嫉妬と挑発と報復
覚えているだろうか?
ソフィアに告白し振られたアイツを。名前はもうわからない。
皆の前でアイアンクローをされ辱めを受けた自称イケメン。嫉妬や怒りに満ちた彼が、どういう行動に出るのかそれは明白だった。
「はぁ〜どうしてこうも頭が悪いかなぁ」
俺は昼休みに部室棟裏の人目の付かない場所に佇んでいた。十数人の人集りを前にして。時間は今朝に遡る。
――――――
ホームルームが終わり俺がトイレに行った時に声を掛けられた。
「おい神月!」
誰だっけコイツ?
「昼休み、部室棟の裏に来い」
「は? 嫌だけど?」
「あっ? ふざけてんのか? 如月がどうなっても知らねぇぞ?」
そんな事を言う彼を前に、俺も冷静ではいられない。
思い出した。こいつはソフィアに振られたヤツだ。なるほどな……いい機会だしコイツ潰しとくか……上手く行けば他の奴らもまとめて。
「わかったよ。アイツには手をだすんじゃねぇぞ?」
「最初からそう言えクソが」
自称イケメンはそのまま立ち去っていった。
「さて、準備しますかねぇ」
俺はスマホを取り出してある所に電話をかけた。
「もしもし、豪谷さん? ちょっと相談が」
通話を終えて今度は会長にメッセージを飛ばす。そしてその足で学園長室の扉の前まで歩いて行く。
コンコンッ
「開いてるわよ」
「失礼します学園長! 厄介事の相談です!」
「あらっ。翔馬さんから相談なんて珍しいわね。それも厄介事って」
クスクス笑う学園長に俺は安心感を覚え、後から来た会長に厄介事の相談を持ちかけるのだった。
「それはあまりに翔馬に負担が大きい。しかも体にだ! 私は認めん!」
合流した会長はこう言うだろうとは思っていた。
「私も賛成は出来ないわね。翔馬さんにもしもの事があったら、私はあの人に顔向け出来ないわ」
学園長の言いたい事もわかる。
「会長、学園長。俺の心配をしてくれるのは有難いんですが……実は俺結構怒ってるんですよね」
「「……」」
雰囲気が少し変わった事に息を飲む2人。
「まぁ噂だけでは、処分を下せないのは分かりますよ? でも、今回は違う。物的証拠さえあれば奴らの息の根を止める事ができる」
それに……と話を続ける。
「この企みが成功したら少なくとも俺の周りの大切な人は傷つかなくなるんです」
更に続ける。
「それに放送部の連中と豪谷さんには連絡してあります。豪谷さん達は昼休み前に学園長に挨拶に行くって言ってましたよ」
しばしの沈黙。
「はぁ……手が早いわね。これじゃ断れないじゃない」
「ありがとうございます」
「私は認めた訳ではないぞ? もしもお前に何かあったら皇家の総力をあげてサポートする」
「頼りにしてます会長。実際、皇家にいくつかお願いすることがあるので」
――――――
そして、昼休みが少し過ぎた頃。画面に映し出された光景を見て、学校中の生徒・教師は絶句していた……いや戦慄していた。
予め、春樹愛と葉月にソフィアを隔離してくれるように頼んで正解だったな。
十数人の相手から拳や足の嵐を受け、制服には大量の赤い跡、顔や腕の形が変わってしまっている。
それでも立ち続けている俺の姿がそこにはあった。