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お父様と一緒④

 と言うことで、ぼくは夕飯の席の中、ヴィーを問いただした。


「ヴィー、何で親戚が来るって教えてくれなかったの?」

「親戚、ですか? 特に来訪の予定はありませんが」

「えーっ? 来てたじゃない。名前は聞き忘れちゃったけど、13、4歳くらいの、ぼくと同じ銀髪の男の子」

「……はい?」

「なんで隠すのー。ヴィーが、ぼくが昨日木から落ちたことも話したんでしょ?」

「えっ……? 何をやっているんだあの人は……?」

「せっかくお客さんが来てくれたなら、一緒にお食事したり、もっとお喋りしたりしたかったのに」

「……申し訳ありません。何分急に来られたもので」

「そっかー」


 それなら仕方ないか。


「次はいつ来てくれるのかな。楽しみだね!」

「そうですね……」


 ヴィーは何故か疲れたように肩を落としていた。



 その夜、ぼくはベッドに入り、今日書庫でゲットした謎の手帳を開いていた。


「お宝の隠し場所とか書いてないかなーっと」


 手帳はどうやら女の人の日記、というよりは少し簡易的な、日々の覚書のようだった。


「えーっと、花、女……あぁ、娼婦ね」


 よく読み解けない言葉も多々出てくるが、そこは前世の語彙力で乗り切る。

 文脈的に、女の人は貧しくて娼婦の仕事をしていた人だったらしい。


 身分のバカ高い公爵様の子を身篭り、いきなり貴族の妻になった女の人の喜びと苦悩がひたすら書かれている。


「寝る前に読むにはちょっと重いな」


 パラパラと拾い読みしただけだけど、展開が昼ドラっぽい。


 公爵様にはたくさん恋人がいたけど、その中で妻になれたのはこの手帳の持ち主だけだった。

 他の捨てられた女の人からの嫌がらせがあったり、身分が低いと屋敷の使用人からのいじめがあったりと、なんかドロドロしてる。


 そんな中でも公爵様との仲は良好だったらしいけど……ぼくから見るとそれもどうかなって感じ。


 手帳の後半では女の人がストレスで体を壊してるんだけど、公爵様は手帳の人をほっぽって仕事に行っちゃってる。


 女の人は自分の日記の中ですら公爵様を庇ってるけど、ぼくは具合悪い時は誰かに一緒にいてほしいな。

 ヴィーならずーっとベッドの横にいてぽんぽんしてくれるもん。


 ページが進むにつれ女の人の体調はどんどん悪くなっていく。

 家に帰ってこない公爵様は多分そのことに気づいてすらいない。


 日記の最後は、女の人の何気ない1日の記述で終わっていた。


「え……」


 考えたくないけど、これ、女の人死んだ……?


 特に意味もなくパラパラとページを遡る。古い紙の匂いがする。


 すると、何度も開かれた跡があったのか、ページは勝手に冒頭のある1ページを示した。


 ——あの人の子供を身籠った。きっとあの人と同じ目をした女の子が生まれるって確信がある。


 ——生まれた子には、サスリカと名付けると決めた。


「サスリカ……」


 言わずもがな、それはぼくの名前だった。

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