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失恋した直後に死んだら俺にハーレムができました。恋人達は俺が守る!!  作者: ゆうきぞく
第十一章 ラスボ討伐編 その2
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終わりなき堂々巡り


 神界に居る神々が危険な存在であると認識をさせた最悪のゲダツ、その名はラスボと言う。彼は転生戦士と手を組む事で願いを叶える権利を譲渡してもらい、この世界に大きな歪みを与えようと画策していた。まさか転生戦士の中にゲダツと手を組む者が居るとは思わず神々は対応策とし、ラスボを討伐するまでは全ての転生戦士が願いを叶える事は出来ないと告げた。

 この事実は多くの転生戦士に驚愕を与えた。それも無理はない、ハッキリ言ってこの世界全体を見て純粋な善意からゲダツと戦う者の方が少ないのだから。ゲダツを倒せば自らの欲望を満たせると言う褒賞目当てで戦う者が大勢だ。そんな連中からすれば神々からのこの先刻は青天の霹靂だった。


 その結果ラスボの居場所を掴んだ転生戦士たちは既に何人かラスボの潜伏先である旋利津市へと潜入を開始していた。焼失市からやって来た加江須たちも正にそうだ。現在彼らはラスボの下に付いている幹部たちや部下達と激闘を繰り広げている真っ最中だ。


 そして幹部連中が加江須たちと戦っている間はラスボを守る人員は手薄となる。

 その結果、加江須たちとはまた別ルートから乗り込んでラスボを見つけることに成功した2人の転生戦士がおり、この二人は加江須たちが戦っている間に本命である彼の前に立ちはだかっていた。


 だがラスボは神々から目を付けられるほどの上級ゲダツ。並大抵の転生戦士では勝ち目などなかった。


 「ごほっ…はぁ…はぁ…」


 「ちく…しょう……」


 いくつかあるアジトの1つに潜伏していたラスボ。

 そんな彼の元に乗り込んで来た二人の転生戦士。

 ラスボの姿をついに見つける事が出来たその二人組は有頂天になっていた。それもそうだろう。目の前のゲダツを討伐すればまた今まで通りにゲダツを狩って好きなだけ願いを叶えられるのだから。そう思い二人は名乗りを上げる事すらせずに勢いよくラスボへと飛び掛かったのだが……。


 「二人組んでこの程度か。お前たちは転生戦士の中でもかなり弱い部類だったみたいだな」


 そう言いながらラスボは退屈そうな顔で全身が血まみれとなっている二人へとそう吐き捨てていた。

 

 「俺の能力を使うまでもなかったな…」


 そう言いながらラスボは彼らを切り刻んだナイフを手の中で弄びながら独り呟いていた。その言葉は彼が退屈から何気なしに零れた言葉であったが、彼の眼下で倒れていた二人の顔色が驚愕に染まった。


 「おま…え…能力を…持って…?」


 「おいおい今更何を驚いているんだ? ゲダツの中には俺の様な上級タイプに進化していない下級タイプですら能力を保有している事はあるだろ。それともそこまで実戦経験が豊富ではなかったか?」


 実際にはラスボに一方的に蹂躙された二人組はそこそこの経験を積んでおり、さらに言えば能力保有しているタイプのゲダツとも戦った経験はある。つまりはそれなりの力を有していると言う事だ。にもかかわらず彼らは能力すら使われず完全に手心を加えられた状態で敗北したのだ。彼らが驚いたのはここまで自分たちを圧倒しておきながら今なお解らぬラスボの力の底の方であった。


 自分たちがとんでもない怪物に手を出してしまった事を悔いていると、そんな彼らにラスボはゆっくりと歩み寄ると片方の男の首を掴む。

 

 「実は俺の部下には人間の死体を操る能力者が居てな。一応はお前らは転生戦士の端くれだ。普通の人間を傀儡にするよりかはマシだな」


 そう言うとラスボは少しづつ彼の首を絞めて行く。

 自分の首が万力の様な力で絞められ徐々に顔を青くしていく男。口の端から泡を出して宙ぶらりんの状態で手足をばたつかせ、必死に命乞いの言葉を漏らす。


 「た、助け…だずげ……」


 いよいよ死の直前なのか首を絞められている男の両手足は動きが鈍くなっていく。そんな仲間の死の狭間に落とされている地獄の光景に次は自分の番かと仲間の男は戦慄に震えた。

 だがここでラスボはとんでもない提案をして来たのだ。


 「そんなに助けて欲しいのか? それならお前にチャンスを与えてやってもいいぞ」


 そう言うと男は首を掴んでいた手を放して解放してやった。

 まさか助けてもらえると思っていなかった彼は涙交じりに何度も『ありがとう、ありがとう』と繰り返し感謝する。だがこの後にラスボの口から出て来た言葉にやはり目の前の男が悪感情の塊である事を思い知らされる。


 「それじゃあお前たち、少し殺し合いをしてみるか」


 「「………え?」」


 彼の口から出て来た言葉が上手く理解できずに二人ハモって首を傾げた。

 何を言われているのか分からないと言った感じで首を傾げている二人を見てラスボは呆れた様に首を左右に振って億劫そうに説明を付け加えてやった。


 「おいおいまさか二人揃って見逃してもらえると? 俺が助けるのはお前たち1人だけ、もう片割れには死んでもらうぞ」


 そう言うと彼は呆然としている二人の前にそれぞれ手頃な刃物を放り捨ててやった。


 「それぞれ人を殺める事ができる刃物だ。本気で生き残る為なら相方を殺して見せろよ」


 ラスボの言葉にしばし硬直していた二人だがすぐに覚悟は決まった。両者はそれぞれ手元に転がっている刃物を握りしめると刃先を両者向けあった。


 「俺が生き残る為だ。ここで死んでくれ…」


 「それはこっちのセリフだ。お前こそ逆に殺してやる…」


 我が身可愛さからこれまで一緒に戦って来た仲間を平然と殺そうとする。その光景を見てラスボはくっくっくっと思わず笑い声を漏らしてしまう。


 分かりきっていたがこの二人には何の信念もない。この俺、ラスボを倒そうとしてこの旋利律市へとやって来たのも人々を守ろうだなんて崇高な意思はない。またゲダツを倒して神様からご褒美を貰おうと言う我欲を優先して自分の元までやって来ただけの下らない人間だ。


 本当に…本当に全くだ。自らの欲の為だけに戦おうとしているヤツほど仲間を簡単に裏切る。どうして気付かないのだろうか? そんな人間の醜さが消えないから際限なくゲダツが生まれてくると言うのに……。


 「神様ってのも頭が悪い生き物だな。無償でゲダツを倒そうとする奴等だけを転生戦士にすべきなんだ」


 コイツらみたいな欲の皮が張っている奴等に力を与えるから悪意は増長する。そうなればまたゲダツが生まれる。こんな堂々巡りに神々はいつ気が付くのだろうか?


 「おらぁ死ねぇ!」


 「うがっ、や、やめろぉ!」


 ふと一段と馬鹿二人の声が大きくなったので目を向けると片方の男がもう一人の男に馬乗りになっていた。マウントを取られている男はどうやら武器の刃物を落としてしまったようで完全に無手の状態だ。その上に乗りかかっている男は両手で刃物を持つと頭上に高々と振り上げる。


 「よ、よせよ! そんな事したらお前は人殺しなんだぞ!!」


 「今更何甘い事言ってやがる!! 死んじまえぇぇぇぇ!!!」


 「うぎゃあああああ!?」


 死にたくない一心から壊れた様な半笑いで早まるなと言うが彼だって生き残るために相手を殺害しようとしたのだ。当然生き残るためにそんな命乞いなど聞かずそのまま何度も刃物を腹部に突き刺した。


 「ぐっ、死ね! 死ね! 死ね!」


 何度もザクザクと包丁を頭上に掲げ、そして振り下ろす。最初は激痛に悲鳴を上げてもがいていた男もすぐに事切れる。だが興奮のあまりもう息絶えている亡骸に男は未だに包丁を刺し続ける。

 そんな彼の肩を背後からポンと優しくラスボは叩いてとめる。


 「もう十分だ。それ以上は何もしなくていいぞ」


 「はあ…はあ…こ、これで俺は助けてくれますよね?」


 「ああ――ごめん嘘」


 ラスボがそう言うと同時に死んだ男が落とした刃物を拾い、それで彼の喉を横薙ぎに一閃してやった。頸動脈を綺麗にカットされた男は『え?』と間抜けな声を漏らし、その直後にグルンと白目を剥いて噴水の様に血液を撒き散らし即死した。


 初めからラスボは二人とも助けるつもりなどなかった。コイツらを人形として利用する為には死んでもらう必要がある。まあどちらにせよ自分を殺しに来た転生戦士など生かして返す気など毛頭なかったが。


 「本当に人間って生き物は滑稽だ。どうして悪感情から生まれた俺が助けると考える?」


 もう魂の抜けている二つの肉の器に尋ねるがその答えは返っては来なかった。




 ◆◆◆




 ラスボを探そうと繁華街の捜索の最中にゲダツの気配を複数個所に感知した加江須たちはそれぞれチームを分けて気配の出所へと向かっていた。

 そして加江須と白のコンビが辿り着いた場所には大勢の半ゲダツが待ち構えており、加江須たちと遭遇すると同時に襲い掛かって来た。


 だが結果として言うのであればまるで勝負になりはしなかった。加江須と白は転生戦士の中でも上位の力を誇る。そんな二人が高々ゲダツの血を取り入れた程度の半ゲダツなど相手になるはずもなかった。


 「……よし、片付いたな」


 「はい。しかしラスボはこれだけ多くの半ゲダツを生み出していたとは……」


 二人が倒した半ゲダツの数は10人も居たのだ。今までも半ゲダツを味方につけていた上級ゲダツと遭遇した事はあるがせいぜい一人だけだった。それにこの半ゲダツの数、もしかしたらラスボの血は人間と適合しやすいのではないだろうか?


 「くそ…ラスボのヤツ、どれだけ根を広げているってんだ」


 分かってはいた旋利律市、少なくとも繁華街の周辺はもうヤツの完全な巣と化しているのだろう。となればやはりやむなしだったとはいえチームを分けたのは不正解だったかもしれない。

 

 「もう半ゲダツは片付けて亡骸も処理した。すぐに分かれた4人と合流する……!?」

 

 もうこの場所にも様は無いので4人と合流しようと口にする加江須であるが背筋が凍った。まるで背中にいきなり氷を滑り込まされたかのような感覚だ。

 

 そして彼はその場から勢いよく前方へと飛んだ。その直後、彼の立っていた場所には1本のナイフが突き刺さっていた。


 「か、加江須さん!?」


 「大丈夫、ちゃんと避けた。それにしても…まさかお前まで来ているとはな……」


 そう言いながら加江須は自身の背に強烈な圧を叩きつけて来た女を睨みつけてやった。

 

 「久しぶりだな――仙洞狂華」


 「ええ久しぶりね――久利加江須」


 最悪最凶の殺戮転生戦士が邪悪な微笑と共に姿を現した。



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