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失恋した直後に死んだら俺にハーレムができました。恋人達は俺が守る!!  作者: ゆうきぞく
第十一章 ラスボ討伐編 その1
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部下と言う名の捨て駒


 気持ちを入れ替えて再び形奈へと距離を詰めて急接近するイザナミ。

 彼女の両拳には神力が纏われておりその拳の威力はもはや人知を超えている。いかに神力のコントロールに長けている形奈と言えまともに受ければ致命傷になるだろう。

 だが次々に乱打される拳の軌道を冷静に見極め避けながら負けじと斬りかかる形奈。


 両者の繰り出す電光石火の如き拳と刃の応酬がしばし続き、そこから形奈の立っている位置の真横から跳躍して距離を詰めて来たディザイアの傘による突きが炸裂する。


 「ちぃッ! 要所要所にお前は目障りだ!!」


 伸びて来た傘の先端を頭部をズラして回避する形奈。

 それにしてもやはりゲダツ、あのまま頭を動かしていなければ今頃は残っているあと1つの眼球も潰されていただろう。本当にえげつない。

 しかしディザイアの攻撃を回避するためにイザナミから一瞬だが意識が外れ、その間隙を巧みに縫って稲妻の様な蹴りが形奈の腹部へと横薙ぎにぶち当たる。


 「かはっ…! くっ、コイツ等…!!」


 蹴りを入れられた衝撃により肺の中の空気を強制的に吐き出しながら後方へと吹き飛ばされてしまう形奈。

 吹き飛ばされつつも空中で体制を整えて致命的な隙を作らぬようにとするが、地面へと着地すると既に拳を振りかぶった状態のイザナミが距離を詰め終えている。


 「はあッ!」


 気合一閃の掛け声と共に繰り出される拳が形奈の頬を掠める。

 チリチリと頬に軽い火傷の様な熱が灯され、その熱とは対照的に内心では冷や汗が流れ始める。


 この二人と戦闘を行ってしばし経過するが徐々に押され始めているのは形奈の方であった。

 その理由としてはまず1つ、イザナミとディザイアの息が合い始めているのだ。最初はバラバラに攻めていた彼女たちだが次第にそれぞれのフォローを入れつつ攻めてくるようになってきているのだ。そして2つ目の理由、それはイザナミが形奈のスピードに慣れつつあると言う事であった。


 「くっ、この…!」


 最初は互角の攻防が成立していた形奈とイザナミの好守は偏りが生じつつあった。たとえどれだけ弱体化していてもイザナミは元は神、むしろここまで喰らい付けていただけ形奈は大したものだろう。

 

 イザナミの連撃を必死に捌きつつ戦況をひっくり返せる打開案を模索し続けていた形奈であるがその思考も遮られる。


 「そろそろ追い詰められて来たわね」


 「ぐっ、傘女が!」


 イザナミに対して神力の籠っている斬撃を飛ばして距離を置くがすぐにディザイアが間合いを詰めて来る。

 鋭利な傘の先端部をいやらしく人体の急所ばかりに突き続けて来るディザイアに舌打ちを漏らしつつ対応する。


 「(くそっ、やはりこのままではいづれ敗北は必須だ! どうにか戦力を分断できれば…!)」


 元神と上級ゲダツによるコンビの猛撃に最初の頃の様に会話をする余裕もなくなりつつある形奈。

 そんな焦燥感に駆られつつある形奈とは対照的にディザイアの口元には微かに笑みが浮かんでいた。


 「(このままゴリ押しでコイツは潰せそうね。この場での戦いはひとまずどうにかなりそうね)」


 もしも1対1ならば逆に自分が仕留められる可能性が高い実力者たる形奈をここで倒せるのはかなりのプラスだ。この戦いに勝利してもまだ大元であるラスボが残っている。それにラスボだってまだ多くの半ゲダツと言った手駒だっているのだ。確実に削れる戦力はここで削っておきたい。


 「このまま強引に押し切って……!?」


 傘の連続の突きを繰り出していたディザイアであったが顔色が変わった。それは後方でディザイアの補助を行っていたイザナミも同様であった。

 二人の顔色が変化した理由、それはこの公園のすぐ傍まで迫ってきているゲダツ特有の気配を探知したからだ。しかも単体ではなく複数なのだ。

 

 二人が感知出来たゲダツの気配は形奈も当然気付いており、二人とは違い彼女はニヤリと口元を歪に歪めた。


 「これはこれは…どうやらまだ私にもツキとやらが残っていたようだ」


 そう言いながら刀を渾身の力で握りしめて横薙ぎに振り払いディザイアを吹き飛ばした。強化した傘のお陰で身体を斬られてはいないがガードの衝撃は殺せずに吹き飛ばされる。


 「危ない!」


 後方に居たイザナミの元にまるで剛速球の様な速度で突っ込んで来たディザイアの体をまたしても優しく抱き留めて上げる。

 再び抱き留めて支えられたが礼を言わないディザイアであったが、これは決してイザナミに対して感謝をしていないわけではない。それよりも徐々にこの公園内に近づきつつある気配を最優先に警戒しているからだ。


 ディザイアが口を開きかけるとほぼ同時、自分たちが立っている公園の上空に複数の影が現れる。


 「助けに来ましたぜ形奈のアネさん!」


 「コイツ等を殺ればラスボ様から褒美は思いのままだ!」


 常人離れした跳躍で上空から眼下の地上に居るイザナミとディザイアへと半ゲダツと思しき男たちが複数人強襲して来た。

 そして敵の増員は上空からだけでなく地上からも集まって来た。公園の入り口や塀を乗り越えて四方八方から大勢の屈強な男たちが攻めて来たのだ。その男達の数は上空から強襲する半ゲダツの約3倍近くの数で、それぞれ手には刃物を握りしめている。

 

 「よく来てくれたなお前たち。正直今までで一番お前たち下の存在を有難いと思った事は無いぞ」


 そう言いながら余裕を取り戻した形奈は傲慢とも取れる態度と共に一応の礼を述べて置く。まあもちろん彼女としても本気で有難いなどと思ってはいない。どうせこの連中はラスボに雑兵目的で集められた捨て駒だ。


 「(それにしてもこのタイミングでこの下っ端達が来てくれるとはな…ラスボのヤツも随分と気が利くじゃないか)」


 元々ラスボはこの旋利律市に置いて色々な暴力組織を下に付けている。極道絡みから半グレ、街のはみ出し者や喧嘩自慢の不良まで下に付けている。そして中にはラスボの血に適応して半ゲダツと化している部下も居る。

 多くの暴力絡みの人間や組織を自分の下に付けることで裏からこの旋利律市を牛耳り完全な縄張りと化しコントロールするため、そして手駒を補充する為に。


 この場に応援として駆けつけて来た彼等はラスボからの命令によって集まった者達だが全員が半ゲダツではない。中には血に適合が出来ないと判断されたただの人間も混じっている。

 形奈の援軍として現れた連中に一般人が紛れ込んでいる事にはディザイアとイザナミも当然気付いており、何故ただの一般人まで襲い掛かって来るのかイザナミは動揺を見せる。


 「オラァッ!!」


 イザナミの脳天目掛けて上空から現れた半ゲダツが金属バットを振り下ろす。だがそのスピードは彼女からすればあまりにも遅く頭を下げて回避、そのまま蹴りを横薙ぎに入れて蹴り飛ばす。


 「死ねや!!」


 その野汚い声と共に今度は背後からナイフを突き刺そうと腕を伸ばしてくる男。だがこの男は今しがた自分が蹴り飛ばした男とは違い間違いなく生身の人間だ。もしも今蹴り飛ばした男と同様の力で攻撃をすれば大怪我では済まないだろう。


 「うぉらぁッ!!」


 「やめてください!」


 自分の身に迫るナイフを蹴り飛ばして相手の武器を奪うと手加減した状態で腹部に掌底を打って無力化する。

 

 「ごぼっ……」


 相当に手加減をした一撃だったが生身の人間には致命傷であり、そのまま男は腹を押さえてその場に亀の様に蹲ってしまう。

 見た目が華奢なイザナミを見くびっていたのか、一瞬で戦闘不能に追い込むその強さに応援に来た生身の男共はその場で尻ごみをする。


 来て早々に戦意が喪失しかける連中を見て思わず形奈は舌打ちをした。


 「(やはり半ゲダツはともかく一般人共は使いもんにならん)」


 ラスボの血に適合できると判断されて半ゲダツになった者達はまだ使える。現に最初にイザナミに蹴り飛ばされた男はもう立ち上がって武器を握っており、他の半ゲダツもイザナミとディザイアに怯まず挑んでいる。だが血に受け入れられなかったパンピー共はまだ何もしていないのにビクついている。


 「どうしたお前たち? ここで恐怖のあまり逃げ出す様ならラスボに殺されるぞ?」


 この形奈の言葉は戦意が挫かれていた連中に対して十二分に鼓舞となった。


 それは彼等がここで逃げ出せばその末路がどうなるか嫌と言う程に理解できているからだ。実際にこの場に集まった者達はラスボに歯向かった者、命令を遂行出来なかった者が酷い死に様を迎える瞬間を見た、いや無理矢理その眼に見せられたのだ。


 「さあどうするんだお前たち? ここで肌を粟立てているだけで良いのかな?」


 「し、心配しなくてもちゃんとあの二人を殺して見せるさ!」


 「そ、そうだ! 俺は喰い殺されるなんて御免だぞ!」


 形奈の静かだが有無を言わせない疑問の声に肝を冷やした男たちは脚を動かしイザナミたちへと向かって行く。あのラスボからの制裁に比べれば転生戦士と戦う事の方が万倍マシだと判断したからだ。

 絶対的な支配者の怒りに怯えてイザナミたちへと向かって行く連中の背を眺めながら形奈は口元に弧を描く。


 「そう…それでいい。お前たちは私を助ける為にラスボから寄こされたんだろう? なら――どんな形でもいいから私の役に立ってもらうぞ」


 そう言いながら彼女は刀を構え、視線の先で半ゲダツを圧倒しているディザイアに目を付ける。




 ◆◆◆




 「煩わしいわね。邪魔よ出来損ない共!」


 数に物を言わせて複数同時に襲い掛かる半ゲダツの男共を傘を振って軽く蹴散らしながらディザイアは愚痴る。

 いくら身体能力が強化されているとはいえ所詮はゲダツの劣化版だ。上級タイプのディザイアが負ける道理もなく完全に優勢であった。


 「死になさい愚か者」


 「ごがっ!?」


 ディザイアが勢いよく伸ばした傘の先端が半ゲダツの男のひとりの脳天を貫き鮮血が舞う。そのまま頭部を貫いた男の亡骸を他の半ゲダツへと投げ飛ばしてやる。

 仲間の遺体を投擲されて思わず狼狽える男たち、特に後から応援に駆けつけて来た一般人たちは悲鳴を漏らす。


 そんな中でイザナミだけが変わらぬ様子で少し大きな声でディザイアに叫ぶ。


 「なっ、ディザイアさん! 出来る限り彼等は殺さぬように…!」


 「そんな甘い提案は聞けないわね。敵であるのだからキッチリ始末をしないとね!」


 そう言うと彼女は前方の半ゲダツを飛び越えるとその後ろに固まっていた一般人たちに目を付け、強化した傘を思いっきり横薙ぎすると傘がぶつけられた男たちの身体はまるで粘土の様に生々しい感触と共にひしゃげて飛び散った。


 一瞬で数人同時に仲間が殺された事に思わず男たちの思考が停止する。


 「そんな間抜け顔で突っ立っているなんてね、そんなに死に急ぎたいの?」


 もう一度、今の倍以上の力で傘を振って残りの人間を始末しようとするディザイアであった。


 だがここで予想外の一手が彼女の事を襲った――ディザイアの目の前に居る男の腹から光の剣が伸びて来て自分の腹部に突き刺さったのだ。

 


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