表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
失恋した直後に死んだら俺にハーレムができました。恋人達は俺が守る!!  作者: ゆうきぞく
第十三章 転生戦士激闘編 序章
324/335

デパートでの決着、それと同時の襲撃


 「はあ…はあ…結局はここに戻って来てしまうのよね……」

 

 人目を避けようと考えて逃走をしていた仁乃は結局はまたしても屋上へと戻って来ていた。

 最初はデパートの外へ出て行こうと考えたが結局はデパートの外にも大勢の一般人が居る事は変わりない。

 そう考えると下手に店の外に出るよりもこのデパート内でもっとも人が少ない場所を目指した方が遥かに巻き添えを軽減できると考えたのだ。その結果行きついた場所は最初に激突した屋上だった。


 阿蔵の蹴りによって変形している扉を蹴っ飛ばし屋上の中央まで移動を終える仁乃。


 「……よし、周りに一般人は居ないわね。これなら存分に能力を扱えるわ」


 もしも戻って来た屋上に人が居たらどうしようかとそこは賭けだったが杞憂に終わったみたいだ。

 

 貫かれた左手からは未だに血が滴っており、彼女は能力で糸を数本出すとソレで傷口を簡易的だが縫い始める。傷口に糸を通す痛みは中々に大きいが出血がこのまま止まらないのは少し不味い。今から阿蔵と戦闘だと言うのに途中で血の出過ぎで意識が朦朧とでもしてしまえば致命的な隙になる。


 軽い応急処置を済ませたその直後、屋上の変形した入り口に禍々しい気配が近づいて来ていた。


 「来たわね。さあ…いい加減に最終ラウンドと行きましょうか」


 そう言うと仁乃は糸を集約して両手にそれぞれ糸を束ねて形成した短刀を握りしめた。


 ――バゴォンッ!!


 仁乃が武器を作りだして構えを取るとほぼ同時に屋上の入り口が吹き飛んだ。

 深々と中心がへこんだ扉が仁乃の立っているすぐ隣を滑って行きそのまま屋上のフェンスにけたたましい音と共に激突する。


 「もう鬼ごっこは終わりか? このクソアマ……」


 入り口を完全に破壊して屋上に姿を現した阿蔵は一言で言うなら不気味であった。


 鼻骨が砕けた鼻は少し右に捩じれており、更に自販機に頭部から激突したせいで額を浅く切ったのか赤い筋を顎下まで滴らせている。

 そして彼の目は充血してまるで危ない薬でも使用したかのようにギラついている。


 「まさかここまで痛い思いをさせられるとは思いもしなかったぜぇ。見ろよコレ、鼻は潰れて曲がり額まで切ってよぉ……」


 そう言いながら阿蔵はコートをまさぐって万が一の為に隠し持っていたもう一振りの短刀を取り出した。そして刃には阿蔵の神力がかなり籠められている事を肌でビリビリと感知できる。

 

 「今度こそ確実に仕留めてやるぜ……!」


 そう言いながら阿蔵はギリッと怒りに任せ歯を強く噛みしめる。そして全身に身に纏っていた神力がさらに高まりを見せる。 


 一気に相手の力が昂る事を敏感に察知した仁乃は次の瞬間にはまたしても阿蔵に距離が詰められる事を理解し両手で握っている武器に力を入れる。


 「(……来る!)」


 仁乃が心の中で相手の攻撃の来るタイミングを予測した直後、阿蔵はまたしても一瞬で仁乃の懐へと入り込んでおりそのまま短刀を横薙ぎに振るっていた。

 彼の横薙ぎに振るわれる短刀の狙い箇所は彼女の両目であり光を奪おうとしてきた。


 今度こそ完全に致命傷を与えれたと短刀を振りながら確信を持つ阿蔵であるが予想外の事態に彼は陥る事となる。


 「そこォ!!」


 そう覇気の籠った声と共になんと仁乃は刃が自分の眼球を一閃するよりも早く身を屈めていたのだ。

 彼女が体制を低くしたため当然だが阿蔵の振るった一撃は空を切る事となる。


 「な、何で避けれた!?」


 一瞬で間合いを詰めてからの最大速度で振るった斬撃を回避された阿蔵は唖然とする。

 阿蔵の今の一撃は今までで一番のタイミングと速度を併せ持っていたと彼は自負していた。しかも特殊能力で一瞬で間合いを殺して懐に入った上で最大速度で攻撃をしたのだ。仮に直撃を避けれたとしても多少のダメージは与えられていたはずだ。


 何でああまで華麗に俺の攻撃を回避できた!? こんなの俺がどのタイミングで距離を詰め、しかもどこを攻撃するか分かっていなければ不可能だろうが!!


 そんな疑念が頭に浮かぶ阿蔵だがすぐに意識を現実に戻されてしまう。


 「隙だらけよアンタ!」


 自分の渾身の一撃を避けられ動揺している阿蔵にカウンター気味で仁乃が両手の糸で作った短刀を振るって来た。

 糸で作りだした二つの短刀には刃が無く彼女は阿蔵の両腕を左右から挟み込むかのように打ち込んだ。そして仁乃の振るった短刀は阿蔵の両腕の骨を見事にへし折った。


 「ウガアアアアアア!?」


 両腕が不自然な方向に捻じ曲がった阿蔵は顔を真上へと向け絶叫を上げる。

 激しい痛みに呻いて目の前で隙を見せる阿蔵に仁乃はすぐに短刀を放り捨てると右手から糸を大量に放出し、そのまま彼の体をグルグル巻きにして拘束した。


 「やっと捕まえたわよコイツ……」


 阿蔵は両腕をへし折られ、さらには糸でガチガチに拘束されてしまいその姿はさながら蜘蛛の糸にかかった獲物であった。

 完全に相手を無力化出来た事でそれまで張り詰めていた仁乃の緊張の糸がプツリと切れ、それに連動して彼女はその場で膝を崩してしまう。


 「はあ…はあ……」


 自分の勝利に安堵していると縛られた状態で阿蔵が喚き散らす。


 「何で、何で俺の攻撃をああまで完璧に避けれた!? あんなもん俺の移動と攻撃、その二つのタイミングを完璧に見切っていないと不可能だろうが!!」


 「ええ、アンタの言う通りよ。一瞬で目の前に現れる異次元の移動速度、そしてその移動直後に振るわれる攻撃の軌道、どちらか片方だけしか捉えれていなかったら今頃両目を裂かれていたかもね。でも残念だったわね。アンタの特殊能力については実はこの屋上に来た時にはある程度予測が付いていたのよ」


 仁乃がそう言うと阿蔵はギョッとした顔を見せる。まさか能力を見抜かれているとは思いもしなかったのだろう。


 最初に仁乃は阿蔵の能力は時間を停止するタイプの能力と考察したがすぐにその予想を破棄した。もし時間を停止できるならこの男がここまで血みどろになって戦闘をする必要も無い。スマートに自分を殺す事ぐらい訳ないだろう。

 次に考えたのは瞬間移動の能力者ではないかと言う考察だった。だがこの推測も些か正解にはまだ遠いと彼女は思った。瞬間移動ならばもっと背後などの死角に移動して隙をつける場面はいくつもあった筈だ。

 そして最後に行きついた考察、それは阿蔵は『一定の距離を縮める』能力ではないかと言うものだった。


 「思い返してみればアンタがあの瞬間移動並の速度で私の目の前に現れたのは私の姿を視界に納めている時だけだったわよね? そこでピーンと来たのよ。アンタは狙いを付けた場所と自分のその間の距離を一気に収縮する力を持っているのではないかってね」


 この類の力ならば阿蔵が自分の目の前に一瞬で接近したのも説明が付く。それに阿蔵が特殊能力を発動するのは必ず自分の姿を視界に納めている時だけだったのも頷ける。狙いを付けた場所と自分の距離を殺す力ならば仁乃の無関係な場所で発動しても何の意味もない。


 「多分1度や2度程度なら見破れなかったわ。でもアンタは頭に血を上らせて能力を少し多様しすぎたわね。そのせいで私に見抜かれたのよ」


 「ぐ…だ、だとしても俺がどのタイミングで間合いを詰めるかなんて分からないだろ!! いつ自分の目の前に接近するか分からなきゃどのみち対処できないはずだろ!?」


 阿蔵の言う通り能力のタネが割れても阿蔵がどのタイミングに距離を縮めて間合いを詰めるか分からなければ先の一撃を避ける事は出来ないだろう。

 だが阿蔵のこの疑問に対しても仁乃は得意げに笑みを浮かべながらこう言って来た。


 「残念だけどアンタが間合いを詰めて来るタイミングも何となくだけど予測できていたのよ。だからこそアンタのさっきの一撃をあそこまで完璧に避けれたんでしょ」


 「そ、そんな訳あるか。俺は能力を使う際は神力をわざと高めて能力発動のタイミングを悟らせない様にカモフラージュしている。それなのにどうやって……」


 「アンタ意外と馬鹿なのね。私がアンタの能力を発動するタイミングを捉えたのは神力の大きさや揺らぎじゃないわ。アンタが能力を使う時に見せる顔よ」


 「な、顔……?」


 阿蔵は何を言われているのか本当に分かっていないのか首を傾げている。その反応を見て本当に馬鹿なんだと思い深々と溜息をつく。

 完全に見下されている事を理解した阿蔵の顔が真っ赤に染まるが滴っている血のせいで上手く判別が出来ない。


 「アンタさぁ、能力を発動する瞬間に目が少し見開かれているのよ。まさか本当に気付いていなかったの?」


 「………はぁ?」


 実際に阿蔵にはそのクセの自覚が無かった。だが漫画じゃあるまいしそんな些細過ぎる変化でああまでタイミングを完璧に見計らうなど出来るはずが……。


 「出来るわよ。当たり前じゃない」


 口には出さず心の中で否定していた阿蔵に仁乃がそう呟いたのでドキリとする。一瞬心の中でも悟られたのかと思ってしまった。

 そんな分かりやすい反応を見せる阿蔵を放置して彼女は真剣な眼で地面に縛られている阿蔵を見据えて続けてこう言った。


 「命懸けの戦闘なのよ? ほんの些細な変化だって見過ごさずマジで計算するのが当たり前なのよ。アンタ、もしかしてこの戦いは自分の一方的な狩りだとでも思っていた訳?」


 そう言いながら自分に向けて来る仁乃の瞳は光が消え底が見えない。その覚悟のすわっているその瞳に阿蔵はようやく命の危機感をリアルの感じた。

 彼女が言ったように自分が目の前の小娘に負けるなんて考えもしなかった。勧誘を蹴られたから入院か死体かにしてしまう。そんな甘い考えしかなく、こうして縛り上げられるまで深く物事を考えもしなかった。


 そして命の危機感を遅れながら抱いた阿蔵の体が震える。


 「さて、じゃあとりあえずアンタには色々とお話を聞かせてもらうわよ」


 「ひっ、く、くるな…!」


 芋虫の様に這いずりながら仁乃から逃げようとする阿蔵。

 別に仁乃は彼の事を殺そうとまでは考えていない。しかしこうまで被害を負わされた以上はこの男の素性、そしてコイツの所属しているチームなど搾れる情報は搾り取ろう。そう思い阿蔵に近づこうとしたその時だった。


 「希少な戦力を削るのは勘弁して欲しいわね」


 背後から聞こえて来た女性の声に勢いよく振り返った直後――仁乃の腹部に手刀が抉り込まれていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ