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失恋した直後に死んだら俺にハーレムができました。恋人達は俺が守る!!  作者: ゆうきぞく
第十一章 ラスボ討伐編 その2
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もう一度…あなたに逢いたかった……


 「まったく…まさかあの女までこの町に来ていたなんて…!」


 そんな事を言いながら仁乃は氷蓮、余羽の2人と共に先程まで戦闘を繰り広げていた場所から既に離れ、加江須たちと別れる前、その周辺付近へと戻っていた。

 再び賑わいのある繁華街内の往来に戻って来た3人は他の別れた2つのグループを待っていた。


 「なあ仁乃、ここで待っていても加江須たちと合流できると思うか?」

 

 「しょ、しょうがないでしょ。別れるあの時には待ち合わせ場所なんて決めていなかったんだから」


 「ま、まあ無理ないんじゃない? だっていきなり3方向からゲダツの気配が漂えば焦りもするし…」


 氷蓮に文句を言われて少し声を荒げて仕方がなかったんだと言う仁乃。そんな焦っている彼女をフォローするかのように余羽がまあまあと場を宥める。

 

 最初に戦闘が終了した仁乃たちの3人グループは合流しようにも待ち合わせ場所などあの時は指定をしてはいなかった。だからと言っても闇雲に歩いていても合流できるかは怪しい。そこで仁乃の提案で自分たちがバラバラに別れる直前の場所に戻る事にしたのだ。

 だが到着しても他の2つのグループが集結している様子はない。このまま待ち惚けになるのではないかと不安が胸に押し寄せていた時だ……。


 「おーい仁乃、氷蓮、そして余羽!」


 馴染みの深い聞き覚えのある少年の声が耳に届き仁乃の顔がぱあっと明るくなる。

 声の方へと顔を向けるとそこにはこちらに小走りで駆けて来る加江須と白の姿が在った。


 「無事だったかお前たち…うん、怪我もなさそうで安心した」


 仁乃たちに大きな怪我はないかと一通り体を見てみるが大きな負傷は3人にはないようだ。

 大切な恋人たち、正確に言えば余羽は違うのだが彼女たちが無事だった事に安堵して加江須は仁乃と氷蓮の頭をポンポンと撫でて上げる。


 「本当に無事でよかったよ。もう黄美の様に大事な人を失う苦しみは味わいたくないからな」

 

 「お、大袈裟なのよ加江須は。でもまぁ…私もあんたが無事でよかった」


 「俺もお前に目立った傷がなくて安心したぜ。その…心配してくれてありがとな」


 自分の恋人の大きな手で頭を撫でられて二人は頬を染めながら照れ臭そう、それでいて嬉しそうな顔をしながら彼からのナデナデを嬉しそうに受け入れる。もしも二人に犬の様な尻尾が生えていればブンブンと振り続けている事だろう。

  

 そんな三人のやり取りを眺めていた余羽はうげっとした顔をする。これまでも氷蓮から散々惚気話を聞かされ続けようやく慣れて来た気がしたがやはり目の前でイチャイチャされるとうんざりしてしまう。

 余羽ほど露骨に顔にこそ出していないが彼らのやり取りを見て白も困っている様だった。


 「胸焼けして来たんですけど…」


 「な、仲が良い事は良い事じゃないです。それに彼らは交際関係にあるのでしょう?」


 げんなりとした表情の余羽に対してまぁまぁと宥める白であるが、彼女も今更ながら彼らの関係には疑念を感じている部分もあった。

 確かに彼らは相思相愛なのかもしれない。しかし理由や想いはどうであれ加江須は複数の女性と恋仲になっている。これは……アリなのだろうか……?


 ……いえ別に今は彼らの関係を深く追求しなくてもいいでしょう。確かに二股、いえ、イザナミさんと黄美さん、それに愛理さんを含めると五股になりますが愛し合っているなら………。


 冷静に考えるとやはり彼らの関係はおかしいのでは、などと本当に今更ながら内心でツッコミを入れてしまいそうになる自分を抑え込み何やら周りが見えなくなりつつある三人に声を掛ける。


 「あのお三方、できれば一度戻って来てもらえればと…」


 「あ、わ、悪い。つい二人が愛おしすぎてお前たちが見えていなかったよ……」


 「は、はあ…」


 加江須の言い訳に対して短い返事を一言だけする白。その隣では余羽が乾いた瞳でしらーっと加江須を見ていた。

 先程に狂華と遭遇して神経が尖っていたせいだろうか? 何だか加江須の恋人たちに対する過保護さが大きくなっている様な気がする……。


 とにかく場の雰囲気を切り替えようと思いごほんっと一度大きく咳ばらいを白はした。そのあからさまな態度に流石に人目をはばからなさ過ぎたと思い仁乃と氷蓮も反省をする。


 「あの…もう大丈夫でしょうか?」


 「え、ええ。ごめんなさい白さん」


 「わ、わりぃ。俺たちも少し周りを見ていなかったわ…」


 仁乃と氷蓮の二人も今更ながらに恥ずかしそうに俯きながら頭を下げる事しか出来なかった。


 少し気まずい空気が流れた後、加江須たちはそれぞれ向かった場所で起きた出来事について報告し合っていた。

 まずは仁乃たちが自分たちの向かった先で起きた出来事について語った。

 

 「なるほどな。じゃあ仁乃たちの方には幹部の1人である転生戦士が現れたんだな」


 「ええ。あの形奈とか言う女とはまた別の男の転生戦士だったわ。たくっ…アイツ以外にも転生戦士がラスボ側についているなんてね……」


 本来であればゲダツを討伐する側の人間が部下として働いていた事を思い出して頭を抱える仁乃。

 ここで仁乃の話を聞いてふと加江須には少し気掛かりな部分があった。


 「ゲダツはともかく転生戦士を複数人味方に付けるとは。それはつまり大元であるラスボの強さがそれほどまでに大きいと言う裏付けでもあるよな」


 加江須の口から何気なしに出て来た言葉に他の皆の顔が一気に強張った。そう、その通りなのだ。もしもラスボに力が無ければ形奈たちが手を組もうなどとは思わないだろう。そのままゲダツの戯言と割り切って駆逐されているだろう。

 

 「やっぱり狂華のヤツとこの町で戦わなくて正解だったかもな」


 加江須が不意に漏らした少女の名前を聞いて仁乃たちはギョッとする。


 「そうだわ。言い忘れていたけど私たちがラスボ側の転生戦士を倒した後にあのイカれた狂華が現れたのよ。なに、そっちの方にもアイツは顔を出したの?」


 「ああそうだ。まあ今回は俺の首を取りに来た訳じゃなくラスボを倒しに来たみたいだがな」


 彼のその言葉に仁乃と氷蓮の顔には明らかな敵意が宿った。


 「くそ…ふざけやがってあの女。俺の加江須の事をまだ付け狙ってやがったな」


 「全くだわ。私の加江須にもしもの事があったら生き地獄を味合わせてやるんだから」


 「(うお…こ、こわぁ~…)」


 怒りの炎を瞳に宿していながらも表情は能面の様な不気味な顔を見て内心で余羽が震える。この時は狂華の様な狂人以上に眼前の二人の少女の方が遥かに恐ろしかった。

 そんな二人の怒気を感じ取った加江須がまたしてもポンポンと頭を撫でて宥める。


 「とにかく俺たちと仁乃たちのグループは無事に敵を撃破できたわけだ。でも……」


 そこで言葉を区切ると加江須は少し難しい表情を作り出した。


 「あとは…イザナミとディザイアの方の戦況がどうなっているか気になるな」


 ある意味では別れた3つのグループの中ではイザナミたちがもっとも安全だと加江須は思っていた。その理由としてはチームを組んでいた人選にある。1人は弱体化したとは言え神であったイザナミ。そしてもう1人はラスボと同じく進化を果たした上級ゲダツであるディザイア。戦力的に考えれば彼女たちのグループがもっとも勝率が高いと思うのだが……。


 「……未だにイザナミたちの方は戦っている真っ最中なのかもな」


 別の戦闘が終わればこの場所に集まるようにと約束はしていない。しかし直感的に未だイザナミたちは戦い続けていると半ば確信をこの場に居る皆は持っていた。


 「確か二人はこっちの方角に走って行ったよな?」


 加江須が3方向へと別れた際にイザナミたちが向かった方角を指差すと他の皆が頷いた。 

 このままこの場所で待ち続けるよりもこちらから探しに行こうと思い皆はイザナミたちが向かった凡その方角を目指して移動を開始するのだった。




 ◆◆◆




 イザナミとディザイアの戦っている公園内は死屍累々と言った惨状であった。形奈の増援目的にやって来た使い捨て兵である半ゲダツや一般人たちがイザナミに撃破されて辺りに転がっている。

 そんな血みどろの中心地ではイザナミが瀕死の状態であるディザイアの事を抱きかかえていた。


 「し、しっかりしてくださいディザイアさん」


 「ごぼっ…あ、あの隻眼女は…?」


 「彼女は戦況不利と判断したのかこの場を引きました。それよりも今はご自身の身体の方を気にしてください」


 ディザイアが形奈に致命傷を与えられた光景を目の当たりにしてイザナミは自分を取り囲んでいた兵隊達を一瞬で殲滅した。その圧倒的な戦闘力に形奈は1対1では勝ち目がないと悟ったのかこの場から迷いなく逃走してしまった。後を追いたいところではあったがディザイアの受けた傷は余りにも深く形奈を見逃すしかなかった。

 自分の事を心配して形奈をみすみす見逃してしまった事を聞くとディザイアは呆れた様子で口を開く。


 「まったく…ごほっ…私は所詮ゲダツなのよ? そのまま捨ててアイツの後を追えば良いものを……」


 「……それでも今はあなたは味方なんです。放ってはおけません」

 

 そう言いながらイザナミはもっとも大きな傷である腹部を押さえて血を止めようとする。だがハッキリ言って彼女はもう助からないと悟っていた。片腕は斬り落とされ、腹は大きく裂かれ、他にもいくつか致命傷があるのだ。

 彼女がゲダツであるが故に即死こそは免れているが時間の問題だろう。


 「……ごめなさい」


 もしも自分に神としての力が損なわれず万全に備わっていればきっとディザイアを助けられた。だが弱体化した今の自分にはこの致命傷はどうやっても対処しきれない。

 何も出来ない自分が情けなく自然とディザイアに謝罪の言葉を述べていた。


 「本当…お人よしなんだから……」


 自分の目的の為に多くの者を利用して来たディザイアには彼女に優しさは余りにも眩しくて仕方がなかった。だが彼女を見ていると綱木とのあの温かい、かつての優しい光景が思い返される。


 「ああ…もう一度あなたに逢いたかったわ。綱……木……」


 この世界で初めて出来た友達の名前を口にし、そのままディザイアの意識は闇の中へと遠のいて行った……。



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