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同居人の女の子達は肉食乙女  作者: トン之助
第一章 同居開始編
20/94

束縛系(物理)な後輩は嫌いですか?

 

 社会生活とは窮屈なものである。

 それは一種の束縛と言えるだろう。


 時間に縛られ。

 人付き合いに縛られ。

 他人の目に縛られ。

 時には身内にも縛られ。


 世の中は常に誰かや何かに縛られている。しかし、その中でいかに束縛から逃れ、自己を確立し、楽しみや喜びを見出しながら生きていかなければならない。


 だが否な事に縛る側が好きな人もいる。

 目の前の後輩のように。





 「落ち着け葉月(はづき)。話せばわかる」

 「お、落ち着いてますよ先輩。話は……か、体に聞きますから」

 「落ち着いてねぇじゃねぇか!」


 俺はバタバタと暴れながら、なんとかポケットのスマホを取り出し、後ろ手に持ちながらソフィアにメッセージを送る。


『助けて・ヤバい ・俺の貞操が危ない』


 さて、気付いてくれるだろうか。


 「あのあの……無駄だと思いますよ? 鍵かけちゃいましたから」


 タラーっと額から汗が落ちる中、俺は葉月との出会いを思い出していた。


 ………………

 …………

 ……


 葉月と最初に出会ったのは彼女が入学してすぐにあった部活動の仮入部期間の時だ。


 俺は彼女が調理室に尋ねて来た時は最初何かの間違いかと思った。だって彼女は登山に行くような大きなリュクを背負っていたのだから。




 「……えっと、登山部の部室は外の部室棟にありますよ」


 と俺は声をかけた。


 「あ、いえ……と、登山部に入りたい訳ではなく……こ、ここに入りたいなと思いまして」


 俺は正直困惑していた。

 どう考えても登山の格好だよなぁ。




 「そ、そうなんだ。とりあえず中に入る?」

 「……は、はい」


 そうして彼女は調理室の中に入り、俺は自己紹介と現在の同好会の人数、活動内容等を話した。そして、せっかく興味を持ってくれたので一緒に簡単なお菓子作りをしようという事に。


 彼女は恥ずかしいのか、俯きがちだったがしっかりと俺の手本を見ながらお菓子作りに挑戦していた。


 時折俺の手元を見ながら「美味しそう」と言っていたので興味を持ってくれているのだろうと思っていた……この時は。


 それから彼女の事を少しずつ聞いた。


 家が空手の道場をしていて料理はそこそこできるが、お菓子作りはした事が無かった。過保護な父親が娘に防犯グッズをいっぱい持たせている事。どうやらあの大きなリュックはその防犯グッズが入っているらしい。


 チラリと中を見せてもらったが、縄やスタンガンなど物凄い量が入っていた。


 ってか重くないのかな?


 正式に入部してくれる事になって、数回目の活動をしていたある日。彼女がこんな事を言い出した。


 「あ、あのあの……先輩! た、食べてもいいですか?」

 「んお? まだ作り始めたばかりだから、味見はもう少ししてからの方がいいぞ?」


 「いえ、そうではなくてですね……先輩の事食べていいですか? って意味で……もう我慢できなくなっちゃいまして」

 「へ?」


 この後輩は何を言い出したのかと思った。俺の事を食べたい? 何それ?


 「ま、前から美味しそうだなって思ってたんです……その、私空手やってるじゃないですか。だから、相手はしっかり倒したいタイプというかですね……」


 モジモジしながら頬を赤くする彼女の手には縄が握られていた。


 「は、葉月さん? 言ってる事とやってる事が違いますわよっ!」


 テンパリ過ぎて、急に変な口調になる俺。


 「……だ、大丈夫です。私こう見えて結構強いので」


 嫌な予感がしつつ、つい質問してしまった。


 「……ちなみにその強さとは?」


 一時の静寂の後、彼女はポツリと言葉を落とす。


 「…………性欲」


 ポッと赤くなる葉月さん。

 俺はその瞬間ダッシュで扉へ向かった。


 なんで?

 めちゃくちゃ大人しい子だったじゃん!

 エロとは無縁そうだったじゃん!

 どゆこと?


 結局その日は縄を持った彼女から逃れるだけで部活動は終わった。


 その日の内に会長に報告し、会長と葉月の二人で話し合いをした後、部活内ではあまり過激な事をしなくなった。


 俺は沈静化したものだと思っていたのだが。葉月と会長の間で色々裏取引があったとは知らなかった。


 ………………

 …………

 ……



 そんな訳で現在。

 葉月に拘束されいくつかの質問攻めに合っていた。


 どういう風に告白されたのか。

 どこまでいったのか。

 具体的にはエロ方面の質問だ。


 「そ、そうですか……ファーストキスは奪われてしまいましたか……でもでも、まだ初体験が残ってますよね?」


 平然と何を言ってんのこの娘?


 「それでじゃ、早速……」


 そう言って葉月は俺のズボンに手をかけベルトを外し始めた。


 「待って葉月さん! 気が早い!」

 「そ、そうですよね……まずはキスからですよね」


 「いやそうじゃない! 間違っているのはそこじゃない」


 迫る葉月、顔を背ける俺。

 ほんの数センチの距離に葉月さんの顔が迫った時、神の助けが来た。


 ガチャッ


 「……ぜぇ……はぁ……助けに来たわよショーマ」


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