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失恋した直後に死んだら俺にハーレムができました。恋人達は俺が守る!!  作者: ゆうきぞく
第十三章 転生戦士激闘編 序章
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あの日から私は貴方様のことが……♡


 無事に屈強なゲダツの討伐に成功したその後だが当然そのまま解散とはいかない。ようやく顔を合わせる事の出来た謎の少女と会話をする為にその場にいた皆は場所を移す事にする。そうして近くのファミレスへと足を運んでいた。

 店内に入ると皆は一番広い席を選ぶと着席し、そして飲み物を頼み終わると早速謎の少女へと質問を投げかける。


 「それで、どうして君は俺の後をずっと付けまわっていたんだ?」


 最初に質問を投げかけたのは尾行されていた加江須だ。

 彼が少し鋭い眼を向けながら対面に座って居る彼女を見ると少し奇妙な反応を見せられる。


 「そ、そんな力強い瞳で見つめられると困ります♡」


 「え、いや……」


 まさか頬を染めて羞恥心を見せる様な反応を取るとは思ってもおらず少し調子がくるってしまう。他のメンバーも相手がいまいちどう言う人間か分からず困惑している。だがその中で黄美だけは少女の反応を見て黒い炎を燃え上がらせていた。


 「(この娘の反応…間違いないわ……)」


 自分の目の前で恥ずかしそうにモジモジとしている彼女の反応を見て黄美の疑いは確信へと一気に変わる。


 「(間違いなくこの女はカエちゃんに惚れている!!)」


 自分の恋人に完全なるほのじである事が分かった黄美はずいっと体を前面に押し出して単刀直入に問い詰めて行く。


 「あなたが誰かは知らないけど一つだけ確認して起きたい事があるわ。あなた…さてはここに居るカエちゃんに好意を抱いているんでしょう?」

 

 「え、いやいやいきなり何言ってるんだ黄美?」


 いくらなんでもその予想は的外れだと思っていた加江須が少し呆れる。だが彼が否定しようとするとほぼ同時に少女が恥じらいつつもまさかの肯定をして来たのだ。


 「そ、そんなハッキリと正解を言われると恥ずかしいですよぉ。で、でも本当の事なので否定はできませんね…」


 「いや何を言っているの君は!?」

 

 てっきり否定して来るとばかり思っていたがまさかの全肯定に思わず大声でツッコミを入れてしまう。

 いきなり大声を出しながら席を立った彼に周囲の客達が怪訝そうな顔をして視線を向けて来た。


 店内の視線を一身に受け少し赤面しつつゆっくりと着席する加江須。

 未だにモジモジと身を捩っている少女に今度は愛理が別の質問を投げかける。


 「え~とさ、取り合えずまずは自己紹介から始めてくれないかな? 私たちまだあなたの名前すら知らないんだから」


 「あ、それもそうですね。それに…好きな人にも私の事を知ってもらいたいですし♡」


 「な、何なのよコイツ…?」


 加江須に熱っぽい視線を向けながらどこか淫靡に笑う彼女に思わず仁乃の顔が引き攣る。予想以上に理解不能な相手にこの時点でこの場に居る皆の心労は大きく、そして黄美は嫉妬の炎と共に敵意が膨らんでいる。

 そんな最悪の空気の中で彼女は特に意に返さずに満面の笑みで自己紹介をし始める。


 「私の名前は如月恋弧(きさらぎれんこ)と言います。そしてもう分かってるとは思いますがあなた達と同じ転生戦士です」


 周囲の空気などまるで気にもしていない天真爛漫な自己紹介をする恋弧。

 ここに来てようやく彼女の名前が知れた加江須たちは次々と質問を連ねて行く。


 「えーと…如月さんと言ったな。次の質問だがどうして俺の『恋弧です』…はい?」


 「如月なんて他人行儀な呼び方はやめて下さい。どうか恋弧と…」


 少し潤んだ瞳を向けながら名前で呼んで欲しいと言われ加江須が少し動揺してしまう。

 ハッキリ言ってこれだけの美形の女性に甘えた声で迫られてしまうと男である以上はやはり動揺してしまう。とは言え彼には愛する恋人がいるのでこの程度では呑まれたりはしない。

 すぐに真面目な顔つきになって改めて質問を続ける。


 「分かった。じゃあ恋弧さん、どうして君は俺を尾行し続けていたんだ?」

 

 これが一番彼の訊きたい質問であった。何故同じ転生戦士の彼女が今の今まで自分をコッソリと監視するかのような事をしていたのか? もしもこの質問の答え次第では穏便に済まない可能性だってある。

 そう考えると無意識にこの場に居る皆の緊張感が高まる。黄美に至っては初めから敵意をぶつけ続けているので神具の指輪を力強く握っていつでも戦闘が出来るように身構えてすらいる。


 だがここでまたしてもこの恋弧と言う少女は斜め上の答えを出して来たのだ。


 「それは……愛する人をお守りする為、それともし叶うならお近づきになりたくて……♡」

 

 「ねえ私なんだか頭が痛くなってきたんだけど」


 さすがにここまで理解不能なセリフを立て続けに言われて仁乃はもう疲れたと言う顔をして溜息を零す。このセリフを彼女が本心で言っているならまさかの愛理のストーカーと言っていた冗談が正解なのだから。

 そんな仁乃の気苦労など露知らず恋弧はさらに加江須へと自身の想いをぶつけ続けた。


 「ずっと貴方に声を掛けようと何度も何度も思っていました。ですがいざ貴方の姿をこの瞳の中に納めてしまうと緊張から近づく事すら出来ませんでした。今だって喜びと同じくらいに緊張しています。ほら、私の心臓の鼓動、凄く早まっているでしょう?」


 「ちょ、き、君!?」


 なんと恋弧は加江須の腕を掴むとそのまま彼の手を自身の胸にぴたっと押し当てたのだ。

 とてつもない柔らかく、それでいて適度な弾力のある豊満なバストに触れて加江須が顔をゆでだこの様にして顔中から火を出した、物理的に。

 当然そんな行動を取られればこの場に居る彼の恋人たちが看過する訳もない。


 「「「何をやっているかぁぁぁぁぁ!!!」」」


 一気に怒りで顔を真っ赤した恋人たちは恋弧の腕を掴んで無理矢理彼の手を胸部から引き離す。

 先程の加江須の大声以上に騒ぎ立てまたしても店内の視線が彼等の席に集まる。だが今度は周囲の視線程度では騒ぎは鎮火せず仁乃たちは何の真似かと恋弧へと噛み付いた。


 「ア、アンタは何をしてるか!? いきなり加江須の手を自分のむ、胸に押し当てて!!」

 

 「そうだよ! いくら何でも私たちの前でそんな事するなんて許されないから!!」


 「よくも……よくもその脂肪の塊であるその駄肉でカエちゃんを誘惑しようと、ゆ、ユルサナイ!!」


 もう黄美に至っては指輪の力をこんな場所でも発動しそうな勢いだ。

 さすがにこれは黙って見ていられず加江須が全力で三人を諫めようとする。


 「落ち着けみんな! ほら、周りのお客さん達も見ている…あっ、コラ黄美駄目だぞ! こんな場所で神具の力を発動しようとするな!!」


 必死になって暴走寸前の恋人たちを止めようと奮起する加江須。しかし恋人たちの怒りは余りにも大きく中々言う事を聞いてくれなかった。しかもどさくさに紛れて恋弧が『ああ怖いです♡』などと言いながら加江須に寄り添って来たので更に修羅場と化してしまう。

 

 結局は店員が来てこれ以上騒ぐのなら強制退店させると言われようやく場が一旦は納まったのだった。


 「ゴホンッ! え~…とりあえず一度整理しましょう」


 立て続けに衝撃的なセリフで収集が一度つかなくなったので一度場を整理し始める加江須。


 「まず君は俺たちと同じ転生戦士で間違いないんだよね?」


 「はい♡」


 「それで君は俺をゲダツの危機から陰ながら守り、尚且つチャンスを窺って俺に話し掛けようとしていたと?」


 「はい♡」


 「う~ん…じゃあまずどうして君は俺に惚れているのか訊かせてくれない? 正直に言えば君とは初対面だと思うのだけど?」


 加江須がそう言うと恋弧は少し寂しげな顔をする。


 「どうやら加江須さんは私の事を憶えてはいないんですね。いえ、まあここまでの会話の流れから想像していましたけど……」


 彼女は少し残念そうにしながらも仕方がないとどこか納得もしていた。この言い回しの仕方から考えると自分はどうやら過去にこの恋弧とどこかで出逢っているらしいが……。

 しかしやはり過去を遡っても目の前の少女との思い出は見当たらない。これほどまでの美人と顔を合わせていれば少しは記憶に残っているとは思うが……。


 「悪いが君と俺の接点を話してはくれないか? 正直に言えばいきなり俺が好きだったと言われてもまだ納得もできていない」


 加江須が自分と彼女の過去のついて問うと彼女は頷きながら話を始めた。


 「加江須さんは私の事を憶えてはいないようですが私は今でもちゃんと記憶に残っています。あの日あなたに救われた出来事を……」


 それはまだ加江須が転生戦士となるよりも以前の話であった。

 彼は休日を利用して近くのデパートにまで買い物に出かけていた。その理由としては正直下らないものだ。新発売のゲームを手に入れようなんて如何にも暇を持て余している学生の休日であった。


 しかしデパートへと向かう道中で彼はひとりの少女が2人の男に絡まれている現場を目撃した。


 『おいおいアイツら何してんだよ?』


 加江須の視線の先ではまだ中学生と思われる小柄な女性が二人の大学生と思われる男に絡まれていたのだ。

 正直に言えばこの時の彼はまだ超人でもないただの高校生。面倒ごとに絡まれたくはないと見て見ぬフリをした方が賢い選択だと思っていた。


 そのまま彼はルートを変更してその場から逃げ出そうとしたのだが……。


 『や、やめて下さい!!』


 心の底から拒否をしている少女の悲痛な声を聴いて彼は反射的に男たちへと叫んでいた。


 『お、おいやめろよアンタら! そんな年下の女の子相手に年上二人で恥ずかしくねぇのかよ!!』


 思わず強気な口調でそう叫んでしまった彼は心の中では自分の行いを後悔しかけていた。

 別に絡まれている少女は自分の知り合いでも何でもない。仮にここで無視しても誰かに責められる訳でもない。

 そう頭では理解しつつも視線の先で涙目になっている彼女の姿を見てしまうと止めに入らずには入られなかった。


 加江須に横から怒鳴られた二人組は当然その挑発的な言葉に反応し、そして少女の体から手を離すとそのまま加江須の事を睨みつけて来る。


 『なんだテメェは? 今の偉そうなセリフは俺たちに言ったのか?』


 そう言いながら男たちが少女に背を向けた瞬間、加江須は大声で少女に逃げるように叫んだのだ。


 『今の内に逃げろ!!』


 加江須のその言葉にビクッと肩を震わせた少女はすぐに背を向け全速力でその場から逃亡をした。

 

 『テメェ…いい度胸してんじゃねぇか』


 当然そんな真似をされた二人組が笑って加江須の事を許す訳もない。

 それから加江須は年上の男二人にボコボコにされ、しかも財布の中の金も全て没収されてしまった。


 『ケッ、次そのうぜぇ顔を見せたら承知しねぇぞ』


 そう言いながらその場から立ち去って行く男たちに言い返す気力もなく道端に仰向けで倒れる加江須。


 『はあ…マジで俺何やってんだ? 金まで全部取られてしまったし…ついてねぇ……』


 だが体中がきしんで金まで奪われても彼はどこか清々しい表情をしていた。

 確かに馬鹿な真似をしてしまったのかもしれない。だがそのお陰であの娘は無事に逃げられたのだ。ならば自分のこの行動は決して損ではないだろう。


 そう自分を褒めながら加江須は逃げて行った少女の顔を思い浮かべていた。


 とても長くて綺麗な黒髪、そして前髪の一部分には薄緑のメッシュの入っていた彼女の顔を……。


 そこまで話を恋弧から聞かされてようやく加江須は彼女との出会いを完全に思い出した。


 「ま、まさかあの時に助けた女の子は……」


 そう言いながら加江須は信じられないと言った表情で恋弧に震えながら指を差す。そんな彼に対して彼女は小さく笑みを浮かべながら無言で頷いた。

 

 「ほ、本当に君があの時に俺が助けた女の子と同一人物なのか?」


 加江須が疑いを持ってそう口にするのは無理も無いだろう。

 もしもあの時から数年程度時間が経過していると言うのであれば彼だってここまで取り乱しはしないだろう。


 いやいやちょっと待て。俺の記憶が確かなら彼女を助けてからそんなに時間が経過していないはずだぞ。少なくとも目の前の彼女は俺が助けた時と比べると明らかに数年は成長しているじゃないか。

 

 確かに記憶の中の彼女の面影もある。特に髪の毛の薄緑のメッシュはかなり印象には残ってはいる。だがやはり目の前の少女が同一人物だとは信じられない。


 加江須の疑いの眼差しを察したのか恋弧は自分の容姿の秘密について語り出し始めた。


 「やはり私のこの姿について色々と謎を感じますよね? 確かに傍から見れば中学生には見えないでしょうし」


 「はあ中学生!? いやいやいやさすがに嘘っしょ!?」


 どう考えても自分たちと同年代としか思えない恋弧のカミングアウトに愛理が全否定して行く。

 彼女だけではなく仁乃と、そしてずっと敵意を纏わせていた黄美もいくらんでも嘘でしょと言う表情をしている。


 確かにいくらなんでも出逢ってからこの短時間でここまで急成長を遂げるとは思えない。だがここで加江須が彼女の劇的な成長について思い当たる節をひとつ見つけた。


 「もしかして願いを叶える権利で……」


 「はい、私は一度願いを叶えてもらいました。その願いの内容は『私の肉体を高校生程度まで成長させてほしい』と言うものです」


 その答えを聞いて全員がようやく納得できた。何でも願いを叶える神からの恩恵ならば確かに肉体年齢を進める事ぐらいは可能だろう。何しろ死んだ人間すら生き返らせれるのだから。

 しかし願いを叶えた事があるという事は彼女の実力は中々のものだろう。それなりのゲダツを討伐しなければ願いは叶えられないのだから。


 「でもどうしてそんな願い事を叶えたんだ?」


 せっかくの願いでどうして自分の肉体年齢を成長させたのかと問うと彼女は頬を染めて加江須にまたしても爆弾を投下した。


 「私がこの願いを叶えた理由……それは全てあなたの為です加江須さん♡」


 そう言うと彼女はまたしても熱の籠った視線を加江須に向け始める。


 「ど、どうして俺の為だと?」


 「あの日、あなたに助けられた私の心は完全に貴方様に奪われてしまいました♡ ですがまだ未発達の中学生である私は魅力と言う点では自信がありませんでした。ですがあの日以降にひょんなことから転生戦士となり、そして願いを叶える権利を得るためにゲダツを狩って狩ってついにこの魅惑の肉体を手に入れた次第です♡」


 そう言うと彼女は両腕で自身の手にした豊満な胸を挟んで誘惑的な瞳で加江須にこんな事を言い始める。


 「久利加江須さん。私はあの日からあなたをお慕いしています。その為にこうして自らの肉体を成長までさせました。なので…責任を取って下さいね♡」


 そう言うと彼女はとても中学生とは思えない程の妖艶に微笑んで自身の唇をペロリと舐めた。



とうとう中学生ヒロインまで登場しましたね。まあ肉体は高校生レベルまで発展していますが。

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