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失恋した直後に死んだら俺にハーレムができました。恋人達は俺が守る!!  作者: ゆうきぞく
第十二章 氷蓮過去決別編
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氷蓮の焦り  

 

 まさかの氷蓮の屈辱ある過去を納めている写真をチラつかされてしまい余羽は下手に抵抗する事が出来なかった。そして逆に俤治は一気に余裕を取り戻したのか醜悪極まりない笑みを向けている。

 今にも噛み付きそうな雰囲気を醸し出している余羽に対してまあまあと諫める様に手の平を向けて来た。


 「落ち着けよ。もしもお前が俺の言う通りにしてくれるならこの写真は世間には公開しないぜ」


 そう言いながら自分の兄の娘を脅しの道具に使う叔父。

 吐き気を催す邪悪っぷりに余羽は悔しさの余り下唇を強く噛んで血が一筋垂れ落ちる。


 「本当はあの写真は張本人である氷蓮に使おうと思っていたがまさか友人に対して使うとは思いもしなかったよ」


 「アンタ…マジでいい性格してるよね」


 今すぐにでも目の前の害虫を潰して駆除したいがあの写真が複数枚ある以上はここでこの男を成敗しても意味がない。

 親友を守りたいがために彼女は結局この最低な叔父の言う事に従うしか出来なかった。


 「とりあえず俺に付いてきてくれないか? 俺の言う通りにしてくれればあの写真は全て処分してやるからさ」


 そう言いながら俤治は自分の隣によると肩に手を置いて来る。


 「~~~~~ッ!?」


 この世で最も汚らわしい手で衣服越しとは言え触れられ全身に怖気が走る。あまりにもおぞまし過ぎて反射的に突き飛ばしてしまった。


 「おやおやつれないねぇ。まあいいや、取り合えずついて来てくれないかな?」


 「………」


 こんなヤツにノコノコと付いて行けば何をされるか分かったモノじゃない。そう頭では理解しつつも先程の写真内に写り込んでいた親友の姿がぶり返される。

 結局は思い通りだとニヤニヤ笑う俤治の後に付いて行く事しか出来なかった。




 ◆◆◆




 余羽が俤治とそんなやり取りを繰り広げている頃、バイト先から帰って来た氷蓮は先にマンションへと戻っていた。

 余羽から渡されている合鍵を使って部屋の中に入ると彼女は疲れた様にカーペットの上に仰向けに寝転がった。


 「はあ~……ダル……」


 いつもは何の苦もないアルバイトが今日はとても苦痛に感じて仕方がなかった。だがそれはアルバイトの仕事内容が大変だったわけではない。あの叔父との再会が胸に引っかかって仕事にまで影響を及ぼしてしまったのだ。そのせいでバイト先の先輩からも今日一日だけで3度も注意を入れられた。

 

 「くそ…まさか今更あのクソと関わりを持つ事になるなんて…」


 あの腐れ叔父が自分は今このマンションで余羽と同居している事はさすがに知らないだろう。だが昨日、あの叔父に余羽の存在が知られた事が痛かった。これであの屑が余羽にまで接触して行くようになったら彼女に顔向けできない。


 「……このマンションを出た方が良いのかな?」


 もしも叔父関連で余羽に迷惑が掛かってしまえばもう自分は彼女に顔向けできない。そうなる前に自分はもうこのマンションを出た方が良いのかもしれない。だがさすがに置手紙だけ残して勝手に消えるのも常識外れな行為だろう。

 とりあえずは彼女が帰って来たらその辺の話もした方が……。


 そこまで考えていた時に彼女は違和感を覚えた。


 あれ…てゆーか余羽のヤツ帰ってくるの遅くね?


 別に余羽は何か部活に勤しんでいる訳でもなければ学校帰りにバイトを行っている訳でもない。それなのに今の時間帯にまだ帰宅していないのはよくよく考えてみればおかしい。少なくとも休日はまだしも平日にここまで帰宅が遅くなった事は無かったはずだ。


 次の瞬間――氷蓮の背中に冷たいものが走り抜けていく。


 「まさか…まさかな……」


 彼女は自分のスマホから急いで余羽に連絡を入れる。ただの勘違いの可能性もある。少し自分が神経質になり過ぎているのかもしれない。だがもしも、万が一あのクソ野郎が余羽に会う為に学園の近くで待ち伏せしていたとしたら? 

 自分の脳内に浮かんだ最悪の可能性を全力で否定しつつ余羽に電話する。これですぐに繋がってくれれば自分の杞憂であったと胸を撫で下ろせる。


 だが……いつまで経っても連絡が繋がらない。スマホからはツーツーと着信拒否の音が鳴り続けるだけだ。


 「おい…オイオイオイ!」


 いよいよ嫌な予感が加速して行き居ても立っても居られなくなった氷蓮は思わず立ち上がって再び連絡を入れる。だがそれでも余羽は一向に電話に出てくれない。

 

 「何で…何で出てくれないんだよ余羽…!」


 さらにもう一度掛け直してもやはり聴こえて来るのはツーツーと言う着信拒否を知らせる音だけだ。

 どうして出てくれないのか、いやそもそも何故着信拒否されるのか? そう考えつつも彼女の頭の中には叔父である俤治の顔が浮かんできた。もしもあの男が今この瞬間に余羽に何かしているとしたら?

 

 いやだとしても余羽は俺と同じ転生戦士なんだぞ。高々威勢のいいだけの中年相手に後れを取ってしまうなんて事は有り得な……。


 有り得ない、そう言いきる事が彼女には出来なかった。実際に戦闘でもすれば余羽が一方的に勝利を納められるだろう。だがもしも相手が何か卑劣な手段を取って余羽を逆らえない状態にしていたとしたら? そんな事を考えだしてしまうと胸の動悸が止まらない。


 「くそ、とにかく連絡を取らないと……!」


 しかし余羽本人には連絡を取る事が出来ない。となれば彼女と同じ学園に通っている人間と連絡を取るべきだと思い彼女はある人物に連絡を取る事にした。




 ◆◆◆




 「それにしても今時の女子高生は高そうなスマホ持ってるねぇ? 時代を感じるよ」


 「ぐっ…人のスマホ奪って好き勝手言わないでくれる? アンタの指紋が付くから触ってほしくないんだけど…」


 「本当に見た目によらず勝気な性格だな」


 氷蓮の写真を脅しに使われ動きを制限された余羽は今現在は俤治の言いなりに近い形で彼に同行していた。持ち物は全て俤治に手によって奪われ、そして奪われた彼女のスマホからは氷蓮からの着信が何度も繰り返し掛かっていた。だが俤治は先手を打って氷蓮の番号を着信拒否にしたのだ。奪い取った余羽のスマホは彼の手の中で弄ばれ、その様子を悔しそうにしている余羽を面白そうに彼は眺めている。

 そんな俤治の笑みに心底不快感を覚える彼女だがスマホを奪い取ろうとはしない。


 「口先は大変威勢がよろしいが抵抗はしないんだな。いやー氷蓮もいいお友達を持ったもんだなぁ」


 「くっ…いい加減に……」


 「しゃ・し・ん♪」


 「~~~~~~ッ!!」


 もう堪忍袋の緒が切れる寸前、と言うよりも既に切れているが俤治の口から出て来る『写真』と言うワードが彼女の動きを抑制する。

 

 「変な気を起こさずに今は俺に付いて来い」

 

 「………」


 悔し気に拳を小さく震わせながらも余羽は無言で従うしか出来なかった。


 今現在、俤治は余羽をとある場所へと連れて行こうとしている。そして氷蓮の過去写真を盾にされている彼女は反抗心を剥き出しにしつつも彼の後に同行していた。どこへ向かうかは余羽も知らない。俤治に目的地について尋ねても良い場所としか返って来ない。


 間違いなく人目があると不味い場所に向かってるよねコレ? それに日も沈んできている…不味いなぁ……。


 学園を出てから随分ともう時間も経過し周囲の景色にも闇が薄く広がりつつあった。その上で目の前を歩いている人間の屑は自分をどこかに誘導している。目的地についての情報を一切開示しない事を考えるとかなりきな臭い空気が濃くなっていく。

 そして歩き続けてもうかれこれ1時間近くとなり、そしてようやく目的地に辿り着いた。


 「いやー随分と歩いたねぇ。ここが目的地だよ」


 「……またお約束みたいな場所だね」


 二人が歩きに歩いて辿り着いた場所は寂しげな廃倉庫だった。

 もう明らかに使用されている形跡のないガタのついている倉庫を見て思わず呆れる。いくつか予想はしていたがまるでテレビのドラマの様な展開に呆れてしまう。


 「それで、この倉庫に誰か他のお客さんも待ちかねていると言う事?」


 「あはは、お見通しかな? 本当に勘の鋭い娘だねぇ」


 イチイチ相手の怒りポイントを的確に刺激してくる男に心底反吐が出る。しかもコイツの顔を見れば狙ってそれを行っている事も良く分かる。

 

 「まあ今君が想像したようにこの倉庫で知り合いと待ち合わせしているんだ。じゃあ入ろうか?」


 「ふん……」


 小さく鼻を鳴らしながら俤治に従って倉庫の入り口前まで来るとサビついているシャッターが上がって行く。

 薄暗い倉庫の中では複数人の人間の気配が感じられる。そして同時に暴力の気配も余羽の全身に叩きつけられた。


 「本当…待ち合わせ場所と言いその中に居る人間と言いマジでお約束って感じ……」


 倉庫内の奥には複数人の明らかに堅気とは思えない男が数人立っており、その中央ではパイプ椅子に座った一番強面そうな男が口を開く。


 「遅いじゃねぇか俤治ぃ。俺たちを待たせるなんて中々いい度胸だなぁオイ」


 「す、すんません。でも約束通り〝商品〟になりそうな女は連れてきましたよ」


 今まで陰湿な笑みを向けていた俤治の態度が急にへりくだったものになる。

 揉み手をしながら倉庫の奥に腰かけている強面の男にへコへコと頭を下げながらこびへつらう様子はまさしく三下のチンピラ。強い者には従い弱い者には強気に出る。

 しかし気になるのはこの男が口にした〝商品〟と言う事がどうも気になる。


 「ねえ叔父さん。私を商品とか言っているけどどう言う意味?」

 

 「うん? ここまで勘の良かった君ならもう分かっているんじゃないかな?」


 コイツ…マジで生きている価値がない……!


 ここまでは氷蓮の過去をネタに付き従うフリをして来たがもうこれ以上は限界だった。


 彼女は勢いよく背後へとバックステップを取るとその場で構えを取る。


 「いつまでもいい気にならないでちょうだいよ。私がこのままアンタ等の様な怪しげな連中の売り物になる訳ないでしょ」


 「良いのかな? 氷蓮の写真がばら撒かれても…」

 

 「だったらこの場でお前たち全員を打ち倒した後に力づくで持っている写真全て目の前で破棄させてやる!」


 そう言うと彼女は神力を解放すると凄まじい跳躍と共に倉庫の奥に居る男達へと果敢に向かって行った。



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