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失恋した直後に死んだら俺にハーレムができました。恋人達は俺が守る!!  作者: ゆうきぞく
第十三章 転生戦士激闘編 序章
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デパート内での激戦


 「はあ…はあ……」


 屋上から無事に脱出した仁乃は下の階へと降りると女性物の下着コーナー、そのエリア内の試着室で息を整えていた。

 全速力で走り続けていたので少し上がっていた息を整えながら彼女は屋上での戦闘を思い返していた。


 阿蔵の一瞬で間合いを詰めたあの能力、最初は時間停止系の能力かと思っていた。だが冷静に考えてみればもし時間に干渉するタイプの能力ならば時間を止めている隙の抵抗が一切できない時に攻撃をした方が効率が良いはずだ。それをしなかった、と言うよりも出来ないと言う事は時間を操る類の力ではないのかもしれない。


 「だとするなら瞬間移動かしら?」


 この類の力ならば一切視線を逸らさず見つめ続けていた相手の動きを捉えられなかった事にも合点がいく。


 「でもだとしたら不味いわね。ここに隠れていてもいつ目の前に現れるか分からないわ」


 そう言いながら仁乃は試着室のカーテンをゆっくりと開いて辺りを見渡す。まあとは言えこのエリアは女性の下着を置いてあるエリアだ。もし男性が紛れていれば周りから白い眼で見られるし目立つだろう。

 だけどいつまでもこの場所に隠れ続けるわけにもいかない。階段を飛び降りている際に聴こえて来たあの怒声、いざとなれば一般人を巻き込んで来る可能性だってある。


 「こんなバカな戦いに一般のお客さん達を巻き込めないわね。もし戦うとなれば人のいない場所を選ばないと……」


 だが今の仁乃は相手の能力の謎をまだ解明しきれていない。大まかな目星は付いているが所詮は可能性の話である。できれば相手の謎を解いて丸裸にしてからヤツの目の前に出て行きたいと考えていると……。


 「……不味いわね。近くまで来ているわ……」


 相手の能力について考察しつつも彼女は阿蔵の神力を感知し続けていた。

 屋上で不意打ちをされた際にはぬいぐるみに夢中で反応に遅れた。だが今の研ぎ澄まされている彼女はデパート全域は不可能だが自身に近づいて来る気配を察知する事は可能だ。


 感知できる神力の移動速度から考えてまだ私の居場所を掴んではいないわね。それに今は気配が徐々に遠ざかって行っているわ。


 どうやら阿蔵は自分とは違い神力を上手く隠蔽する事は不得手のようだ。逆に仁乃はイザナミからの指導の甲斐もあって大分気配や神力を隠す隠形のスキルは上達している。あの旋利律市でのラスボとの戦いの後にイザナミから鍛えてもらった成果の賜物だ。

 だがどうやら凡その居場所ならば阿蔵も分かるみたいだ。この試着室には近づいて来てはいないが近くをウロウロとしている。


 「アイツは私の位置を正確には特定できないみたいね。でも大まかな場所は探知可能……このまま此処で息を潜めていたらいずれバレるわね」


 その前に何としてもアイツの能力の謎を解こうと考えていた仁乃だが、その時に鞄の中のスマホがけたたましく鳴り響く。


 「……加江須からだわ」


 こんな状況で呑気に電話など余り賢い選択ではないのかもしれない。しかし未だに自分の居場所を正確に知られていない事、そして何よりスマホの画面に出て来た加江須の名前に気が抜けて電話に出た。


 「はいもしもし?」


 『もしもし、おい仁乃気を付けろ! 今この町に妙な転生戦士が紛れているみたいだ。もし妙な勧誘を受けたら警戒した方が良い』


 何とも手遅れな忠告だろうか。今まさにその妙な勧誘を受け、それを蹴ったら戦闘が始まってしまったのだから。

 しかしこの電話内容から加江須ももしかして既に自分の様に何者かにチームに加わるように勧誘でも受けたのだろうか? いや、今はそのことを考えるのは後回しにするべきだろう。まずは目先の敵をどうにかする事を考える方が先決だ。


 「悪いわね加江須。折角の忠告だけど今まさにアンタの言っている転生戦士と交戦中なのよ。少し戦いの方に集中したいから一旦切るわね」


 『え…おいそれって……!』


 電話越しで驚いている加江須の言葉を途中で切ると再び阿蔵の神力の正確な居場所を探知する仁乃だがここで彼女の顔色が変わった。


 「な、まず…!」


 どうやら加江須との会話で無意識に気を緩めてしまっていたようだ。それまでは上手く神力を隠匿していた彼女であったが恋人の声を聴き無意識に気配の消し方が粗雑になってしまったようだ。そのせいで通話前までウロウロとしていた阿蔵の神力が一直線にこちらへと向かって来ているのだ。


 「ちいッ!!」


 試着室内に留まっていては完全に袋のネズミだと判断して仁乃は勢いよく試着室から飛び出す。

 偶然にもその近くで下着を物色していた女性客は試着室から飛び出して来た仁乃に驚くがそんなリアクションを気にしている余裕も無い。

 真っ直ぐにこちらへ向かう神力の気配の方角に視線を向けるとやはりそこには阿蔵が立っていた。


 「ハッ、試着室に隠れていたなんて随分と臆病だな!!」


 そう言うと阿蔵はまたしても距離が開いているにもかかわらずにその場で短刀を構える。


 「(なっ、不味いわね。またあの瞬間移動が来る!)」


 反射的に能力で槍を形成しようとする仁乃であったがすぐ近くに一般女性が居た事を把握して思いとどまる。ここで下手に能力を使って目立つのは不味い。

 その判断の迷いによりまたしても一瞬で間合いを詰められてしまう仁乃。


 「そら、脳みそ貫いてやるよ!」


 仁乃の目の前まで一瞬で距離を詰めた阿蔵は短刀の切っ先を仁乃の額目掛けて突き伸ばす。

 もうこれで3度目とは言え一瞬で目の前に姿を出現されて仁乃の体が一瞬だが硬直してしまう。だが生き残るために脳天を突こうとする短刀を受け止めようと咄嗟に左手を盾として額の前にかざす。

 仁乃の額に突き出された短刀の刃は間に挟み込まれた彼女の左手を貫通した。


 「い、ああああ……!」


 手の平を貫通して凄まじい激痛が走り彼女の口からは小さな苦悶の声が漏れる。

 だがここで引いて弱みを見せてしまえば次の攻撃が飛んでくる。そう思い歯を食いしばり彼女はなんと左手を刃で貫かれながら右手で拳を握りそのままアッパーカットを叩きこんでやった。


 「ガフッ……て、テメェ……!」


 まさか手の平を貫かれながらも即座に反撃をする程の気概があるとは思わなかったのか、仁乃の繰り出したアッパーカットは攻撃した本人が想像していた以上にクリティカルヒットした。

 真下から拳で顎を打ち抜かれた阿蔵の体が宙に浮かび、その浮遊している体が地面に着地するよりも早く彼女は側頭部に蹴りを叩きこんでやった。

 凄まじい豪風と共に繰り出された蹴りはまともすぎるほどまともに阿蔵の側頭部を捉え、そのまま彼の肉体は吹き飛んでいって下着の陳列棚へと激突した。


 「きゃあああ!? 何、なになに!?」


 二人の近くで下着を物色していた女性客は目の前で起きた光景に悲鳴を上げながらその場から逃げ去った。

 

 「グ……不味いわね。今の悲鳴で人が集まって来るわね……うぐっ!」


 絹を裂くようなあんな悲鳴を上げられてしまえばすぐに他の客や店員が来てしまうだろう。

 野次馬が集まってくる前に彼女はその場から急いで立ち去ろうとする。その際に移動しながら彼女は手に刺さっている短刀を引き抜く。


 「くぅぅぅぅ……うあっ!!」


 深々と突き刺さっている刃を脂汗を浮かべながら引き抜きそのまま人気の無い場所を目指して移動をする仁乃。

 後ろを振り返って見ると阿蔵が鬼の様な形相をしながら頭に被っていた下着を引き裂いていた。

 

 「よし、あの鬼みたいな顔から察するに私の後をちゃんと追ってきそうね…」


 仁乃が倒れていた阿蔵に追撃を加える千載一遇のチャンスを見送りあの場を立ち去ったのは一般客を巻き込まぬためであった。あのままあのエリアで戦闘を続行していれば怒り狂ったあの男の事だ。周りの危害など考えもせずに暴れていたかもしれない。

 だがあの般若の様な形相から奴は間違いなく自分に執着して後を追ってくれるだろう。ならばここは一先ず人気の無い場所を目指して……。


 能力の謎を解くのも重要だがそれよりもまずは無関係の一般人を巻き込まぬ場所を目指そうとする仁乃だが、いきなり背後から重たい衝撃が走った。


 「ぐ…あ……」


 背中に鈍痛を感じながら振り返るとそこにはまたしても一瞬で阿蔵が真後ろに立っていた。そしてその手にはマネキン人形が握られていた。恐らくは神力で強化されたあの人形で背中をぶっ叩いたのだろう。

 たかがマネキンとは言え神力で強化を施されればそれはもう十分な凶器だ。


 背後から手加減無しでマネキンを叩きこまれた仁乃はその場で前倒しとなり床の上を転がって行く。


 「ぐ…なんつーモンで殴ってくれる…ガウッ!?」


 すぐに体を起こそうとすると今度は頭部にマネキンが叩きこまれそうになる。その振り下ろし攻撃は間一髪で避けれた、だがその直後に飛んできた蹴りが仁乃の右肩を蹴り付け更に通路の床を滑って行く。


 痛みに顔を歪ませながら何とか体制を整えようとする仁乃だがまたしても一瞬で距離が詰められており、またしても頭部にマネキンが振り下ろされそうになる。

 だが彼女の頭部が潰されそうになる直前、偶然にも近くに居た男性客が大声で割り込んで来た。


 「おい何やってるんだお前! 女の子相手に乱暴するな!!」


 見た感じでは大学生位の青年が阿蔵を止めようと声を荒げて止めに入る。

 そんな正義感に溢れる青年が癪に障ったのか阿蔵は能力を発動、そして仁乃のすぐ傍に居た阿蔵は一瞬で止めに入って来た青年の目の前へと移動を終えていた。


 「うぜぇんだよクソ偽善者!!」


 そう罵声と共に神力で強化したマネキンをフルスイングして青年の顔面に叩きつける。

 一般人の青年に神力で強化された鈍器の攻撃に耐えることが出来るはずもなく青年は前歯を全てへし折られ、鼻まで潰しながらそのまま吹っ飛んでいく。


 「ぐっ、ふざけんじゃないわよアンタ!!」


 一般人に容赦のない攻撃を振るう阿蔵に怒りを覚えた仁乃は背後から阿蔵の体を縛り、そのまま彼女は糸を両手で握ると縛り上げた彼の体を引っ張りぶん回した。そして空中に投げ出された彼は近くの自販機に頭から突っ込む。


 「ぐ…もう本当に許さねぇぞ……」


 自販機の取り出し口に突っ込んでしまった頭を引っこ抜く阿蔵、その頭部からは今の一撃で出血をしており血走った目で仁乃を睨みつける。

 だが阿蔵が振り返った時には仁乃はもう背を向け走り去って行っていた。


 仁乃は走りながら顔だけ振り返ると挑発の言葉を阿蔵にぶつけてやった。


 「私が憎いなら追いかけて来なさいよ! まあもうそれ以上怪我をしたくない腑抜けならそのまま何処へなりとも消えなさい!!」


 ここまでいい様にしてやられた阿蔵は額からブヂンと言う切断音が聴こえた気がした。

 彼は立ち上がるとすぐ隣でそびえ立っている自販機に裏拳を怒り任せに叩きつけて破壊する。


 「もう楽に死ねると思うなよ……」


 そう言いながら阿蔵は血濡れの顔でまるで幽鬼の様な足取りで逃げて行く仁乃の後を追って行った。



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