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大公様と一緒③

「そうだ、サスリカは何故学院に通っていないんだい?」


 ふと大公様が言った。


「何でって……ぼくも通えるの?」

「もちろんさ! 入学試験さえパスすれば、6歳から18歳の子供は誰でも学院に通えるよ!」

「えーっ、知らなかったぁ」


 聞いたこともなかった。


「サスリカのところにも入学案内が届いているはずだけど……」

「あぁ、そんなのも来てたね」

「来てたの!?」


 お父様が事もなげに言うのでぼくは驚いてしまった。


「行きたかった?」

「えー、そう聞かれると困るけど……でもぼく全然知らなかったんだけど!」

「あそこは貴族の子女が人脈を作るために行くところだよ。授業だって大したことやらないし。お前が行く必要ないでしょ」

「一応、余が学院の責任者なんだけど! 随分言ってくれるね」

「だって事実だろ」


 すると、これまで黙ってぼくらの後ろで控えていたヴィーが口を開いた。

 今までお外だからずーっと後ろでかしこまってたけど、実はいたのだ。


「お嬢様、もしお嬢様が学院へ通いたいとお思いになるなら、中等部から編入する事も可能です」

「そうだよそうだよ! 入っちゃいなよ!」

「編入……」


 でも、お父様はちょっと不満そうにしている。


「旦那様、たしかにズィマレスター公爵家は公国で絶対の地位を有し、人脈作りに奔走する必要はありません。しかし、大勢の同級生との生活は必ずやお嬢様の糧となるでしょう」

「……サスリカはどう思うの?」

「えっと……」


 学校。学校かぁ……。


 プラローは学院の生徒なんだよね。じゃあ入学すれば一緒の学校生活だ。それは楽しいかも。

 他にも新しいお友達ができたり、お勉強したり……。


 あぁでも、お父様は大丈夫かな。

 ぼくがいなくなって、また引きこもってしまわないかしら。


 ぼくはお父様をチラリと見る。


「もちろん、お前が行きたいって言うなら止めないよ」


 お父様はそう言って優しく笑った。

 はじめて会った時、ぼくが勝手に執務室に侵入した時からは考えられないくらい柔らかい表情で。


「……ぼく、行きたい! 学校!」

「え、ね、ねえさま……」


 リオが不安そうに目を彷徨わせる。


「リオも一緒に行こ。学年は違くなるけど、一緒に頑張ろ?」

「……うんっ」


 そう言うわけで、来年度からぼくたちは学生になります!



 お城での用事も済んだと言うことで、ぼくたちは帰ることになった。


「じゃあじゃあ庭園を見ていくよね! 余が案内するよ! ついて来て!」


 大公様がそう言うと、慣れた手つきでメイドさんが大公様を抱き上げる。そしてぼくらを先導して歩き出した。

 これって、案内するのは大公様じゃなくてこのメイドさんなんじゃ?


 メイドさんwith大公様に案内され、お城の一階に出て、渡り廊下を進む。

 すると、渡り廊下の外側がだんだん緑豊かになっていく。

 そして、渡り廊下の終着点、行き止まりにたどり着いた。


「わー……」


 こんなに彩りに溢れた景色、この国で初めて見た!


 一面青、青、青。

 そして向こうには赤い薔薇と黄色い薔薇が咲き乱れている。


「すごい!」

「すてきです、ね、ねえさま……」

「うん、とってもロマンチックな景色!」

「おはなに囲まれるねえさま、とっても綺麗です……」


 もしかしてぼくら、見ているもの違うかな?


「「父上?」」


 すると、バラの木の向こうから透き通ったアルトの声がした。


「おぉ、息子たちよ! 今は庭園にいたのだな。ちょうど良かった」


 大公様の声を聞いて現れたのは、2人のそっくりな男の子たち。


 赤い薔薇の木の下にいるのは、長い金の髪を後ろで一つにしばった男の子。吸い込まれそうな暗い目が印象的。


 黄色い薔薇の木の下にいるのは、猫っ毛の銀髪を揺らす優しそうな男の子。その微笑みは前世の記憶があり、実質大人のぼくが見てもくらっと来てしまいそうなほど魅力的だ。


 そんなうつくしい2人の男の子が、ぼくに視線を向ける。


 それがぼくと王子たちの初の邂逅だった。

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