自分の評判を気にするより、彼女の評判を気にしたい
月曜日から学校が始まる。
それは楽しみにしている人ならウキウキ気分だろう。しかし、何か影があれば憂鬱な気持ちにもなる。
俺が入院する前にやらかした事は正直後悔はない。俺の評判はどうでもいい。ただ、その事でソフィアの評判が落ちたら俺はどうすればいいのだろう。
「はぁ〜憂鬱だ〜」
「何が憂鬱なの?」
「う〜ん、いや何でもねぇ」
さすがに本人には聞けないしなぁ
「まぁソフィと一緒に登校できるからいっか!」
「だんだんショーマが素直になってきてる。これは今夜あたりイケる? やっちゃう?」
本人は心の中で独り言を言ってるだけだがダダ漏れである。背中がゾクッと震えるがスルーしておこう。
「じゃあ学校行きますか!」
「レッツゴー!」
俺の家から一緒に登校する。いつも時間ギリギリに登校していた俺だが、少し早めに着くようにした。
「二人で登校とか新鮮だな!」
「だね! 愛するダーリンと一緒だからすっごく楽しいよ!」
「はいはい」
道中で同じ制服を着た生徒達は俺達2人を見ると道を開けたり、目を輝かせたり、モジモジしたりしている。
まぁ効果はあったのかな。
そんな事を思いながら学校まで登校し教室に入った……その瞬間。
「出たぁぁぁ! 魔王様のご帰還だぁぁぁ!」
「王女様と一緒に登校よ!」
「者共、玉座を用意しろ!」
「……何これ?」
俺は思考停止していた。
「よう翔馬! いや魔王様! ハッハッハ。怪我の具合はどうだ?」
「春樹、これどゆこと?」
俺は春樹に状況の説明を求めた。
「この前の一件でクラス中……いや学校中がお前に逆らうのはヤバいって思ったらしくてな」
「それでなぜこうなる?」
見れば男子達が俺に片膝立ちで頭を下げている。女子に至っては、俺の事を潤んだ瞳で見つめている。
「お前の魅力に気づいたんだろう?」
「いや俺はボコられただけだぜ?」
「男子達はともかく、女子達にはそこがポイント高いみたいだぜ?」
「……んん?」
「身を呈して彼女の為に戦った。これが乙女心にズキューンと来たらしい」
「ズキューンって……」
「とにかくだ! 今後はお前達の身は安全だと言う事だ。生徒会長も先日の事で容赦はしないって全校集会で言ってたからな!」
俺の評判はともかくソフィア達が安心して学校に通えるならいっか。俺の心は少し晴れやかな気持ちになった。
その後は女子達がソフィアに質問攻めの嵐。俺は男子達から、モテる為になにをすればいいか?と、てんやわんやだった。
昼休みまでクラスメイトの相手をするのは嫌だったのでソフィアを連れて教室を出ようとした所で声を掛けられた。
「せ、先輩! あの、あの……」
「おぉ葉月か! 久しぶりだな!」
「退院おめでとうございます。それと先日はありがとうございました。あれからクラスの子達とも少しずつ話せるようになって」
「そりゃ良かったな! なんかあれば俺の名前を出していいぞ。どうやら俺は魔王らしいからな!」
そう言って俺は笑うのだった。
「ソフィ……お姉ちゃん達はこれからお昼ですか?」
「そうよ葉月。でも購買に行くのも学食に行くのもちょっと難しいかな……アハハ」
この状況で地雷原には行きたく無いもんな……
「あの……だったら一緒に食べませんか……場所は……調理室でどうです?」
「おぉ! その手があったか。あっでも俺達何もない」
「丁度良かったです! お弁当いっぱい作ったので!」
きっと彼女はこの事を見越して用意してくれたのだろう。素晴らしい後輩である。
「ありがとう葉月! お言葉に甘えるわね!」
「助かる!」
俺達は調理室でお昼を食べる事にした。
葉月の作ってきたお弁当は……なんというか、重箱に入っていた。お花見に行くんじゃないかと思うくらいの量である。
「葉月……これ1人で作ったのか?」
「はい……その……お2人と一緒に食べたくて」
「葉月!」
ギュッと抱きつくソフィア。
そんな2人と和みながら、お昼ご飯を食べていく。
多いと思っていだが、2人とも食べるのが好きなようで、あっという間に無くなった。
途中二人からあ~んをされたり、強引に口移しで食べさせられたりした。二人が一緒になるのは怖いなと痛感する事になった。そして昼休みが終わる間際に葉月から……
「あの……先輩、もう少し待ってて下さいね?」
と言われた。
「うん? なんの事だ?」
「もう少ししたら……準備できますので」
何とも曖昧な返事である。そういえば以前葉月から……
『作りたいお菓子の材料がなかなかないんですよ』
と聞いていたのでその事だろうと思った。
「おう! 待ってるぞ!」
こんな返事をした自分を……誰が責められるだろう。