連休終わりと裸の大将
長かった連休も終わり日常が繰り返される。
連休の終わりはどうしてこうも憂鬱な気分になるのだろう。
それは過去の日々が楽しかったからか、はたまたこれから来る平凡な日常が退屈だからか。感情とはその時の気分によって変化する。それは一緒に過ごす人に左右される事もあるだろう。
ソフィアと葉月は初めに会った頃の険悪なムードはどこへやら……最近は本当の姉妹のように仲がいい。うん、いい事だ!
今も二人で朝食を作ってくれている。これがホントに美味いのだ。
葉月の料理スキルは月美さんから教わってるから文句なし、それに追随するようにソフィアも勉強中なのだ。
朝食を食べているときにふと俺は思ったことを口に出した。
「二人共……その……なんだ、いつもありがと」
俺はブランさんに言われた事を少しづつ実践して行こく事にした。
「「――――っ!」」
俺の発言が意外だったのか、箸からトマトを落としたり、お茶を飲む手が止まっている。
「ショーマがデレた……」
「…あの、あの、もう一回言って下さい」
「いや言わねぇ」
俺は恥ずかしさのあまり顔を背けた。こんなに恥ずかしくなるとは。いつも真正面から気持ちをぶつけてくる二人はすごいな。とそんな事を思っていた。
「葉月、ショーマの初めてを貰う日も近いわね!」
「ですです! 初めての時は怖いので三人でしましょう!」
訂正。俺の貞操が危ない!
「やっぱりお前達、俺の体が目当てじゃねぇかぁぁぁ」
ちょっとでも感心した俺が馬鹿だった…
「「てへへっ!」」
拝啓、父上母上……肉食系女子が怖いです。
連休明けのテンションは少し憂鬱だが彼女達のおかげで退屈せずに済みそうだ。
三人で登校し階段で葉月と別れて教室に入る。
「おは〜」
「久しぶり〜」
「元気だったか?」
クラスメイトとのたわいない会話をしつつ、連休はどうしてたとか、彼女ができた、ライブに行ってきた等話題に事欠かない。
そして授業もスローペースなのがありがたい。
放課後になってソフィア達と帰ろうとした時、校内放送が聞こえて来た。
「コホンッエホンッ……二年一組の神月翔馬! 至急生徒会室に来たまえ! 尚、拒否権はない! 五分以内に来なければキミの恥ずかしい写真をばら撒くぞ。それと一人で来るように!」
厄介事の匂い。
「はぁ〜」
俺は深いため息を吐いてソフィアを見る。
「ショーマ……今の放送って会長?」
「間違いない。あんな脅し方会長以外にありえない。いや、ソフィと葉月もか」
「失礼ね! 私は写真じゃなくて動画にするわ」
「どっちも一緒だわ! まぁとりあえず行ってくる。葉月と一緒に帰っててくれ。鍵は渡しとく。今度二人の合鍵作ってやるよ」
「それと今日は連休明けで同好会は無いから。それで……もし暇なら公園に行って葵と奏の相手してくれたら助かる」
俺はお子ちゃま二人の相手をお願いする。
そして財布をソフィアに渡し、何かお菓子を買って行ってくれと付け加える。
「ワオッ! 合鍵楽しみね。葵ちゃんと奏ちゃんが居たらでいいのよね?」
ソフィアは俺の財布を受け取りながら合鍵の二文字に興奮していた。
「それと時子さんも居たら話し相手になってくれ。あの人は話し好きだから。ソフィ達が茶道に興味を持ってくれたら今度時子さんの教室に連れてってやるよ」
「うんありがとOKよ! 気をつけてね? それと夕飯何がいい?」
ソフィアは、ホントに素直になったな…
「ハンバーグ」
「口移しで食べさせてあ・げ・る! ふふっ楽しみ♡」
前言撤回
「うるせぇ! さっさっと帰れ!」
「ふふっ! んじゃばいば〜い」
俺は行きたくないオーラ全開だったが仕方なく生徒会室に向かった。
生徒会室は教員棟の最上階に位置し端の方にある。
(……多分文化祭の手伝いとかやらされるんだろうなぁ)
コンコンッ
「会長来ましたよ!」
「よく来た! 入ってくれ!」
俺は生徒会室の扉を開けて中に入った。
ちなみにこの部屋は会長専用である。実質私室だ。
こことは別に同じ棟の1階に本物の生徒会室が用意されている。
会長が俺を名指しで呼ぶ時はこの私室の方だ。
職権乱用じゃないか。
俺が中に入ると少し薄暗くて室内がよく見えない。
するとガチャリと鍵が閉まる音が扉から聞こえた。
タラーと嫌な冷や汗が出る……
「ふむよく来た翔馬! まぁ座ってくれ!」
会長は俺の正面に位置し、レースのカーテンから入る光の加減でシルエットしかわからない。
目の前のソファを指さして座れとの事だ。
「どうした翔馬! 遠慮はいらんぞ!」
「会長」
「なんだ?」
「服着てください……」
俺の目の前のソファには脱ぎ捨てられた制服や下着がある。
「何を言う! キミと話す時は全裸待機と決まっているだろう?」
「いや意味違うから! そもそもなんで学校で脱いでんですか? 馬鹿なんですか?そ うでしたね会長は馬鹿でしたね!」
俺は頭が痛くなってきた。
いつも俺と会う時はなぜか服を脱ぎたがる。会長って裸族だったなぁと遠い過去を思い出していた。
「安心しろ! パンツは履いている!」
「そうじゃねぇよ」
どうして俺の周りには変態ばっかり集まるんだよぉぉぉぉ
その叫びは室内に木霊した。