如月家の面々と企み
入院二日目の午前中は、学園長や豪谷さんがお見舞いに来てくれた。ざっくりとした話だったが、傷害事件として立件する旨、学園は退学になるそうだ。
そりゃそうだろう。
後は皇グループがなんとかしてくれるだろう。そして夕方になると昨日約束した通り如月家の面々がやってきた。
「ショーマ〜」
扉から勢いよく入り込んで来たのはソフィアだ。涙目になりながら彼女を迎え入れよと手を伸ばすと……
バチンッ
ビンタされた。
「!?」
呆気に取られる俺を他所にソフィアは、抱きつきながら泣いている。
「わ〜ん! ショーマぁぁぁ! 無茶しすぎだよ〜」
言ってる事とやってる事が違う気がするが、まぁいいだろう。
「ゴメンな……あんな方法しか思いつかなくて」
「ううん……ワタシの方こそごめん。ショーマの優しさに甘えてた」
「気にすんな!」
そんなやり取りをしていると、微笑ましいそうにこちらを見ている銀髪美人と目が合った。
「あっ! 初めまして! ソフィアさんとお付き合いをしている神月翔馬です!」
「こんにちは、あなたがショーマさんね! 娘を助けてくれてありがとう!」
「いえ……俺は助けたつもりは、ただの自分の我儘で」
彼女は想一さんと一緒に微笑んでいた。
「私はソフィアの母でアリシアって言うのよろしくね!ショーマさん!」
彼女はソフィアの頭を優しく撫でながら、俺に手を差し出してきた。俺もそれに答える。
「こちらこそよろしくお願いします」
この人が、あの押せ押せソフィアの元凶だとは信じられないなぁ。
そんな事を思っていると、またしても来客があった。
バコンッ
「来たぞ! 我が息子よ! ガハハ」
「翔ちゃん元気〜プリン持ってきたわよ〜」
一番来て欲しくないタイミングでやってきやがった。
「ん? 先客か? これは失礼したまた来るぞ!」
「あ、いやお気になさらず! 初めまして、私は如月想一と言います。翔馬くんの彼女の如月ソフィアの父親です。そして妻のアリシアです」
そういって如月夫婦は頭を下げた。
「いや、これはご丁寧に。翔馬の養父の神月一馬です。そして妻の乙音です。」
それから大人連中は、今回の件や趣味等の雑談をしていた。
「時に翔馬。こちらのべっぴんさんがソフィアちゃんかい?」
「うん……そう彼女」
「あっあの! 初めまして挨拶が遅れてすみません!ショーマくんの彼女の如月ソフィアです! ショーマくんとは結婚を前提にお付き合いしています。」
なんて事を言い出すんだこのロシアン娘! ほら、二人もだまっちゃったじゃん!
「ソフィアちゃん」
「は、はい」
ソフィアは一馬に見られてどこか緊張しているようだ。そんなソフィアに俺の親父は……
「お義父さんと呼びなさい」
「私はお義母さんよ! あなた良かったじゃない! 娘が欲しいっていう願いが叶うわね! こんな可愛い子がお嫁さんに来るなんて!」
俺はもう言葉も出なかった。
はぁ……お家帰りたい。
「あ、あの……おと……お義父様、お義母様ちょっとお話が……パパとママも来て」
そう言って彼女達は病室から出ていった。
数分して戻ってきた彼女達はどこかニヤけた顔をしていた。
「じゃあ翔馬、俺達は帰るからな! また退院する時に来るから!」
「あぁわかった! しらたま達は元気?」
「えぇ元気よ、たまちゃんがちょっと寂しそうだけど。退院して落ち着いたら連れ行くわね」
「はいよ〜」
「ショーマ! またね! また来るね!」
「おう! あんまり気にしすぎるなよ! 俺はお前の彼氏なんだろ?」
「うん! 大好きショーマ!」
そういって彼女は両親達がいる目の前で、キスをしてきた!
「バイバイ」
呆気に取られた俺を残し、扉が閉まる音だけが耳に響いた。