無心になるという事は、没頭する事と見つけたり
心穏やかに生きるということ。
安らぎを求めるということ。
人は安寧を求めるとき何を思うのだろう。
傍に愛する人がいる時か。
はたまた一人の時間を謳歌する時か。
風景を見て芸術を見て音楽を聞いて心を磨く時か。
俺の心は無だ……俺がこの世界の支配者であり絶対的な力を持っている。
俺は自分の閉ざされた世界で精神統一を行っていた。
今日のあの出来事は忘れてしまおう。きっと夢だ。このまま無限の世界に行けば忘れる事ができる。
心を無に……
無心に……
ムニ……
ムニムニ……
「って忘れられるかぁぁぁぁぁぁ!!」
大絶叫である。
「なに、あの柔らかいの? なんなの? ホントに唇なの?」
「プリン? マシュマロ? ビーズクッション? めっちゃわやわらけぇぇぇぇ」
大興奮である。
時刻は午後8時。あれから2時間程過ぎた頃である。俺は風呂も飯の事も忘れて、あの時の感触を必死に思い出していた。
「やべぇ……超やわらかかった。あと首を噛まれた時に当たったあの胸……やべぇ」
大富豪である。
「そうだよ、俺、いつの間に大富豪になっちゃったの? どうしたの俺? 知らない間に金を貢いでたの? なんでぇ?」
意味不明である。
それだけパニックを起こす程、衝撃的な出来事だったのだ。そして、あんな衝撃があったなら男子にはやらなければいけない義務……いや使命がある。
無心になる事である。
俺のように……
俺の……
おれ……
めっちゃエロ本見てた。
『ロシアン美女はいかがですか?』
なんてタイトルも見えたりする。帰る時に本屋で吟味したものであり、それと並行してパソコン画面には金髪ねーちゃんのうふふな動画、左手のスマホにはコスプレしたねーちゃんのうふふな動画。ナイスマルチタスクである。
「はぁぁぁ。感触が残ってるうちに早くやらねば。これは可及的速やかに処理せねばならぬ。義務である!」
そんなアホな事を言いながら、スピードは止まらない。
「どこまでも行くぜぇぇぇ! 銀髪美少女サイコーー!!」
この後、ロケット花火を3発程打ち上げて、深い闇の中……それでいて幸せな闇の中に落ちてゆくのであった……薄れゆく意識の中で、俺が開いた悟りとは。
無心になるという事は、没頭する事と見つけたり!
単なるアホである。