百の困難を乗り越えて
俺達は自宅へと帰ってきた。
しかし誰も口を開こうとしない。
リビングに集まって俺は皆に自分の過去を話した。
今迄は、なんだかんだはぐらかしてきたから、俺から話すのが意外だったと言うのもある。
「ショーマ……その」
「ソフィありがとう気にしてくれて。でも大丈夫だ、もう割り切ってる。それに楽しい思い出も多かったしな」
「うん……」
その言葉に周りの皆も安心したよな顔をしている。そこで、俺は凪さんから聞いた事を思い出し考えていた。
(結婚ってやっぱり難しいのかな……)
凪さんから聞いた想いはとても重く自分の心におもくのしかかる。俺はとても真剣な顔と深刻な表情をしていたと思う。
「……」
「しょうくん、何か考え事?お姉さん達に話してみない?」
「あの……あの、私も先輩のお役に立ちたいです」
「むろん私もだ!」
「ショーマ……ワタシにはわかるわ。救いたいんでしょう?睦希達を」
「ッ!!」
皆からの励ましの声、そして最後のソフィアの言葉に俺はハッとした。
「みんな……そうか……俺は救いたいのか」
「ショーマの気持ちは皆がわかってる。だってアナタは……誰よりもどこまでも優しいから」
いつの間にか俺の手を皆が握ってくれている。その時改めて自分の手が震えていた事に気づく。そして体が冷えていた事にも。
母さんと父さんの事を思い出した事で、気づかない内に心がすり減っていたのだろう……
「うん、ありがとう」
そんな情けない姿の俺でも傍に居てくれる人がいる。彼女達はホントに強いのだと改めて実感する。俺なんかより遥かに《《心が強い》》事に。そして俺は自分のやりたい事を実行する決意をした。
「みんな頼みがある!助けてほしい……」
俺はその場で頭を下げた。
「もちろんよショーマ!」
「ふんすッ」
「戦じゃ!」
「お姉さんの実力見せてあげるわ」
改めて思う、俺の彼女達は最高の女性だ!
彼女達に俺が考えた計画を話した。我ながらちょっとぶっ飛んでると思ったが彼女達の反応を見ると間違いじゃない事がわかる。
「……素敵」
「お姉ちゃん顔赤いよ?」
「よくそんな事思いついたな」
「お姉さんビックリよ」
「そう言って貰えて良かった。後は睦希達をどうやって誘うかだが……」
そこで弥生さんが手をあげる。
「はい、弥生くん!」
「葵ちゃんと奏ちゃんに『お茶会のお誘い』って感じで招待状を送るのは?」
「ナイスよ弥生さん!」
「いいと思います!」
なるほどその手が!
「ふむ!ならば衣装は皇家の方で用意しよう!」
「頼むからマトモなのだぞ?全裸とか勘弁な」
「心得た!」
衣装は変態に任せるとして、場所はどうするかな。
「あの先輩!場所はここがいいと思います!」
葉月からの提案だ。
「ここかぁ……うん、そうだな!ここにするか!」
俺はその日を特別なものにしたかった。そしてその光景を天国の父さん母さんじいちゃんばあちゃんに見せたい。それは確かに、この場所が一番かもしれない。
「葉月ありがとう」
俺は葉月の頭を優しく撫でる。
ふみゅと可愛らしい声を出して茹でダコみたいになっている。どうやら物理耐性は弱いらしい。
そしてソフィアを見ると、微笑みを浮かべ銀の髪が眩しく、まるで聖母のように優しく俺を見ている。俺はその光景を見てドキッとしてしまう。
(うわぁ。これはヤバい……恋してしまいそうだ)
「ショーマ……大好き♡」
その言葉に俺の心の中に暖かな風が吹くのがわかった。とても心地よい風だ……
そしていよいよ、勝負の時が始まる。