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同居人の女の子達は肉食乙女  作者: トン之助
第一章 同居開始編
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憂鬱な心と、晴れやかな表情

 夢からの目覚めは、いつも突然だ。

 いい夢も、悪い夢も一重に同じ夢である。

 目を覚ます、覚醒する、昨日からの脱却。

 これからへの希望そして憂鬱。



「……はっ!」


 目覚めは突然だ。俺は昨日打ち上げ花火をした後、どうやら朽ち果ててしまったらしい。


「やべぇ、10時じゃん」


 大遅刻である。


 ムニ、ムニとする感触が体の上にある。ふと胸元を見るとなんとも微笑ましい攻撃を受けている事に気がつく。


「にゃー」


 猫である。いや子猫である。


「しらたまちゃ〜ん! 起こしてくれたんでちゅか〜?

  かわいいでちゅね〜」


 甘々である。そしてキモい。


 この猫様は、生後3ヶ月程の白猫で名前はしらたま。先住猫のぜんざいが産んだ子猫だ。他にも何匹も子猫が居たが、我が家族達があまりの可愛さに揃いも揃って引き取っていった。

 そしてこの家には、しらたまとぜんざいの二匹が暮らしている。


 適当に食事を済ませ、学校に遅れると連絡を入れ昨日の事を考えていた。


「正直学校行きたくねぇ。めっちゃ憂鬱なんだが」


 昨日の事があって逃げ出した為、彼女とどう接していいか分からない。


「まぁ、なんとかなるか」


 考える事をやめた奴は大体このセリフを吐く。しかし、俺は考える事をやめた訳ではなく、確信しているのだ。


「まぁ……あの頃よりはちゃんと笑えるようになったじゃん」


 俺は決して彼女と初対面じゃない、昨日はああ言って逃げ出したが、俺は彼女との出会いをしっかり覚えている。鮮明に覚えていると言ってもいいくらいだ。


「心は憂鬱だがアイツの顔を見るのは楽しみだ……ストーカーだけど」


 そう言いつつ準備を済ませ通学路を駆け足が早足になる自分が少し可笑しかった。



 ――――――



【如月ソフィア】



「どおしよう。彼が来てないよ」


 顔面蒼白である。


「昨日あんな大胆な事したからかな? 落ち込んだのかな? 寝込んだのかな? 熱でうなされてるのかな? ……まさか……身投げ」


 そう言ってワタシは机に突っ伏してぷるぷる震えてしまつう。


 時刻は11時過ぎ。


 授業の合間の小休憩の時間だ。持ってきた雑談に興じたりトイレ休憩に行ったり、中にはダッシュで購買に行ったり。そんな喧騒も耳に入らないぐらいワタシは落ち込んでいた。



「……らぎ」


「きさ……」



 誰かが呼んでる気がした。気のせいだろう。ワタシに話しかけようと思う人間なんてこの学校にはいない。


 ワタシの噂を知っていれば。


「おい……如月(きさらぎ)ってば」


 ポンッっと肩を叩かれたので、振り返ってみるとそこにはなんと……彼がいた。


 誰も近寄らないワタシに彼は話しかけてくれた。


「あぁなんだ、その……」


 ドキドキする胸を手で隠しながらワタシは彼の言葉を待つ。


「お、おはよう。今日もその髪……綺麗だな」


「――っ!」


 彼はポリポリと頬を掻きながらそう言ってくれた。『今日も』の言葉の真意を暫し考える。


 今のワタシの心はどんな表現もどんな言葉もきっと意味をなさないだろう。


 だってその言葉を聞いたワタシの顔と心はこんなにも……晴れやかなのだから。


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