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失恋した直後に死んだら俺にハーレムができました。恋人達は俺が守る!!  作者: ゆうきぞく
第十二章 氷蓮過去決別編
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転生戦士としての格の違い


 一切姿の見えない相手に対して双剣と共に構えを見せる氷蓮であったが具体的な対処法は未だに見つからなかった。ただ姿が透明人間であると言うだけならばさほど問題はない。だが相手の神力すら感じ取れないのは厄介過ぎる。

 最初の一撃こそは強烈な殺気を背後から感じたから避けられたが、2撃目はモロに攻撃を受けてしまった。だがこの2回の攻撃で一つだけ分かった事がある。


 今俺に攻撃しているヤツは俺を完全に舐めている。だがその慢心こそが付け入る隙になる。


 初撃を回避されたが2撃目は自分に攻撃を当てる事が出来ていた。その2撃目の際に一撃で相手を仕留められる武器でも使って攻撃を加えていれば今頃自分を戦闘不能に出来ていたかもしれないにもかかわらず。


 「………」


 相手がまだ慢心している今こそがチャンスなのだ。逆にまだ自分を舐め切っている今ならこちらの一撃必殺の攻撃で相手を戦闘不能に出来るかもしれない。

 

 「グガッ!?」


 今度は背中からまるで蹴りを入れられたかのような鈍痛が響いた。無様に前のめりとなりながら前方に転がって行く氷蓮。

 汚れた衣服など気にもせずすぐに立ち上がるがやはり相手の姿は視認できない。


 いくら全身を神力で補強しているとは言え流石にどこからくるか分からない攻撃を受ける以上はダメージも通常よりも大きい。攻撃される場所が分かればその個所周辺に神力の配分を多くする事もでき、その部分に気を入れる事も出来る。だが何時どこから来るか定かでない攻撃には全身を神力で覆って均一に肉体を強化するしか術がない。だがこのままでは間違いなくジリ貧、早く相手の位置を察知する方法を探さなければ……。 

 だがかと言って中途半端な策で相手を刺激してしまえば敵の攻撃手段も変わるかもしれない。今は嬲るかの様な戦法を取っているが自分の身に危険が迫れば手法を変えてくるだろう。それこそ刃物の様な相手を殺傷できる武器を使ってくるかもしれない。


 「(くそ…この攻撃を何度も受けるのは正直に言えばキツイぜ。攻撃された部位がまだ痛みが抜け切らねぇ……)」


 だが不意打ちによる直撃をまともに受けても普通に立っていられる事を考えると自力は自分よりも下なのだろう。つまり姿さえ捉えられれば十中八九コソコソと不意打ちばかりするこんなヤツなど相手ではない。とは言えその相手の位置を知る術が……!!


 決して賢くはない脳細胞を働かせていると3度目の見えない攻撃が腹部に思いっきり叩きこまれる。目では見えないがボディブローでも入れられたのだろう。

 深々と突き刺さる重い衝撃に胃液がせり上がってくるが嘔吐は何とか堪える。そして痛みを堪えつつも彼女は内心で笑っていた。


 「へへ……散々嬲ってくれてよ…だが思いついたぜ。コソコソ隠れているテメェの居場所を判別する手段をよぉ!!」


 語気を強めながら氷蓮は自分の周辺360度ぐるっと大量の氷柱を展開した。そしてほとんど間を置かずにその凍てつく槍を一斉に手当たり次第に撃ち出した。

 四方八方へと射出される氷柱は空中で他の氷柱と激突して大量の氷片と共に地面に突き刺さる。

 完全にやけくそとしか思えない攻撃に対して姿を消している転生戦士は内心で呆れ果てていた。


 何だコイツは? まさか物量で無理やり見えない俺に攻撃を当てようと考えているのか?


 もしも自分のこの考えがものの見事に的中していたとしたら想像以上に目の前の女は期待外れだ。無駄な鉄砲も数うちゃ当たるなんて漫画だけの世界だ。

 内心で氷蓮に対して失望をしつつ降り注いでくる氷柱を全て躱して距離を縮める。


 「(この一撃でノックアウトだッ!!)」


 一気に氷蓮の懐寸前まで迫った男は右拳に神力を一点集中し彼女の腹部を打ち抜こうとする。相手が一般人であるなら命すら失いかねない攻撃、だが相手が転生戦士であるなら意識を刈り取る程度で済むだろう。この女は商品になるので殺すのも不味い。


 男の振るった拳は氷蓮の腹部まで稲妻の様な鋭さで伸びて行く。だがここで彼にとって予想外の出来事が発生する。


 「よお……やっと捉えたぜ」


 男の拳が突き刺さる一歩手前で氷蓮がニヤリと笑い氷で造形したハンマーを瞬時に作り出すと勢いよく振り回した。

 彼女の振るったハンマーは姿や気配を完全に消している筈の男の体に直撃、そのまま紙切れの様に吹き飛ばされて行く。


 「ぐがはっ!?」


 口から血反吐を吐き出しながら男は大きく吹き飛んでいく。その威力は絶大で攻撃を受けて肋骨が数本へし折れた男は激痛で思わず激しく咳き込む。


 「ごはっ…ガ八ッ!! な…何で俺に直撃を当てられた……」


 血を吐いて咳き込みながら彼は何故彼女がドンピシャで自分に攻撃を当てられたのか分からず困惑する。間違いなく能力は発動しており姿だけでなく神力すら感知は出来なかったはずだ。それなのにどうして……。

 

 モロに鈍器による攻撃で負傷した腹部を押さえながらゆっくりと立ち上がるがやはり骨の何本かはイッているだろう。しかも今のハンマーによるダメージが大きすぎるせいで男の集中が途切れ彼の能力が完全に機能しなくなっていた。集中力が途切れてしまい、姿は相変わらず消したままだが神力を隠し切れなくなっていた。

 例え透明化していようが神力を隠す事が出来なくなれば転生戦士ならば凡その位置は把握できる。


 「オラオラオラァッ!!」


 「ぐっ、コイツ…!」


 相手の能力が自分の与えたダメージのお陰で正常には働かなくなった事で一気に攻めかかる氷蓮。ここで追い込まなければ相手の体力が回復してまた神力まで能力で隠匿されてしまうかもしれない。そうなれば今この男を捕えることが出来た奇策はもう通じないだろう。

 両手で氷の剣を造形してソレらを凄まじい速度で透明化している相手に振るい続ける。


 「ぐっ…こ、このぉ…!」


 ダメージの余韻が大きく未だに能力が完全に調子を取り戻せず神力が漏れ出てしまう。そのせいで相手の少女から振るわれる双剣は自分の位置を見抜いて襲い掛かってくる。それらを必死に捌くが徐々に冷たい刃が肌を切り裂く。

 

 この男は姿だけでなくその身に宿す神力を相手に感知させないからこそ優位に立っていた。だが能力の最大の利点を封じられた今の彼はハッキリ言って氷蓮から繰り出される斬撃を対処しきれなかった。


 「(ば、馬鹿な!? いくら俺の位置が分かるからと言って何でこうまで押される!? 俺だって多くの場数を踏んで来た転生戦士なんだぞ!!)」


 同じ転生戦士でありながら氷蓮にドンドン傷をつけられ押されて行く自分の現状に理解が及ばない彼だが、ハッキリ言って彼が氷蓮に圧倒されている今の状況はある意味当たり前とも言えた。彼が実戦経験が豊富と言っても所詮倒して来た相手は一般人ばかりだった。現にこれまで彼はゲダツを討伐した経験はないのだ。それどころか一度ゲダツと戦った際には勝てぬと分かると逃亡したぐらいなのだ。

 

 そしてとうとう氷蓮の渾身の一撃は見事に男の急所を捉えた。


 姿は見えないが神力は感知できる。そこから凡その位置を検討して狙いを定めた場所に回し蹴りを叩きこむ。その一撃は見事に男に甚大なダメージを与えた。

 まるで紙切れの様に凄まじい勢いで再び廃倉庫の方へと吹っ飛んでいく男。そのまままともに着地も出来ずに背中から思いっきり倉庫の汚れた床に叩きつけられる。


 「ぐ…ぐあ……」


 男は白目を剥きながら口の端からは泡を出して失神していた。完全な戦闘不能状態を見て今まで余裕ぶっていた金城は滑稽な程に慌てふためいていた。

 パイプ椅子から転げるように落ちるとすぐに男に対して起き上がるように檄を飛ばす。


 「な、おい何やってんだ! 一体いくらお前に大枚叩いて雇っている思っている!!」


 足元近くまで吹き飛んで来た男の体を揺さぶりながら金城は唾を飛ばしてがなり立てる。だがどれだけ至近距離で騒ごうが身体を揺さぶろうが男は白目を剥いたまま起き上がってくれない。

 自分を守る為の戦士が使い物にならなくなると一気に態度が急変して慌てる金城の態度を見て俤治も連鎖で震えていた。

 

 「や、やべぇ…どうすんだよコレ…?」


 この金城のボディガードがもう使い物にならなくなったと言う事は自分たちの事を守る人間はもう居ないという事だ。つまり――自分は氷蓮に殺されてしまうという事だ。


 「う、うおおおおおおお!!」


 「なっ、どこ行く気だ俤治ィ!?」


 突然大声を出しながら倉庫の裏口の方まで一気にイモ引いて走り出す俤治。それを見て金城が慌てた様に呼び止める。だがそんな声など無視して全速力で裏口を目指して走り続ける俤治。


 冗談じゃねぇ! あんな化け物に俺が勝てる訳ねぇじゃねぇか!! だいたい金城のヤツも最悪の事態を想定しろよ。自分の雇っている転生戦士とやらが負けた時の事が考えられねぇのか!! アイツが余りにも余裕な態度を取っていたから俺だって調子づいて色々と氷蓮の餓鬼を煽ったりしてしまったじゃねぇか!!


 こんな事なら自分一人だけでもこっそりと逃げるべきだったと今更ながらに思う間抜けな俤治。だが彼がこの廃倉庫から逃げる事は不可能だった。

 もうすぐ裏口のドアに手を掛けることが出来ると思っていると背後から男の呻き声が聴こえて来た。反射的に振り返ると金城が床に蹲っており、その傍らには気絶していた筈の余羽が立っていたのだ。しかも彼女の体の至る所についていた打撃による痣が綺麗に消えた状態でだ。


 「逃がす訳ないじゃんおじさん。よっと」


 「あぎっ!?」


 軽い掛け声と共に余羽は床を強く蹴って一気に俤治の背後まで迫り、そのまま側頭部に蹴りを叩きこんでやった。

 情けない悲鳴と共に俤治の意識はそこで完全に途絶えるのであった。



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