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同居人の女の子達は肉食乙女  作者: トン之助
第二章 関係構築編
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お昼ご飯は密の味

 キーンコーンカーンコーン


「やっと昼かぁ……なぁ翔馬、昼一緒に食わねぇ?」


 話しかけてきたのは、久々登場の春樹はるきだ。


(本当に久しぶりだなぁ。ちなみに本名は……なんだっけ?)


「……なんか悪口を言われてる気がする」

「ははっ!そんな事ないぞ春樹!でなんだって?」

「まいっか!いやさ昼飯を一緒に食わねぇかと思ってな」


 昔の俺ならその提案に頷いていたんだが、今は状況が違うからな。そんな思いを察してか春樹がバツの悪そうな顔で謝ってきた。


「あっ!悪ぃ……如月と食べるんだよな」

「すまんな、そういう事だ。春樹はあいと食べないのか?」


 俺は素朴な疑問を春樹に投げかける。あいってのは春樹の彼女な!……久々登場だけど。


「あぁ、愛のヤツ風邪で休んでるんだわ……」

「なるほどな、そいつは寂しいな」

「まぁな、帰りにお見舞い寄ってくかなぁ」


 春樹はその言葉と共に学食へと行くために教室を後にした。


「ショ、ショーマ〜助けて〜」


 情けない声で俺に助けを求めるソフィア。見るとソフィア親衛隊のメンバーがソフィア争奪戦を繰り広げていた。


 青組『ソフィア様に踏まれ隊』陣営


「ソフィア氏は我々と一緒に昼を共にするのでふ」

「ぶひひひひ、この豚の串焼きを食べてもらうのでぶ」

「我はめざしを献上するゾッ!」



 赤組『ソフィア様に教えを請い隊』陣営

「きっも、てか最後はなんでめざしなのよ」

「ソフィア様は私達と一緒にお紅茶を飲むのよ」

「そしてどうやったら彼氏をドMに……」


 賑やかそうで良かった。会話の内容はスルーしよう。一昔前のソフィアとは違い今は大勢の人に囲まれて楽しそう?……楽しそうかな?


「……ショーマ〜」


 教えを請いたいの女子メンバーに囲まれながら俺に助けを求める姿はいつもの也を潜めて可愛らしかった。俺はそんなソフィアを救出すべく歩み寄る。


「げっ魔王……」

「魔王の降臨だ!」

「に、にげろー」


 俺の事を見て一目散に逃げる踏まれ隊のメンバー。


「誰が魔王だ!ったく。はぁ……悪いな俺の彼女を借りてくぞ」


 俺の一言に教えを請い隊のメンバーは恐る恐るソフィアを解放する。ソフィアは「また今度」と言って女子達にウインクしていた。


「神よッ!」

「う、美しい……」


 どうやらソフィアは天然の女たらしのようだ。先入観を持たなければこんなに話しやすくて愛嬌がある彼女がモテないはずはない!

 ただ他のみんなは気づいてやれなかっただけだ……


「ソフィどこで食べる?」

「そうねぇ、天気も良いし外で食べない?」

「オッケー。テラス席がある所まで行くか」

「うん!あそこならちょっとした個室みたいなものだし、ちょっとした事があってもバレないし」


 彼女はどこまでも攻めた性格をしている。そんな彼女が可愛くて、愛おしくて、抱きしめたくなるのをぐっと我慢して俺は返す。


「……キスまでな」

「ワオッ!最近のショーマはデレてきてる!これは僥倖ね」

「お前の沼にハマりつつあるのは自覚してるよ」

「ソフィア沼?」

「底なし沼のソフィア沼」

「ぷっ!」


 あはは!っと二人して笑いながら気持ちの良い空の下を進む。

 周りでは購買のパン争奪戦の声……

 教室での一時を楽しむもの……

 校庭でバレーをして遊ぶもの

 職員室から香るコーヒーの匂い……

 木々の間から零れるキラリとした光……


 その全てが今しかないかけがえのないものに思えて少しの間、二人して佇んでいた。


「なんか……」

「あぁ……」

「「いいね……」」


 顔を見合わせてソフィアと二人で微笑む。最近になって彼女と価値観が似ている事に気づく。


「ワタシはショーマと出会えて良かったよ」


 隣にいる彼女からふと漏れ出た声。その声は俺の心の奥深くにじんわりと馴染んでいく。


「俺もソフィアに出会えて良かったよ」


 だからこそ、俺も精一杯彼女に応えよう!


「うん!じゃあ行こっか!」

「おう!今日はソフィが作ってくれたんだってな。そりゃ一段と楽しみだ!」


 俺達は手を繋ぎテラス席へと向かう。


 ◆

「……なぁソフィ」

「なーにショーマ」

「俺さ、だいぶん手を動かせるようになったんだが……」

「ん?だから?」


 俺はソフィアを真剣な顔で見ている。そして声も真剣そのものなのだが……彼女との距離は……ほぼゼロ


「だから……その」

「ん?」

「口移しをやめて頂けないだろうか?」

「や〜だ!んちゅー」


 俺の口に入って来たのはいったいなんの食べ物だろう。

 もうソフィアの味しかしないような気がしてくる。


(ソフィア沼恐るべし……)


 余談だがソフィアは最近、葉月に護身術の稽古をつけてもらっているんだとか……それと束縛術も。なので当然食事中の俺は縛られているので抵抗できるはずも無く……ソフィアにされるがまま昼食を終えるのだった。


 ◆

 放課後


「んじゃ、皆気をつけて帰れよ〜」

「「「はーい!さようなら」」」


 俺達のクラスはホームルームを終えて解散になる。


「あっ!あと日直は日誌書いて、掃除して帰れよー」


 先生はそれだけ言い残し教室を後にする。


「今日の日直誰だっけ?」


 黒板の近くの男子が日直が書いてある方を振り向く。


 ○月✖日(水)

 日直『神月・如月』


「おっ!魔王と女王様じゃん」

「おー!夫婦で日直かぁ……てか気づかなかった」

「……俺も今初めて知った」


 今日一日日直の仕事なんてした記憶がないんだけど……それはそうだ、ソフィアが率先してやっていたのだ。


「わりぃソフィ……任せちまってた」

「いいのよショーマ、旦那様の世話は妻の役目ですからッ!」


 それを聞いたクラスの反応は。


「おー!」

「さすが夫婦」

「翔馬は尻に敷かれるタイプだな」


(まぁ実際尻に敷かれているんだけどな)


「じゃあ皆また明日!」


 ソフィアの声に残っていた連中は各々のホームへと去っていった。残った俺達は掃除道具を取り出し、教室の掃除を始める。


「なぁソフィ」

「ん……?なぁにショーマ。二人きりになったからキスしたくなったの?」

「そうじゃなくてな……その、明日」

「明日?」


 最近のソフィアは何か悩んでいる。それが何かはわからないが、少しでも心穏やかに過ごして欲しい。今からの言葉はそんな些細な俺の気持ちだ。


「明日……デートしよう」

「えっ!デート?」


 ソフィアの反応はイマイチピンときていない様子だったが、俺の言葉を繰り返し呟くうちにその雪のように白い頬が紅に染まりはじめる。


(やっぱり可愛いな……)


 俺はソフィアからの返事を待つ間、彼女の顔を優しく眺めていた。


 コクリ……


 ゆっくりと、それでいてどこか恥ずかしそうに頷く彼女。


 きっと、俺の明日は銀色に染まるだろう。

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