。それよりも食べて汗を拭きましょう!」

 「……はい、弥生さん……ありがとうございます」


 その後、ワタシは弥生さんに自分の想いを全て打ち明けた……嫉妬して後悔して、喋っていく内に頭がぐるぐる回って、何を話したか覚えていないが、弥生さんは黙って聞いてくれていた。


 ………………


 「……そう」

 「……ありがとうございます……と、ごめんなさい」

 「ソフィアちゃんが謝る事じゃないわ、それに独占したいと言うのは皆思っている事よ?」


 弥生さんの言葉にワタシは少し救われた。


 「弥生さんも……その」

 「もちろん、彼を私だけの物にしたいわ」

 「です……よね」

 「……でもねソフィアちゃん」


 弥生さんはワタシの顔を正面から見据え真剣な眼差しで見つめてくる。


 「……私はそんなソフィアちゃんも大好きよ、皆と過ごす日々が大好き!妹ができたみたいで楽しいの」


 それにね……


 「私達は肉食系女子よ?ちょっとやそっとの事じゃ動じないハートがあるじゃない!キスやボディタッチなんて唯のチュートリアルだわ!求めるのはその先でしょ?」

 

 弥生さんの目に闘志がゆらゆらと渦巻くのが見える。


 「それに昨日……てか今日の朝か……アレわね……その……ヤッてないのよ」

 「へっ……」

 「う〜ん……この話を本人にしてもいいのか……」


 弥生さんの最初の言葉はワタシにとっては予想外だったが、その後はウンウン悩んでいる様子。


 「やっぱりやめとこ!」


 そう言った弥生さんは優しくワタシの首に手を回しその柔らかなクッションに顔を埋められる。弥生さんの笑顔は暖かく、抱きしめてくれた胸の中はワタシの熱よりもずっと燃えていた。




 ◆


 ワタシはあの後、憑き物が取れたような感覚と眠れなかった影響でそのままずっと眠り続けた。

 ふと目が覚め時計を見ると、日付が変わっていた。まだ深夜の時間帯。


 体調も少し良くなり、喉を潤すために階段を降りリビングに向かう。


 ギィィ


 薄明かりが付いていたが、喉の乾きを優先してろくに確認もせずに扉を開く。そこには、


 「もう体調はいいのか……ソフィ」


 月明かりが窓から入ってくる時間帯……そこには、儚げな表情のショーマの姿がワタシの瞳に映し出されていた。


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