表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
失恋した直後に死んだら俺にハーレムができました。恋人達は俺が守る!!  作者: ゆうきぞく
第十一章 ラスボ討伐編 その2
282/335

始まる最終決戦


 最後の決戦の舞台であるビルの自動ドアを通り過ぎその中へと入ると早速大勢の人間が出迎えてくれた。

 まるで加江須たちがこの場所に来るのを分かっていたかのように体格の良い一般人達が大勢居り、しかも奴等はそれぞれ手に武器を持っている。そしてその武器は鉄パイプや釘バッドなどのような不良が使う優しい代物ではない。全員が日本刀や拳銃など相手を殺傷出来る武器を所持している。


 ビルの中に足を踏み入れた加江須たちの容姿を確認すると彼等は隠すことなく持っていた武器を構えて殺意を惜しみなくぶつけて来た。


 「コイツ等やっぱりラスボさんや形奈さんから情報にあった連中だぞ。遠慮なくぶち殺せぇぇぇ!!」


 両腕に刺青を入れている筋肉質の男は相手が自分たちを今現在討伐に赴いている転生戦士である事を確認すると、何の躊躇もなく銃口を向けていきなり発砲して来たのだ。その銃声を皮切りに他の銃を所持している連中も野汚たない怒号と共に一斉に発砲して来た。

 大量の凶弾が加江須たちを射抜こうとまっすぐ伸びて来る。だがその迫りくる銃弾を加江須たちは冷静に対処する。


 「んなもん喰らうかよ!」


 氷蓮は腕を軽く振るうと自分たちの前に氷の壁を出現させる。

 無数に飛んできた弾丸は彼女たちを撃ち抜かず氷の壁にぶち当たって防がれる。たかだか銃弾程度では神力の練り込まれている氷壁を突破する事は叶わない。


 「ちくしょうが!! 撃て、もっと撃ち続けろ!!」


 いきなり出現した氷の壁に臆する事なく刺青の男は唾を飛ばしながら怒声を飛ばす。その言葉に後押しされるようにすぐに引き金に指を掛けて弾が尽きるまで発砲を繰り返す兵隊たち。

 

 「おいおいまだビルに入って10秒でこれかよ!」


 そう言いながら氷蓮が再度氷壁を展開して銃弾の雨を防御する。そして氷の壁の左右から仁乃とイザナミが同時に飛び出て一気に白兵戦に持ち込む。

 

 「死ねぇ!!」


 「往生しろやぁ!!」


 突っ込んで来る仁乃とイザナミ目掛けて日本刀を振り下ろしてくるがそのスピードはハッキリ言って襲い。彼女たちは余裕綽々と言った感じで避けると腹部に拳を捻じ込み意識を刈り取る。

 少し離れた場所では加江須と白も素手で相手を次々と殲滅していた。余羽の方も問題なく対処できている。だが敵を次々と蹴散らしていきながら加江須は違和感を抱いていた。


 「こいつら…全員一般人じゃないのか?」


 「ええ、大元が潜伏しているのですから半ゲダツもてっきり待ち構えているものだとばかり…」


 ビルの外からイザナミはゲダツの気配は1人分しか感じられなかった事をずっと疑念に思っていた。それはつまりラスボ以外のゲダツ、つまり半ゲダツの部下すら待ち構えていないと言う事なのだから。

 

 加江須たちが知らないのは無理も無いだろうがラスボの部下である半ゲダツである残りの連中は形奈と共に狂華を倒すために出払っているのだ。


 「こんな一般人だけで守りを固めて居るなんて私たちを舐めているのかしら!」


 仁乃が蹴りを放って群がろうとする男共を軽く蹴散らしていた。相手は一応は半ゲダツに成ってはいない人間と言う事もあって気絶程度で済ませている。


 「本当にどう言うつもりなのよ? 今更こんな素人だけで私たちが押さえ切れるとラスボとやらは思っていた訳?」


 彼女の言う通り半ゲダツも、生き残っている形奈すらも傍に置いていないと言うのは軽率な対応だろう。だがラスボが自分の潜伏しているアジトに一般人の兵隊しか置いていないのには理由がある。その1つは次々と自分の部下を破竹の勢いで殺していっている狂華を止める為に形奈だけでは不安なので残りの半ゲダツをそちらに送り込んだため。そしてもう一つの理由、それは加江須たちがラスボと交戦する事で思い知る事となった。


 一般兵達をものともせずに入り口の部屋の部下を全て片付けるとすぐに上の階を目指す。


 「クソッ、1階は突破された!」


 「ここでぶち殺せ!!」


 2階へ上がると1階とまるで同じシチュエーションに軽いデジャヴを感じる加江須。

 そして先程の繰り返しの様に武器を持って向かってくる一般兵たち。それを軽く捻ってアッサリと片付けて行く転生戦士たち。


 「……よし、上の階へ行くぞ」


 2階をものの1分で処理して片付けるとさらに上の階へと駆け上がろうとするが、階段が視界に入ると同時に彼の足は止まった。


 「これは……」


 上の階へと向かおうと階段へ向かっていた加江須は思わず背筋がぞくりとする。何故なら自分が上ろうとしている階段の上から凄まじい殺意が漂って来ているからだ。その殺意の中にはゲダツの持つあの不快感も織り交ざっており、上の階から階段を下りて来ている人物が何者なのか容易に予想できた。


 階段をカツンカツンと踏み鳴らしながら男の声が聴こえて来る。


 「まったく…本当に厄介な連中だよお前たちは…」


 そこまで大声を出している訳でもない。至って普通の声量で語り掛けてきているにもかかわらず皆の耳に不思議と浸透する。それと同時に凄まじい悪寒が全員の背筋に走る。


 「……な、何なのアイツ?」


 その中でも余羽はもっとも階段からゆっくりと降りてきている人物に震えあがっていた。確かに彼女はこの中ではもっとも臆病な部分があるかもしれない。だが異空間での修行、そしてこの旋利律市での実践を経て彼女だって大分成長していた筈だった。それでも階段から降りて来るあのゲダツにだけは恐怖を感じずにはいられなかった。


 ゆっくりと時間をかけて加江須たちの居る階へと降りて来た人型ゲダツ、大元であるラスボはその場に居る転生戦士達を見て深く溜め息を吐いた。


 「お前たちのお陰で随分と部下を失ってしまった。そして遂には俺の目の前まで……ここまで俺を怒らせて楽しいか?」


 そう言うと彼の瞳の中から光が消え失せ能面の様な表情になる。自分の部下を大勢失ったにもかかわらず彼の顔には怒りが感じられない。まるでお面の様なその貌はこの場に居る皆に得体の知れない恐怖を植え付ける。

 自分たちの最大の目的であるゲダツが目の前に居るのに迂闊に動けなかった。だが肉体は前に出ずとも口は開ける。


 「お前がラスボ……で間違いないな?」


 もう目の前の存在の放つ威圧感から答えは分かっているがそれでもあえて尋ねる。その問い掛けに対して彼は特に隠す様子もなく普通に肯定した。


 「ああそうだ。この旋利律市を裏から支配し多くの転生戦士を屠り、たとえ同胞とも言えるゲダツでも自分の邪魔になるなら容赦なく消して来た血も涙もないラスボだよ。どうだ、こう言えばお前たちが血眼で探している人物で間違いないと確信を持てるか?」


 ラスボがどこか失笑気味に笑うと最初に緊張から解けた氷蓮が先制攻撃を仕掛ける。


 「テメェがラスボだってんなら容赦は必要ねえよな!! 全身穴だらけになりやがれ!!」


 そう叫ぶ氷蓮の周辺温度は一気に低下し、そして大量の氷柱を作り上げるとそれを射出した。

 鋭利に尖ってキラリと光る氷柱は勢いよくラスボへと飛んで行く。だが彼はその場から飛び退いて回避しようと言う素振りすら見せない。あのままでは全身を串刺しにされてハリネズミの様になるだけだ。それともヤツも何か特殊な能力を持っているのだろうか?


 だが加江須の予想は完全に外れる。自分に差し迫る死の攻撃に対してラスボはその場で僅かに体を動かすだけだったのだ。

 ラスボに向かって行った氷柱は彼が体制をずらした部分を通り抜けていく。大袈裟に移動して攻撃を回避することなく、必要最低限の動きだけで氷柱を躱された氷蓮はギョッとした顔をする。


 「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる……案外そんな事もないな」


 「ぐっ、舐めるんじゃないわよ!!」


 ラスボの挑発気味なセリフに今度は仁乃が攻撃を仕掛ける。先程の氷蓮に負けず劣らず大量の糸で形成した槍を展開して即射出。だがやはりそれも軽々と対応されてしまう。必要最低限な動きだけで攻撃を避け、拳で軽々と弾く。

 攻撃を対処しながらラスボはまるで退屈そうな顔をしている。


 仁乃と氷蓮と大量の投擲攻撃を躱しつつゆっくりと足を前へと進めて来た。


 「ぐっ、皆さん一斉に攻撃を仕掛けましょう!!」


 あれだけの攻撃を涼し気な顔で対処するラスボの強さが異次元である事が嫌でも分かる白は加江須たちに一斉に攻撃を仕掛ける様に促す。それに無言で頷くと白に続いて加江須たちも一斉にラスボへと向かって行く。


 加江須の放つ炎を纏った拳、白の神力が籠められている刃、イザナミや余羽の神力を集約した蹴りが一斉にラスボへと放たれる。

 だがラスボは尚も余裕を崩さず冷静にすべての攻撃を捌き、逆に攻撃を受け流した直後にカウンターを入れてくるくらいだ。


 「きゃあっ!?」


 「かはッ!?」


 ラスボのカウンターで放たれた拳や蹴りを白と余羽は腹部に叩きこまれて大きく吹き飛んでしまう。だが加江須とイザナミは腕を盾にして何とかガードする。だがここで加江須は攻撃を受け止めながら驚愕する事になる。


 「(な…重……!)」


 カウンターを受けた腕にはちゃんと神力を纏わせて防御力を底上げしている。しかもカウンターを入れる際にラスボの放った拳は別段力んでいる様子もなかったのだ。そんな無造作気味に放たれた拳であるにも関わらずガードした腕にビリビリと凄まじい衝撃が走る。イザナミも同じようにガードした腕が痛み顔をしかめていた。しかもガードした腕に伝わる衝撃に圧されてしまい二人は後ろに吹き飛んでしまう。


 後方へ吹き飛んでいく二人を仁乃と氷蓮がそれぞれ背中から受け止めてくれた。


 「……大丈夫加江須?」


 「ああ、ありがとう仁乃。だが……」


 ガードした腕にはまだ痺れが残っており、僅かに苦痛に表情を歪ませている加江須。そんな彼にラスボは小さく笑い声を混ぜながら何故自分が半ゲダツを連れず相対したのかその理由を話し始めた。


 「どうして俺が今だ生き残っている幹部の形奈や半ゲダツを傍に置いていないか理解できるか? それは本当に単純な理由だ。それは……俺が単純に自分一人でどうにか出来る程に強いからだ」


 そう言った次の瞬間には加江須の腹部に重い衝撃が与えられた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ