表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
334/335

三者共通の敵


 偶然とは意図せず思いがけずに起きる現象を言う。だがこの偶然と言う現象、もしかすると重なる事が多いのかもしれない。


 互いに共通の存在を追い続けている可能性があると思い神正学園の転生戦士、玖寂河琉と武桐白は互いに定めていた集合場所で顔を合わせていた。そしてお互いの持ち合わせる情報を交換し合い一つの結論へと至っていた。


 「あなたが追い続けている人型ゲダツ、そして私の追い続けている神出鬼没のゲダツ、確かに共通の存在の可能性は否定できませんね」


 河琉は人型ゲダツを追っている事以外にめぼしい情報は特に持ち合わせては居なかった。逆に白の方はゲダツの正体にすら辿り着いていない。


 「しかし私の捜索し続けているゲダツは正体すら掴めていません。ですが下級タイプのゲダツの犯行ならばもうとうに私が見つけるよりも早く他の転生戦士に狩られているでしょうし……そう考えるとあなたが見せてくれた映像に映っている上級タイプの人型ゲダツがどうにも臭いますね」


 「ああ、まるでオレたち転生戦士を避けている様な動き…こんなもん、頭脳の発達しているゲダツじゃなきゃ出来ない芸当だろう」


 互いの情報を共有した事で河琉も白も自分の追っている相手が目の前の転生戦士と同じ相手であると思えて来た。しかしあくまで〝可能性〟の話、まだ互いが捜している相手が同一人物であると確定した訳ではない。

 

 「……まあオレもお前も結局は目的の人物が何処に潜んでいるか分からずじまい、結局こうして顔を合わせても進展なしだな」


 そう言うと河琉はこの場から立ち去ろうとする。これ以上顔を突き合わせてもお互いに得られるものはないと思ったからだ。だが河琉が背を向けようとした瞬間、ここで二人の目付きが一気に鋭くなる。


 「おい気が付いているか?」


 「ええ、この気配は……」


 自分たちの居るこの方向目掛けて大きな神力の持ち主が一直線に近づいて来ているのだ。

 感知できる力の種類が神力と言う事もあり敵ではないがこちらへと凄まじい速度で近づいて来ている謎の人物に警戒する二人。

 そして遂にこちらへと接近している人物の正体が明らかとなる。


 「クソぉ!! どこへ逃げたあぁぁぁぁ!!」


 声の方に目を向けると自分たちの視線の先では大声を上げながら全速力で駆けている烈火の姿が映り込む。街中で大声を上げて走っているその姿はハッキリ言って奇抜と言えるだろう。周辺を歩いている通行人達は人目をはばからずに大声を上げている少女に奇異な目を向けており、河琉と白も同じように少し引き気味な様子で烈火を見ていた。特に白の方は見て見ぬフリをしようか迷っているくらいだ。


 「あの方には羞恥心と言うものがないのでしょうか?」


 「……とりあえずあの喧しいサイレンを止めて来る」


 未だに大声を出しながら二人の視界から走り去って行こうとする烈火を見失う前にひとまず止めようと河琉が彼女へと歩み寄って行った。


 半ば暴走機関車と化していた烈火を白の方まで襟首を掴んで引っ張って行く河琉。

 

 「おお河琉ではないか! こんな場所で出逢うとは奇遇だな!」


 「相変わらず無駄に声のデカいヤツだな。この至近距離でそんな声張らずとも聞こえてるよ」


 後ろからいきなり襟首を引っ張られて戸惑う烈火であったが、その人物が河琉である事を知ると嬉しそうに笑みを浮かべながら話し掛けて来る。

 適当に彼女の口から出て来る言葉を聞き流しながらコンビニ前に居る白の元まで彼女を連行する河琉であったが、次に彼女の口から出て来た話の内容に思わず足を止めてしまう。


 「今私はとある人型ゲダツを追っている最中なのだがもしや君も奴等を捜索している最中だったのか!」


 「……おい、その話もう少し詳しく教えてもらえるか?」


 どうやら彼女もゲダツを追っている真っ最中だったようだ。しかし自分と白に続き彼女までこの付近でゲダツの捜索、とても偶然とも思えず一通り話を聞いておいた方が良いと思った。

 無駄にテンションの高い同僚を白の元まで連れて来た後、河琉は烈火から何があったのかを詳しく尋ね始める。すると彼女はつい先程までこのすぐ近くで2人の人型ゲダツと戦闘を行っていた事を話し始めた。


 「成程…つまり轟さんも私と同じように周辺で多発していたゲダツによる被害調査を行っており、その道中で人型タイプのゲダツを発見した訳ですね?」


 白が確認を込めてそう問うと烈火は頷く。


 ちなみに烈火と白はつい最近同じ学園の数少ない転生戦士同士と言う事に気付き多少の交流がある。とは言え別段日常的に仲良くしている訳ではないのだが。

 

 一通り烈火が話し終わると河琉は自分のスマホの電源を点けると刹那から貰った例の映像を彼女に見せた。


 「ちなみになんだがお前が戦闘していたゲダツはコイツか?」


 映像内ではライトの手によって一般人が石化して粉々に粉砕されていた。そしてその人物が先程まで自分と戦っていたゲダツと同一人物である事を知って烈火は騒ぎ出す。


 「間違いない! 私が今しがた戦っていたゲダツはコイツだ!」


 烈火の言葉に白は驚き、そして河琉は不敵に笑みを零す。


 「どんどんと繋がっていくな。オレ、武桐、そして轟……この町でせこくコソコソと動き回っていたネズミはどうにも同一人物みたいだな」


 少なくとも自分と轟に関しては狙いが同一人物である事は確定だ。自分が猪錠から貰った映像に映るゲダツと彼女が戦闘をしていた人物が同じなのだから。そして轟と武桐は互いに神出鬼没であるゲダツを追い続けていたと言う点も重なる。

 

 「最初はこんなスマホの映像だけで手掛かりがほとんど皆無な状態。標的を見つけるのはかなり時間が掛かると思っていたが案外早く済みそうだ」


 そう言いながらもう一度映像内に映るライトを見て河琉は笑う。そして狭い箱の中に映っている彼に言ってやった。


 「お前の元に辿り着くまで案外すんなりと済みそうだ」


 「……少し良いだろうか河琉。もう一度その映像を見せてはくれないか?」


 河琉の背中越しから改めてスマホに納められている映像を見せてもらう烈火。しかもさりげくなさっきから彼の事を名前で呼んでいる。

 スマホの中ではライトが眼鏡を外すと彼に注意をしていた男性が石化している。だがこの部分で烈火は神妙な顔をする。その変化を隣で見ていた白は何か不可解な部分があったかどうか問う。


 「私が戦闘を行っていた二人組のゲダツ、その内の1人はこの男で間違いないがコイツは炎を操っていた。しかし映像では相手を石化する能力……まさかヤツは単体で二つの特殊能力を有しているのか?」


 「……だとしたら少し面倒ですね。私たちが追っている相手は想像以上の難敵かもしれませんね」


 確かに特殊な能力を有しているゲダツは白だってこれまで何度か見て来た。しかし複数の能力を有しているゲダツとは遭遇した記憶はない。あのラスボだって戦闘中にいくつもの能力を披露していたが結局は相手の能力をコピーすると言う1つの能力だった。だとするならこの映像に映るゲダツも何かカラクリがあり石化と炎の二つの力を操っているのだろうか?


 「(ですが…転生戦士の中には加江須さんの様に一人で複数の特殊能力を保有している者も居る。そう考えると何かしらの方法で複数の能力を手に入れた?)」


 ライトの複数の能力を持つ謎について考え始めていると河琉が彼女に声を掛ける。


 「おい武桐、この眼鏡ゲダツを見つける為にお前の力を少し借りたい」


 河琉が白へと協力を求めるが彼女は返事をせずにブツブツと小声を漏らしながら思考を働かせ続ける。そのせいで河琉の声が届かず独り思考の海にダイブし続けてしまう。だがここで急に少し強い力で背中を叩かれて思わず彼女は前のめりになってしまう。


 「な、何をするんですか?」


 「いやさっきから声を掛けていたぜ。お前がブツブツと周りが見えていないから仕方ないだろ」


 そう言われてしまうと自分が無視をしてしまったように思えるので反論できない。


 「失礼しました。それで、私にどうして欲しいんですか?」


 「決まっているだろ。すぐにでもこの眼鏡ゲダツを見つけて討伐に向かうんだよ?」


 「しかし河琉よ。生憎だが私はコイツを見失ってしまっている。どうやってコイツを見つけ出す?」


 確かに先程まで烈火はライトと戦闘を繰り広げていた。しかし今は完全に見失ってしまっているのだ。完全に手探り状態からの捜索になるはず、にもかかわらず河琉はどこか余裕を顔に携えていた。


 「確かに今オレたちはこの眼鏡が何処に居るのか分からねぇ。でもよ、轟の話を聞く限りじゃこの眼鏡はお前が相方のゲダツと戦ってからそう時間も経たずに姿を現したんだよな?」


 河琉がそう訊くと彼女は頷く。確かに思い返せばレフトと戦闘が始まってからそう時間も経っていないのにすぐにライトは救援に現れていた。


 「なら話は単純だろ。救援に来たのが早いって事はすぐ近くに根城があるって事だろ?」


 河琉がそう言うと烈火と白はハッとした表情になる。確かに少し考えてみれば当たり前の発想だ。

 今の今までライトやレフトがこの町の転生戦士から見つけられずに済んだのは気配の絶ち方も一流かもしれないが潜伏して身を隠していた点が大きい筈だ。だが今回の烈火との戦闘で奴等は尻尾を出してしまう。未だ正確な居場所は分からないが〝すぐに救援に来た〟と言う事は〝近くに根城を置いている〟あまりにもシンプルな推測だが可能性は高いだろう。


 「だからこそ武桐の力を借りたい。お前の能力で~~~~」


 「……成程。しかし簡単に言ってくれますね。あなたの策を実行に移すとなればかなりの神力を消耗する事になりますが。はあ…まあ構いませんが……」

 

 「ん、どうする気だ?」


 河琉が耳打ちで白に作戦を話し終わった後、その内容を今度は烈火にも伝える。

 

 「そうか、かなりの力技ではあるが悪くないかもしれんな」


 「あなたもあなたで簡単に言わないでください。はあ…この作戦で一番苦労するのは私みたいですね……」


 若干の不満を口にしながらも白は早速特殊能力を発動する。そして河琉に頼まれた〝ある物〟を大量に製造し始めるのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ