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失恋した直後に死んだら俺にハーレムができました。恋人達は俺が守る!!  作者: ゆうきぞく
第十一章 ラスボ討伐編 その2
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1日目、戦闘の終了


 抱きしめ合いながらそれなりの時間が経過した綱木とディザイアであったが、ようやく落ち着きを取り戻したのか二人は今は座り込んで楽し気に談笑していた。そこに居たのは転生戦士とゲダツではなく仲の良い女性親友のやり取りで合った。

 二人の話の内容は本当に他愛のないものであった。だが中身のないようなそんな会話こそがこの二人が永らく望み続けていたものであった。


 それから二人は時間をすっかりと忘れて笑い合って心満意足と言った笑顔をしている。だが残念ながらその幸福な時間は永遠に続きはしない。悲しきことだが終わりは必ずやって来るのだ。


 『お二人さん。もうそろそろ時間っス』


 ヒノカミは少し声のボリュームが下がっている状態で二人に話しかけて来た。仲睦まじい二人を引き裂くような後ろめたさを感じているのかもしれない。だが二人は一瞬だけ悲しそうな顔をしたがすぐにお互いの顔を見て同時に小さく笑った。


 『どうやら本当のお別れみたいね』


 『うん。でも十分に満足できたわ。ディザイア今までありがとうね』


 そう言うと二人は最後に力強く抱きしめ合う。

 そして互いに抱きしめ合いながらディザイアの体が足元から徐々に消えて行く。少しずつ肉体が下から消失して行き遂に胸元まで姿が消える。


 ――『あなたと出逢えて幸福だったわ綱木。私を人間として扱ってくれてありがとう』


 その言葉と共に腕の中の居たディザイアの肉体は完全に消失した。

 

 『……私もあなたと出逢えて幸せだったわディザイア。……それじゃあヒノカミさん』


 完全に現世からも黄泉の世界からもディザイアの存在と魂が消え去って行くのを見届けた後、彼女はヒノカミの方へと顔を向ける。そんな彼女に対して無言でヒノカミは頷き、そのまま彼女の肩に手を置くと二人の姿が来た時と同じように眩く煌めき出す。

 

 『すいませんヒノカミさん。手間を掛けさせてしまって』


 『別にいいっスよ。それにあのディザイアさんは決して善じゃなかったっスけど先輩の味方をしてくれましたし…』


 わざわざ自分の我儘を聞いてくれてありがとうと改めて頭を下げる綱木に対しヒノカミは気にしなくても良いと言った。その後に彼女の言った先輩と言う言葉に首を傾げるが何でもないとはぐらかす。


 こうして二人の姿は眩い光に包まれその場から消える。この後に綱木は審判の間で生まれ変わりを果たすだろう。もう彼女を生き返らせようとする人物も居ない。そうなればこれまでの記憶は全て消えて完全な別人になるだろう。だが綱木には何も悔いなどは無い。だって一番謝りたく、抱きしめ合いたかった相棒と最後の最後で巡り会えたのだから……。




 ◆◆◆




 「これは……」


 未だに戻ってこないイザナミとディザイアの援護に向かおうと加江須たちは二人の向かった方角を捜索していた。そして意外な事に偶然にも二人を見つけるのは早かった。だが公園内に入るや否や一歩遅かった事を皆は思い知らされた。

 

 公園内では誰の眼から見ても致命傷を受けているディザイアがイザナミに抱きかかえられていたのだから。

 皆が傍に駆け寄るとイザナミが泣きそうな顔をして加江須の名前を呼んだ。


 「加江須さん…私は守れませんでした」


 彼女が後悔の念を口にした次の瞬間、抱きかかえているディザイアの体が輝き光の粒となって空へと溶けて行った。それは彼女が完全に死んでしまった事をさしており皆が揃って視線を光の粒が昇って行く天へと向ける。

 

 「……ディザイア」


 加江須はそっと囁く様な声で彼女の名前を呼んだ。正直に言えば加江須としては何も感じないとは言わないが悲しみは薄い。それに彼女の今までの態度を思い返すとあまり良い印象だってない。でも…それでも彼女は自分たちと共に戦ってくれた〝戦友〟でもあった。


 気が付けば加江須は空へと溶けて行く彼女へと頭を下げていた。


 「ありがとなディザイア。俺たちと一緒に戦ってくれて…」


 加江須の感謝の言葉に続くように他の皆も無言ではあったが頭を下げていた。イザナミに至っては涙を必死に堪える様に頭を下げていた。

 それから嗚咽を零し続けているイザナミを加江須が宥めて上げる。やはり目の前でディザイアがやられる光景を目の当たりにしてショックも大きいのだろう。だがいつまでも嘆き悔やんでいる暇は自分たちにはなく、加江須は今の状況を整理し始めていた。


 「今現在は仁乃、氷蓮、余羽の3人の活躍で幹部である転生戦士の1人を撃破できた。だが同じく転生戦士の形奈は一時退却したみたいだ。そしてこの町にラスボを倒そうと転生戦士が集まってきている。その中にはあの狂華も居る」


 ひとつひとつ、箇条で今の状況を纏めて行く。ここまでの戦況はラスボ側にも被害を与える事は出来ている。だがこちらも被害は大きい。ディザイアが離脱してしまった事もある、だがここまでの戦いで皆も疲弊している。特に余羽が一番疲労が大きくみえる。


 「今日は一度この辺りで休息を取った方がいいかもな」


 一度どこかで休息を取り体力を万全に回復させた方が良いだろうと加江須は判断した。それにイザナミも精神的に少し参っているようだ。

 加江須の提案に対して氷蓮は少し異議を唱える。


 「でもよ加江須、向こう側も幹部がやられ、下っ端の半ゲダツ達も大分減らされている状態だ。これを機に一気に畳み掛けた方が良いんじゃねぇのか?」


 「いや待ちなさいよ氷蓮。あんたの言いたいことも分かるけど私たちだってかなりキツイ状態よ。特に余羽さんは傷は修復できても神力や体力はさっきの戦いでかなり疲弊しているわ」


 「私も加江須さんや仁乃さんと同意見です。今日はこれ以上無理をせず休息を入れるべきです。まだラスボの正確な潜伏先も不明ですし…」


 流石に3人に反対意見を言われてしまえば彼女も何も言えず大人しく頷いた。それに冷静に考えれば余羽だけでなく自分も先程の幹部との戦闘で大分疲労が溜まっている。

 

 こうしてこの日はこれ以上の進撃は留まっておくべきだと言う結論に至ったのだった。




 ◆◆◆




 繁華街から少し離れた場所に建てられているラスボ達が根城の1つとして使用している空きビル、その室内はアジトとして利用する為に随分と改装されておりボロボロそ外装とは正反対で豪華に彩られている。部屋の壁際には豪華そうなソファが置いてあり、その柔らかそうなクッションに座りながらワインをラスボは優雅に飲んでいた。その対面上には二人の女性が立っており、更にその背後には3人の男性が立っている。だが後ろに控えている男性たちは虚ろな目をしており、更に口からは涎が垂れて明らかに正気とは思えない様子であった。

 そんな異常な男たちの様子など露ほども気にせず二人の女性、ラスボと同じ人型タイプのゲダツであるマリヤとマイヤが話し合っていた。


 「指定時間になっても集まって来ないって事は豪胆と形奈はやられたのかな? ねえマリヤはどう思う?」


 「そうだね。同行していた半ゲダツ達からも連絡が途絶えたんだから二人ともやられたと考えるべきかもしれないわねマイヤ」


 「まったく豪胆も形奈もだらしがないわね。でも新しい兵隊は集められたから問題ないんじゃないかしらマリヤ?」


 そう言いながらマイヤは自分の後で控えている3人組の男を眺める。

 その3人は全員が形奈たちにやられた転生戦士たちであった。3人の内2人はラスボに返り討ちに遭い仲間同士で殺し合いを演じさせられた男たち。そして最後の1人はマリヤとマイヤに殺された金森銭であった。その中でマリヤとマイヤに殺された金森が突然奇声を上げ始める。

 理解不明な大声をいきなり上げる金森だったモノを不快そうに見つめながらラスボはマリヤに命じた。


 「おい煩いぞ。その人形を静かにさせろ」


 「はいはい了解。こら、大人しくしなさい傀儡の分際で」


 まるで出来の悪い子供を叱りつけるかのような口調でマリヤが命令を出すと、その瞬間に金森はピタリと呻くのを止める。それはもう完全に彼女の言いなりと化している人形であった。

 

 マリヤが人形の奇声を止めたその数秒後、部屋の扉が開くと今話題にしていた形奈がやって来た。


 「あれ、生きていたの形奈? てっきりもう殺されていると思っていたのに…」

 

 「ふん、お前を先に始末してやってもいいんだぞ?」


 嫌味交じりの言葉をぶつけられて形奈は苛立ちを隠そうともせずマリヤを睨みつける。

 そんな二人のじゃれ合いを無視してラスボは形奈から何があったのかを尋ねる。


 「生きて帰って来たのはありがたいがその傷…どこの誰にやられた?」


 ラスボの質問に対して形奈は自分が戦ったイザナミやディザイアについて知る限り詳細に報告をする。更には連絡を取り合っていた下っ端連中から報告が上がった情報も一緒に伝える。どうやら以前から要注意人物として話していた加江須たちが乗り込んで来ている事を伝えた。

 

 「なるほどな。久利加江須は以前にもこの旋利律市に乗り込んで来た転生戦士だったよな? それにお前とも2度もぶつかって仕留めきれなかったとも言っていたな」


 ラスボがそう尋ねると形奈は無言で頷いて肯定を示す。

 自分の伝えるべき事を全て話し終えると彼女は周りを見て気付いたことがあった。


 「おい豪胆はどうした? 一度ここに戻ってから席を外しているのか?」

 

 形奈がマリヤとマイヤの方へと視線を向けると彼女たちは両手を上げてやれやれと言ったジェスチャーをする。それだけで彼がもうやられた事が理解できた。

 

 形奈から聞かされた話を纏め上げるとラスボは3人に命じた。


 「形奈と戦って来た連中が深追いしてこなかった事を考えるとあいつ等も消耗している筈だ。それに敵の主戦力の1人のディザイアってゲダツは始末したんだろ。となればあいつ等も対策を練る為に今日は攻め入っては来ないだろう。まあもしかしたらこのアジトに乗り込んでくる可能性もある。マイヤ、そこの人形共にアジト周辺を見張らせておけ。お前たち、特に形奈は傷の手当、それと休息を取れ。まだ戦いは終わっていないからな」


 一通りの命令を下すと一番疲労している形奈は指示通り他の空き部屋へと向かう。そしてマイヤは人形に見張りを命じた後にマリヤと共に仲良く手をつないで空いている部屋へと一緒に入って行った。


 こうして加江須たちが乗り込んでからの初日の戦いはひとまず一時終了し、本格的な戦いは明日以降からとなるだろう。

 

 気が付けばもう時刻はもう夕刻なり、日も落ち始め外の世界は薄暗くなり始めていた。



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