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失恋した直後に死んだら俺にハーレムができました。恋人達は俺が守る!!  作者: ゆうきぞく
第十一章 ラスボ討伐編 その2
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IF もしも仁乃が幼馴染だったら その3

またしても仁乃が幼馴染だったらシリーズ書いちゃいました!! 一番好きなヒロインなのでこのシリーズまだ続くかも……。


 今日もまた太陽が昇り、そして一日の始まりを告げるために爽やかな朝日が世界を温かな光で照らしてくれる。もう朝だと言う事を知らせるかの様に窓に備え付けられているカーテンの隙間からは煌びやかな光が布団から顔を出している少年の目元に晒された。


 「うーん……まぶしぃ……」


 それまではリズムよく安らかな寝息を立てていた少年は無理矢理目覚めさせられる。いつもならば布団を被って二度寝をするところだが、今回は珍しく彼は目覚ましが鳴り響く前に1度でむくりと起き上がる。

 珍しく素直に起きるものだと言いたいところだが、彼が素直に起きたのは今日が休日の朝だからだ。普段の登校日の平日ならば億劫でも休日は自由な時間が過ごせると思い不思議と襲い掛かる眠気に抗う事が難しくはないのだ。そう考えると人間と言う生き物は何とも現金だと言わざる終えない。

 

 目元をゴシゴシと擦り目覚ましの電源を切る。そのまま大きな欠伸をするとベッドから出て階段を下りて行く。


 「ん…いい匂い……」


 下へと降りて行くと鼻孔をくすぐるとても美味しそうな匂いが鼻を刺激する。そしてまるで先程鳴る前にスイッチを切った目覚ましの代わりを務めるかの様に腹から大きな音が鳴り響く。

 台所の様子をこっそりと窺ってみるとそこには鼻歌混じりに料理をしている仁乃が居た。


 「ふ~んふ~ん♪ あら、あんた起きた? 相変わらず休みの日は早起きね」


 どうやら両親は安定の休日出勤らしく合鍵を持っている仁乃が朝食を作りに来てくれたようだ。それにしても……。


 「う~ん…いいなぁ…」


 「? いいって何がよ?」


 加江須の口から突然出て来た言葉に小首を傾げる仁乃。

 

 「いやぁ…恋人がわざわざ休日にエプロンを身に着けて朝食を作っている光景が眼福だなぁと」

 

 「ば、バカ! 変な事を言わないでよ!!」


 一気に顔をかーっと真っ赤に染めて加江須から視線を切って手元に視線を向けた。だが顔を自分から背ける一瞬、とても嬉しそうに笑っていた表情は加江須にも見えており少しこそばゆくなる。


 それから出された朝食を食べ終わると二人は居間で並んで座って居た。

 別に何をすると言う訳でもない。だがこうして肩を寄せ合っている事にとても幸せを二人は感じていた。


 「ねえ加江須、少し聞いていい?」


 「ん、どーした?」


 「最近さ、なんだか加江須アルバイトばかりしているじゃない? どうしてそこまでしてお金稼ごうとしているの?」


 互いに寄り添った状態のままで仁乃は加江須に前々から気になっていた事を聞こうとする。それは彼が少し前からアルバイトに精を出す様になっているのだ。別に学生のアルバイトはそこまで珍しくはないが、一緒に居られる時間が減ってしまう事は少し寂しかった。それに未だ学生の彼がそこまでしてお金を貯めこむ理由も分からない。何か欲しいものでもあるのだろうか?

 仁乃の質問に対して加江須はあーっと少し決まずそうな表情になった。


 「いやー…実は少し欲しい物があってさ。その為に金が必要でさ」


 「……そんなに高価な物?」


 バイトに頻繁に出向いている事を考えるとゲーム機などではないだろう。それぐらいならもうとっくに購入出来ている筈だ。

 結局その後もそれとなく理由を尋ねる仁乃であったが、彼は少し言いづらそうにしながらはぐらかしてしまうのだった。


 だがそれから数日後に彼が必死になってアルバイトに勤しんでいた理由が判明した。




 ◆◆◆




 「こうして二人で下校するのも久しぶりだな」


 「ええそうね。本当に久しぶりね。誰かさんが学校終わりにアルバイトに出かけてばかりだったからここ最近は独りで下校していたからね」


 「うぐっ、悪かったって。頼むからそうむくれないでくれよ。心配しなくてももうバイトは終了したって」


 加江須がアルバイトを始めてからいつも一緒に下校した仁乃は独りで帰る事も多くなっていた。その事を寂しく感じていた彼女は当て付けみたいに頬を膨らませながらそっぽを向いた。チクチクと刺すような言葉にうぐっとバツの悪そうな顔をしながら軽く謝る加江須。

 棘のあるような憎まれ口気味に話し掛ける仁乃であるが内心では喜んでいた。もうアルバイトも終わりと本人が口にしていたのでこれからはまた二人の時間が作れると思うと口角が緩んでしまう。


 「ん~? 何だか嬉しそうな顔しているな仁乃さん。もしかして俺がバイト辞めたからまたイチャイチャできると思っているのかなぁ?」


 「ち、違うわよこのタコ!!」


 「ごぼぉっ!?」


 ものの見事に図星を付かれてしまい思わず照れ隠しで加江須の腹部に裏拳を入れてやった。かなりの勢いがあったのか予想以上にめり込みたたらを踏んでしまう。そのまま片目を閉じて殴られた箇所を押さえる加江須を置いてスタスタと独りで歩いて行ってしまう。

 

 「あ、待ってくれよハニー」

 

 「うるさいバカ!」


 慌てて後を追ってくる加江須に大声で罵声を浴びせる仁乃。 

 それから平謝りをしてなんとか許してもらった加江須は彼女の肩をポンポンと叩いてきた。


 「何よいきなり?」


 「いや…実はちょっとお前に話したい事があってさ。あそこの公園で少し休まないか?」

 

 そう言う彼の表情はどこか神妙で仁乃は怪訝そうな表情になる。よっぽど何か大事な話でもあるのかと思いとにかく大人しく彼の後について行きそのまま公園のベンチに並んで座る。

 

 「それでどうしたのよ…」


 「ん、ああ…」


 何やら彼の様子が少しおかしい。今にして思えば学校を出た時もいつもよりもどこかギクシャクしている態度を取っていた気がする。もしかしたら何か悩みでも抱え込んでいるのかと早とちりした彼女は彼の手を握ると真剣な眼で口を開く。


 「何か悩み事でもあるなら無理せず言いなさいよ。変に気を使われる方が迷惑よ」


 「え…いやいや変な誤解するなよ。別に悩みがあるとかそう言うのじゃないって」


 「じゃあ何でそんな真剣な顔をしてるのよ? 何か言いたい事があるからわざわざこんな場所に来たんじゃないの?」


 「いや…その…だからさ……」


 どうやら変に深読みをして自分の事を心配していると気付いた加江須は少し慌てて否定する。別に加江須は暗い話をしようとは考えてはいない。ただ彼は一世一代の一大イベントを今から行おうとしており、最後の踏ん切りが中々つかないのだ。

 歯切れの悪い短い返事しかしない加江須だが遂に意を決したのか自分の両頬をバヂンッと強く叩いて気合を入れた。いきなりの彼の行動に少し驚く仁乃を無視して加江須は彼女に話し始める。


 「ほら…俺最近まで色々アルバイト入れて金を溜めていただろ」


 「うん…確か欲しい物があるって…」


 だが結局彼が何を欲しているのかは分からず終いだった。どれだけ追求してもはぐらかされたからだ。実は彼が何を買おうとしているのか、それを彼女に教えなかったのは決して意地悪ではなく理由があったのだ。

 その理由を遂に彼は話し始める。


 「俺が欲しかった物って結構値段が張ってさ…そんでソレって実はお前にプレゼントとして贈ろうと考えていたんだ」


 「え、じゃあ何? 私にプレゼントするためにアルバイトをしていたの?」


 加江須からアルバイト理由の真相を聞かされて思わず嬉しくなる仁乃。まさか自分の為に頑張ってくれていたと思うと申し訳なさも感じたが、それでも嬉しさの方が大きかった。

 しかし彼のアルバイト期間を考えてみるとかなり値の張る物を自分に贈ろうとしているみたいだ。いくらなんでもそんな高価な物は受け取りにくいと口にする。


 「いや、確かに結構金を使ったが絶対にお前に受け取ってほしいんだよ」


 そう言うと彼はポケットの中をゴソゴソとまさぐると目的の物を取り出して仁乃の目の前にそっと差し出した。


 彼が取り出した贈り物、それはとても小さな四角形の箱――リングケースであった。


 「………え?」


 目の前に突き出されているケースを見て仁乃は思わず両手で自身の口に手を当て驚きの余り声が出てこなかった。彼が取り出した小さな箱はよく恋愛ドラマなどで見る物、そして彼がケースを開けるとそこには想像通りの物が入っていた。


 彼がケースを開けるとその中には銀色の指輪がケース内のクッションの上に鎮座していた。


 「これって……」


 仁乃は指を震わせながら銀色の指輪を指差して加江須の顔を見る。

 今にも泣き出しそうな彼女の顔をきちんと見つめながら加江須はゆっくりと頷き、そして彼女が一番心待ちにしていた言葉を指輪と共に贈ってくれた。


 「仁乃――俺たち必ず結婚しよう」


 その言葉は彼女にとってこの指輪以上の幸福な贈り物。

 ケースの中の指輪を取り外し、そのまま彼女の指にはめながら彼は想いの丈を全て言葉にする。


 「今はまだ俺もお前も高校生だけどさ、俺がお前をきちんと幸せにできると思う年齢と稼ぎを得たら改めてお前に指輪を送るよ。それまではこの指輪で我慢して欲しい。でも約束する。いつか必ずお前に本物の結婚指輪と共にプロポーズをするよ」


 彼の口から出て来る言葉はどれも仁乃の心を幸せにしてくれる。もう我慢できずに彼女は指輪をはめられた瞬間に愛おしい人へと抱き着いていた。


 「もう馬鹿…私嬉しすぎてどうにかなっちゃいそうよ。こんな人目のある公園で泣かせるんじゃないわよ」


 彼女の言う通り公園には何人か人もおり人目もはばからず抱きしめ合う二人を興味深そうに見つめている。だがそんな野次馬の視線など気にもならない。この彼から贈られた最高のプレゼントを前に喜ばない方があり得ない。


 「絶対…絶対に幸せにしなさいよ……私の未来の旦那様」


 「ああ…約束するよ。俺の未来のお嫁さん」


 そう言って二人は互いに涙を零しながら幸福のキスをする。


 周りで見ていた野次馬たちはそんな二人に拍手を送り、その反応に少し照れ臭そうにしつつも二人は心から笑顔を浮かべていた。



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