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同居人の女の子達は肉食乙女  作者: トン之助
第一章 同居開始編
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突撃白咲道場〜勝てると思ってたのは俺だけでした〜

 葉月が突然押しかけて来た時は勢いに任せてOKしてしまった。しかし本人から親を説得したからと言っても俺は信じられなかった。


「葉月、とりあえず親に電話してくれないか? そして俺に替わってくれ。」

「せ、先輩は信じてないんですか?」


「正直言って信じてない。空手道場をやってる家が一人娘をほいほい外に出すわけないだろ? それとお前の親過保護だって言ってたじゃん」


 葉月の家は空手道場で親が過保護だと聞いていた。だから葉月には空手を教えたり防犯グッズを持たせたりしていたのだ。


「わかりました。でも無駄だと思いますよ?」

「話を聞くまでわからないさ」


 俺は内心嘘だろうと思っていた。仮に本当だとしても俺には作戦がある。


 プルプルプル……ガチャ


「もしもしお父さん? さっきは送ってくれてありがとう! あのね――」


 さっきまで家の前までにたの?

 じゃあ挨拶するよね?

 知らない男の家だよ?


「先輩……どうぞ」

「あ、あぁ」


 腑に落ちないながらもスマホを受け取る。


「初めまして、自分は白咲葉月さんと同じ高校に通っています神月翔馬という者です。実は娘さんの件で相談したい事が」


 対外的な装いの声で自己紹介を済ませ、話の本題に入ろうかとしたとき……


「君が神月翔馬くんか。話は娘から聞いている。ワシは葉月の父親の白咲玄吉しらさきげんきちという」


 返ってきたのはいかにも威風堂々とした声の持ち主だ。名前も古風でカッコイイと思ってしまった。


「改めて娘を頼む! 君になら任せていい!」

「っんは?」


 予想外すぎる奇襲にそんな声も出ますって!


「いやいやいや、ちょっと待ってください!話が早すぎますよ?」

「キミは娘を助けてくれた。それも二度もな」


「えっ?」

「娘の話のほとんどは、神月くんの事ばかりだ」


 ホッホッホと笑う玄吉さん。


 俺は電話では埒があかないと思ったので強行手段に出る事にした。


「あのおじさん。今からお宅に伺ってもいいですか? ちょっと色々誤解してると言いますか……自分の事を理解してもらうと言いますか」

「ふむ結婚の挨拶か! 一向に構わないぞ待っておる!」

「えっ? いや、ちが………」


 プープープー


 電話は切れてしまった。

 そして俺の思考も切れてしまった。

 一時して俺の状態も元に戻り、ソフィアと葉月に今から白咲家に行くと伝え、二人にも着いてきてもらう。二人がいるというのが今回のミソなのだが。


 葉月の案内に従い白咲家へと到着した。

 前もって、俺オススメの羊羹や煎餅が入った菓子折りを買っておいた。


「すげーな」

「大きいわね!」


 白咲家は空手道場をやっているだけあって凄く大きい家だった。武家屋敷を思わせるその作りはテレビに紹介されてもおかしくないだろう。

 そんな中、案内された居間に俺達三人は座っている。


「失礼するぞ!」


 入ってきたのは着物に身を包み髭が逞しい筋骨隆々の紳士だった。

 そして、その一歩後ろからこれまた落ち着いた紫の色合いの着物を着たべっぴんさんがいた。

 葉月の母親だろう。簪を髪にさして纏めている姿がとても印象的だ。柔らかい表情と慈愛に満ちた笑み。葉月はお母さんに似たのだろう。


「突然の訪問にも関わらず時間を作って下さりありがとうございます。改めまして神月翔馬です。つまらない物ですがどうぞ!」

「あらあらまぁまぁご丁寧にどうも! 有難く頂戴するわね!」


 そう言って葉月のお母さんは菓子折りを受け取ってくれた。


「ふむ実際に見ると礼儀正しくいい男じゃないか! それに鍛えておるようじゃしの! 改めて白咲玄吉と申す。こちらは妻の月美つきみという」


 玄吉さんの言葉に月美さんも丁寧にお辞儀をしてくれる。


「あの……実は早速で申し訳ないですが、俺の事を知ってもらおうと思いまして」

「うむ!」


 俺は右隣に座るソフィアの肩に手を置く


「俺がお付き合いしている女性、如月ソフィアです」


 ソフィアは緊張しているのか表情がぎこちない。


「そして……なんといいましょうか、娘さん……葉月さんともお付き合いしています!」


 俺は正直に話す事にした。女性二人を彼女として侍らせている不届き者に娘は任せられない!と思わせる作戦だ!

 こんなに古風で威厳がある家ならば当然反対してくれると思ったのだ!


「二人の女性とお付き合いしている自分は優柔不断でどちらからの好意も曖昧な態度を取っています。そうなれば傷つくのは娘さんだと思います。なので俺の家に同棲させるのは考えた方がいいかと……」


 葉月を見ると下を俯いている。

 そりゃそうだよな……俺が情けなく見えたよな。

 そして白咲家の二人は沈黙している。

 これで葉月を俺からの呪縛で開放してあげれば…

 そんな事を思っていると


「ぷっ、あはははははっ!」

「くすくす……ふふふ」


 葉月家の二人が笑いだした。訳が分からず隣を見ると、ソフィアと葉月まで顔を下にして笑っている。


「いやぁ! 君は葉月のに聞いていた以上に立派な男だ!」


 あっ……これデジャブじゃん。

 俺は如月家の面々とのやり取りを思い出していた。

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