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同居人の女の子達は肉食乙女  作者: トン之助
第一章 同居開始編
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ロシアン美女より愛を込めて〜決戦前日〜


 愛には人それぞれ形がある。目に見えるものかもしれないし、無形かもしれない。もし共通点があるとするならなんだろう。


 ただひとつ言えることは、愛を贈る方は相手の事を想っている事。真心を込めて贈っているという事ではないだろうか。


 どんな形であれ。






 ソフィアと俺は今日も一緒に学校への道を並んで歩く。小さな彼女の手を俺の手で包み、体を寄せ合いながら登校する。


 昨日、春樹(はるき)(あい)に頼んでおいたお陰で俺達への視線はいっそう強くなっていた。



神月翔馬(かみづきしょうま)が何日もストーカーをして、泣きながら土下座して如月(きさらぎ)ソフィアに交際を申し込んだ』

『如月ソフィアは身の危険を感じたから渋々OKした』


 俺はそれを聞いて、笑いが止まらない。


くくくっ、第一段階は上手くいってる様だな。



「ショーマ、大丈夫? 顔が変……てかキモい」

「大丈夫だソフィ元から変だ。ってかキモイ言うな!」


 これくらいの軽口が言えるようになったという事は少しは元気になったんだろう。愛には感謝だな。


 好奇の視線に晒されながらも教室の席に着く。昨日の事があってからか、クラス内では誰も俺には近付いて来ない。ソフィアの所には面倒見のいい委員長が何か話しているようだ。


 ホームルームが終わり次々に授業が消化されてゆく。チラチラとコチラを見てくる視線はあるが実害はないので無視していたら時間はあっという間に過ぎていき。


キーンコーンカーンコーン


 さぁパーティの始まりだ。

 決戦の昼休みへと突入するのだった。





 俺達の学校では昼休みに教室や食堂・講堂等のモニターで映画やドラマ・ニュース等を流している。教養を身につける為と謳うたっているが、ぶっちゃけ学園長の趣味である。今回はそれを利用させてもらう。


 事前に放送部には全モニターを共通回線に繋いでもらって1つのチャンネルを強制的に共有してもらうよう頼んでおいた。


 そして演劇部の衣装部屋で俺とソフィアは男子と女子に分かれて着替えていた。まぁ実際に着替えたのは俺だけで、ソフィアはちょっとした小道具を持っているだけである。


 そして着替え終わった俺は、演劇部が普段使っている小ホールに春樹や愛、葉月はづき達が集めた有志一同と共に立っている。



「んん、ふふふっ」

「クスクスッ」

「ダ、ダメだっ! 我慢できねぇ」


 まだ始まる前だというのに、俺を見てくすくす笑ってやがる。そして、葉月はとても満足そうな顔でこちらを見る。


 そういえば葉月が入ってきた時にソフィアはビクビクしいたのは何故なろう? 可愛い後輩なんだけどなぁ。まぁいいや。


 いよいよ戦闘開始だ!


 ピンポンパンポーン


「本日の〜お昼の名作劇場のはじまりはじまり〜」


 取ってつけたようなセリフとともにモニターに明かりがついた。



 バシンッ!

「……んんんんぁ!」


 ビシンッ!

「ハァハァ……もっと……もっと頂戴!」


 タラーッ

「あ、熱っ……ロウが……」


 バシン!

「これが欲しいんでしょ〜?」

「ハァ……ハァ下さい……もっとシて下さい」



 全校生徒職員一同はその時の光景を忘れないだろう。もしかしたらトラウマになった人もいるかもしれない。それぐらい衝撃的な光景がそこにはあった。


 高校生では決して近付く事がない世界が画面の向こう側には広がっていた。成人した大人でもその世界に踏み込むのは一部の人間だろう。



 食事をする手がとまり、箸から唐揚げが落ちる。隣ではコップのお茶が音を立てて落ちている。


 ある者は口を大きく開け

 ある者は白目を向き

 ある者は目を伏せ

 ある者はカツラを落とし

 ある者は食い入るようにその光景を凝視していた。


 なんとそこには……


 俺が縄で縛られ『ソフィアの下僕』というタスキを身につけ、パンツ一丁で身悶えている姿が広がっていた。


 その横には制服を少し着崩し、黒いマント、赤い蝶メガネ、右手に黒いムチ、左手に蝋燭、そして頭には銀色のティアラを付けたソフィアが立っていた。


「オーホッホッ! ワタシに泣いて懇願してきたあの威勢はどこへいったのかしら〜子ブタちゃん?」


 バシンッ

「それともワタシが噂とは真逆の純情乙女と勘違いしていたのかしら〜」


 バコンッ

「何を聞いたかは知らないけど、舐めてもらっちゃ困るわ! この豚野郎!」


 ミチミチッ

「ワタシが今まで何人の男を再起不能にしてきたと思ってるのよ! 数えるのもイヤになるわ!」


 ドゴンッ


ちょっ…ちょっとソフィアさん? なんか楽しくなってきてません? 力加減がおかしくなってきてるんですけど?



「ソフィア様にあんな事してもらえるなんて……ハァ……ハァ」

「羨ましいですぞ、神月殿!」

「いいぞ〜もっとやれ〜」


「きゃ〜ん! ソフィア様素敵!」

「是非私にもその華麗なムチ捌きを教えて下さい!」

「ソフィア様……私はどちらかというとソフィア様にいじめられたい」


 小ホールに集まって貰った連中は、もちろんサクラである。このサクラにこそ特別な意味がある。


 人はひとりで行動する時に同じ目的・方向性を持った仲間を探す。集団心理におけるきっかけ、呼び水を与えてやればいい。単純な事だ。


 噂の広がりが早いのと同じように、同士を見つけた時の行動力もまた早いという事だ。


 その後もノリに乗ったソフィアに罵倒(画面の向こう側は恐怖)されながら、俺は昔見たビデオの中の男優の気持ちを、少し理解するのだった。


 ソフィアに罵られた俺に、新たな扉が開けたのは言うまでもない。

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