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失恋した直後に死んだら俺にハーレムができました。恋人達は俺が守る!!  作者: ゆうきぞく
第十三章 転生戦士激闘編 序章
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デパートの屋上での勧誘


 加江須が仁乃へと連絡を掛ける時よりも時間は少し遡る。


 この日、仁乃は大型デパートへと足を運んでいた。その理由に関してはこのデパートで限定販売されているぬいぐるみを手に入れる為と言う如何にも女の子全開の理由であった。

 ちなみに彼女が加江須などにも連絡せず独りでやって来たのはぬいぐるみの為にわざわざデパートまで足を運ぶ事を知られるのが恥ずかしかったからだ。もう自分がぬいぐるみ好きである事は知られているがそれでも高々ぬいぐるみ1体の為に遠出のデパートにまで足を運ぶ事を知られるのは少々恥ずかしいものがある。


 デパートの中へと入った仁乃は早速お目当てのぬいぐるみのあるホビーエリアを目指す。

 近場でない初めて来たデパートに多少迷いながらも目的地のエリアへと無事に到着した。だが目的のエリアへやって来たと同時に、そのエリアの客層を見て少し顔が引き攣ってしまう。


 「うわー…やっぱり小さい子ばかりじゃない……」


 ホビーエリアと言う事もあり周りには自分よりも一回り幼い子供ばかりだ。そんな空間に女子高校生の少女が立っているのは些か不似合いだと我ながら思えて仕方がない。一応は自分よりも年齢が上の客も居るがそれらは全て小さな子供に同伴している親御さんばかりだ。


 とは言えこの程度の羞恥心などいちいち気になどしていられない。何としてもここで販売されている限定ぬいぐるみ『巨大ヌココ』を手に入れるのだ!


 ちなみに補足として説明を付け加えるのならば彼女の手に入れようとしているヌココと言うぬいぐるみは子供向けアニメである魔法少女のお付きマスコットキャラだ。ちなみにこのヌココの決め台詞は『お前たちの臓物を抉りぬいてやる!』と愛らしい見た目とは裏腹の子供番組とは思えないショッキングなものである。


 「えーと……あ、見つけた。けど……」


 店内を色々と見て回っていると遂にお目当ての巨大ぬいぐるみを発見した仁乃。

 ぬいぐるみの近くには多くのちびっ子達が興味深そうにヌココを見つめている。しかし値段が値段だけに小さな子供には手が出せず売り切れにはなっていないが、しかしあの自分よりも一回りも二回りも幼い子供の中に入って行くのは中々に度胸が入る。


 「ぐ、今更その程度の羞恥心なんてどうでも良いわ! 待っていなさいヌココ!!」


 羞恥心で顔がほんのり赤く染まっているがこの程度の事で今の自分の歩みを止める理由にはならない! そう意を決すると彼女はお目当ての巨大ヌココの前までちびっ子達を優しく押しのけて前に出る。

 

 「ちょっとおねえちゃんなに~?」


 「わりこまないでよぉ~」


 小さな子供達が無垢な瞳を向けて非難を飛ばして来るがお構いなしにぬいぐるみを棚から取るとそのままレジへと速足で向かう。

 

 「ねえママ、あのおねえちゃん大人なのにぬいぐるみ買ってるよ?」


 「ふふ、そうね」


 普通の人間の聴覚では拾えない親子の会話だが仁乃の耳にはきっちりと届いており、彼女の頬が更に朱に染まる。そのままレジへと持っていくと周辺の子供に付き合っている親御さん達が小さく笑っている気がする。


 「(何よ何よ! 高校生がぬいぐるみ欲しがるなんて珍しい事でも何でもないじゃん!)」

 

 出来る事ならコレを口に出して言ってやりたいがそんな事をすれば更に目立つ事になる。とにかくパッパッとお金を払ってパッパッとこのエリアを出よう。

 お金を出している際に店員が少し笑いを堪えている様に見えたが見て見ぬフリをする。そして袋にぬいぐるみを入れるとそのままダッシュでホビーエリアを出て行った。


 「ああ~……こっぱずかしかった……」


 ようやく顔の熱が引いて来た仁乃は近くのベンチに座って缶ジュースを飲んでいた。

 しかし周囲の客はまだしも店員までもが吹き出すのを我慢していたと言うのは如何なものだろうか? 正直に言えば心象はかなり悪く思えるのだが……。

 だが羞恥心に晒され続けた甲斐もあってお目当てのヌココは手に入った。袋を開けて中を覗き込むとつぶらな瞳をしたぬいぐるみと目と目が合う。


 「えへへ~♪」


 お目当てのぬいぐるみと目が合って思わず頬がでれっとしてしまう。しかしそんな袋の中身を見て笑っている彼女を通行人は奇異な目で見ており慌てて袋を閉めて咳払いと共にだらしない顔を引き締める。


 こんな一般通路じゃ行き交う人達に変な眼で見られるわね。でも折角手に入れたぬいぐるみをもっと良く見たいなぁ~……。


 自宅へ帰れば人目など気にせずいくらでも好きなだけぬいぐるみを眺められる。だが出来る事なら今すぐにでも購入したヌココをもっとこの瞳に焼け付けたい。出来る事なら抱きしめ心地も確かめたい。そう考えて彼女はもっとも人目がないであろうデパートの屋上へと向かった。

 屋上へと向かう階段を歩いている最中にふとある可能性に気付く。もしかしたらデパートの屋上はむしろ小さな子供で溢れているのではないか? かつての自分の記憶、このデパートではないが別のデパートに幼い頃に小さな屋上遊園地で遊んだ記憶がある。


 「もしそうだったら大人しく家まで我慢しましょう……」


 しかし屋上に着いてみると自分の想像していた簡易的な遊園地などは存在せずがらんどうの空間が広がっていた。

 思わずガッツポーズをして袋からぬいぐるみを意気揚々と取り出した。


 「はあ~…やっぱり凄く可愛い。今日から私の家に来るんだからヌココじゃなくて別の名前を考えましょうか♪」


 そう言いながらぬいぐるみを両手で抱き上げるとまるで子供の様なご満悦な表情を浮かべる。


 「はあ…でもこの子はどこに置こうかしら? もう私の部屋はいっぱいで空きスペースもないからなぁ……!?」


 数分間の抱擁で彼女が満足してぬいぐるみを袋に仕舞い込もうとした次の瞬間、彼女は背筋に寒気が走り一気に真横へと跳んだ。

 彼女がその場から跳んだ次の瞬間、彼女の立っていた場所に苦無が突き刺さったのだ。


 「へえ、殺気も神力も隠していたんだけどやるねぇ。直前で僅かに漏れた殺気でも感じ取ったのか?」

 

 「……誰よアンタは?」


 屋上の入り口を見てみるとひとりの少年がこちらを見てニヤニヤと笑っていた。


 オールバックの黒髪に耳には黄色のピアスが付けられており、そして服装は黒を基調としたコートを着ていた。年齢の割にはかなり大人びた雰囲気を纏わせており、そして何よりも目の前の男からは神力が漂っているのだ。


 「アンタ…完全に転生戦士みたいだけど私に何の用よ? 言っておくけど私はゲダツじゃないわよ」


 自分は人に仇名すゲダツではないと口にする仁乃であったが目の前の男が自分とゲダツを見間違えている訳が無い事は重々承知だ。だがハッキリ言って目的がまるで見えてこない。少しでも情報を引き出そうと考えて会話を始めようとする彼女であるがここで目の前の男はアッサリと目的を告げて来た。


 「いやー、合格合格。どうやら多少の修羅場は潜ってきているみたいだな」


 目の前の男は不遜を強く感じさせる笑みを浮かべながらいきなり拍手し出したのだ。

 しかしいきなり合格だなんて言われても仁乃にとっては何の事か分からず訝しむ。そんな彼女の眉根を寄せる顔を見て男はまあまあと宥める様な仕草を取って来た。


 「そんな顔をするなよ。折角の美人さんが台無しだぜ? 心配しなくても俺の目的なら今この場で話してやるよ」


 そう言うと彼は改めて軽く拍手をしながらこう言って来た。


 「俺は興但市からやって来た転生戦士の阿蔵彪(あぞうひょう)ってもんだ。もう気づいているだろうがお前と同じ転生戦士をやっている。それでお前に声を掛けた理由はスカウトだ」


 「スカウト…?」


 「ああスカウト。実は俺は転生戦士同士で沙羅ってヤツをリーダーにチームを組んでいてな、そのチームメンバーにお前をスカウトしたいんだよ」


 「はあ? 何で私が別の市、ましてや初対面の転生戦士のチームに加わらなきゃならないのよ?」


 いきなり自分達のチームに参加しろだなんて言われても頷ける訳がない。いや、そもそも目の前の男はいきなり自分に不意打ちを仕掛けて来た相手だ。そんな輩とはチームどころか同じ空間にする居たくはない。

 この事を目の前の常識知らずの馬鹿野郎に告げると目の前の馬鹿は悪びれる事なくこう言い返して来た。


 「心配しなくてもさっきの苦無は出血箇所の少なそうな部位を狙っていたぜ? アレを避けれなきゃ勧誘する価値無し、逆に今みたいに回避出来たら勧誘する価値有り、みたいに考えていたんだよ」


 そんな下らない理由で怪我を負わされそうになった仁乃からすれば納得できないどころか怒りすら湧いてくる。

 

 「はん、悪いけどアンタみたいな自分の勝手な判断で攻撃してくる人間とは手を組む気はないわ。分かったら今すぐ私の目の前から消えなさいよ」


 「おいおいそう言うなよ。実は俺達は今別の転生戦士のチームと軽い抗争になる一歩手前なんだよ。だから味方が欲しいんだよ。だからわざわざこの焼失市にまで足を延ばして来たんだぜ? ほら、言うても転生戦士ってゴロゴロ居る訳でもねぇだろ?」


 話を更に聞いて行くとどうやら仲間を募っている理由も嘆かわしいものだった事が分かった。

 ゲダツを討伐する為の戦士同士に争いに巻き込まれるなんて御免被る。そんな勝手な戦争はソチラだけでやっていればいい。


 「何にせよ私はアンタのチームになんて死んでも入らない。これがアンタの勧誘に対する答えよ」


 「ふ~ん…そうかぁ……」


 もう話す事など一切ないと言わんばかりの態度を貫く仁乃に阿蔵は小さく舌打ちをする。だがどう言う訳か一向に自分の前から立ち去ろうとしないのだ。


 「ねえ、もういいでしょ? 早く私の前から消え……!?」


 もうこれ以上は顔を見合わせたくないと思ってもう一度消える様に促す彼女だが、喋っている途中に再び苦無が飛んできたのだ。

 その苦無は風を切って仁乃の頬をスレスレで通り抜けていく。


 「今この町には敵対チームの転生戦士が同じくスカウトしているって噂を聞いていてな、お前の方にソイツ等が来て勧誘してもしお前がそっちのチームに入られると面倒なんだよ」


 そう言うと彼は口元を歪に歪めて両手にコートの内側から隠していた短刀を取り出す。


 「悪いがウチの勧誘のルールでな、もし断られた場合は相手のチームにすっぱ抜かれないようしばらく戦闘不能状態にする、もしくは殺害するようにリーダーの沙羅から言われてんだよ」


 「ぐ、ふざけんな…!」


 自分の都合のみを一方的に言うと阿蔵は仁乃の言葉を無視して一気にダッシュを切って彼女へと向かって行った。



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