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失恋した直後に死んだら俺にハーレムができました。恋人達は俺が守る!!  作者: ゆうきぞく
第十一章 ラスボ討伐編 その1
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ディザイア過去編 思い返すのは雨の降るあの日…


 ディザイアとイザナミがそれぞれ形奈へと距離を詰めて両者同時に傘と拳による攻撃を繰り出すが、彼女は傘を刀で、そして拳を神力で強化した腕でガードをする。そのまましばし鍔迫り合いの様に膠着状態が続き、不意に形奈が背後へと跳んだ。


 「そおぅらァッ!」


 背後へと距離を開いた彼女は刀と何も握っていない左の方の無手で手刀を型取って神力を纏わせ、それを斬撃に変えて眼前の二人目掛けて飛ばして来た。

 形奈から飛んでくる斬撃を受け流しつつイザナミは驚いていた。


 「(神力をエネルギー変換する術を持っていますか。予想以上に神力の練度が高い!)」


 彼女の飛ばしてきている斬撃は特殊能力でも何でもない。体内の神力をエネルギーに変えて外部に飛ばしている技術だ。神力を飛ばしているので転生戦士ならば誰にでも同じ芸当が可能だろう。だがそれは並大抵の努力では実現は叶わない。ハッキリ言ってかなりの高等技術だ。


 「それだけの力が有りながらゲダツに…ラスボに加担しますか…!」


 「そのセリフは少し語弊があるな。ラスボに手を貸すと決めてから転生戦士との戦いも想定して鍛えた結果だ」


 拳に神力を纏わせて飛んでくる斬撃を弾き返し中央で斬撃同士がぶつかり合い四散する。だが形奈の振るう腕の速度は加速し両手から放たれる斬撃は手数を増して飛んでくる刃と刃の密度は濃くなる。

 だが神力を巧みにコントロールできるのは形奈だけではない。いくら神の座を追放されたとは言えイザナミは元は神様だ。


 「はあああああ!!」


 腹の底から大声を出しながらイザナミは両手に神力を集めて形奈と同様に神力をエネルギーに変換して解き放った。手の平から球体状のエネルギーの弾丸が斬撃とぶつかり相殺し合う。


 「ほお、お前もかなり神力の扱いが上手いな。私以外にも神力を飛び道具として扱って来た輩は初めてだぞ!」


 まさか相手も神力を飛び道具として用いて来る事に驚いていた彼女であるがその程度では動揺はない。だから上空から迫ってきている不意を突いた攻撃にも対応できる。


 「それで隙をついたつもりか!」

 

 「チッ、やっぱり一筋縄じゃいかないわね!」


 形奈とイザナミが互いに弾幕を展開している間に上空へと跳んで一気に下降して来たディザイアの攻撃だが形奈は回避する。頭上から落ちて来たディザイアの傘の先端は見事に地面へと突き刺さっており当たれば絶命も可能だろう。


 「相変わらず妙ちくりんな武器を使っているな。数ある武器の中で何故ソレを選んだんだ?」


 「それをあなたに話す義理があるのかしら?」


 互いに軽口を叩きながらそれぞれ強化を施している刀と傘が何度も鍔迫り合い、その衝撃が公園内へと迸って行く。

 ぶつかり合った直後は互角に見えたが形奈は神力で剣を生成し二刀流で手数を倍にして少しずつ押し込んでいく。


 「そらそらそらどうしたゲダツ! 以前と同じように単体では私の相手は厳しいか!!」


 「ぐっ、うるさい女は煙たがれるわよ…」


 言い返してやるが彼女の刃は少しずつ彼女の肉体に切り傷を増やしていく。今はまだ薄く傷が付いているだけだがこのままでは急所を刺され、抉られる未来は見えている。

 ハッキリと言ってこの二人が一対一でぶつかれば軍配が上がるのは形奈の方だろう。純粋な戦闘能力もそうだがそれ以上に形奈には能力を無効にする出鱈目な能力が備わっている。そのせいでディザイアの相手の欲求をコントロールする力も発動してくれないのだ。

 だが依然と同様に今回もディザイアは独りで戦っている訳ではない。


 「それ以上はさせません!」

 

 イザナミの特大の神力の光球が飛んで来る。その攻撃を避けようとディザイアの腹を蹴って後ろへと下がる形奈。

 蹴りを入れられて吹き飛んだディザイアの体をイザナミが支えて安否を確認する。


 「大丈夫ですかディザイアさん。致命傷は受けていないみたいですが傷が……」


 イザナミの言う通り刀傷を何度かかすってしまい彼女の肌には浅い切り傷がいくつか目立つ。その傷からは赤い雫が滴っている。

 

 「あら少し意外ね。あなたの立場から私はやられても別に構わないと思っていたとばかり…」


 「今はあなたは私たちの味方です。いくらゲダツとは言えその事を履き違えるつもりはありません」


 「本当…優しいのね……」


 もしも逆の立場ならばイザナミが負傷しようが自分は心配など一切しないだろう。だがこの元神様はゲダツである自分をまるで人間の様に心配している。何とも甘い精神の持ち主だ。流石はあの久利加江須が恋人の1人として選んだだけはある。大層な人格者のようだ。例えゲダツだろうと仲間ならば無条件で心配してくれるとは。


 「まるであの娘と同じね……」


 「え、あの娘?」


 ディザイアの口から不意に零れた言葉を拾ったイザナミであるが何でもないとはぐらかされる。


 「(そうよ、こんな所で私は立ち止まるつもりは無いわ。私の願いを叶えるまではどんな力だろうが、自分を心配する純粋な心の持ち主だろうが利用するわ…!)」


 そう決心を改めて固めた彼女の記憶の中にはあの日に目の前で散って行った〝相棒〟の姿がよぎったのだった。




 ◆◆◆



 

 思い返されるのはディザイアが転生戦士の相棒である綱木と共にゲダツと戦っていた雨の降るあの日……そして自分にとって半身とも言える程の大切な友を失くした日……。


 まだ加江須たちと出会う前、彼女はひょんなことから敵であるはずの転生戦士である面伊綱木と共に共同生活を始めゲダツ退治に努める日々を送っていた。

 今更言うまでもない事ではあるがゲダツとの戦いは常に命懸けである。


 「はあ…はあ…なんて強度なのよこのゲダツは……」


 「本当にね。はあ…もうどれだけ攻撃したのか覚えてないんだけど……」


 荒い呼吸を繰り返しながら目の前に立ちはだかるゲダツを睨んでいるディザイアとその相棒である綱木は共に所々に体に生傷が目立っていた。

 二人の目の前に立ちはだかっているゲダツは頭部には兎の様な耳、そして両腕は太く鋭利な爪を伸ばしており、そして脚はカンガルーの様に細くて鋭く長い爪が生えている。まるでいくつもの動物を掛け合わせた嵌合体の化け物だ。身長の方も二人の約2倍ほどあり二人の事を文字通り見下している。

 確かに見た目もかなり奇抜ではあるが二人が手こずっている部分は他にあった。


 「いい加減に倒れなさいよ!」


 そう言いながらゲダツの目の前から綱木の姿が消え、次の瞬間にはゲダツの背後に回り込んで神力で強化した傘を突き刺していた。


 彼女の持つ転生戦士としての特殊能力は2つ存在した。


 1つは転生前に特典としてもらった力、たった今ゲダツの背後に突然出現した現象、『空間を飛び越える特殊能力』である。一定の空間を飛び越えるテレポーテーションの様な力だ。

 そしてもう1つの能力は神様からゲダツ討伐の見返りとして願いを叶えてもらう代わりに貰った『欲求をコントロールする特殊能力』である。


 だが残念ながら彼女の持っているこの2つの能力は目の前のゲダツには大して効き目が無かった。


 「ぐっ…硬いわねコイツの体毛は…」


 ゲダツの全身を覆っている体毛はまるで鋼の様に硬く神力で強化した傘も弾き返す。たとえ空間を飛び越えて不意を付いても攻撃が通らなければ意味がない。そしてどう言う訳かこのゲダツには第二の能力である欲求のコントロールも上手く発動してくれない。恐らくではあるが何かしら特殊な能力を持っている個体なのだろう。


 傘が弾かれた直後にゲダツの蹴りが綱木へと跳んでいく。


 「ぐっ…きゃあああああ!?」


 伸びて来た蹴りを傘を広げて防ごうとするが威力が高すぎて吹き飛んでしまう綱木。

 そのままボールの様に跳ね跳んだ彼女に追撃を加えようとするゲダツであるがディザイアが側頭部に蹴りを入れて注意を自分に向ける。


 「調子に乗っているんじゃないわよこの低級ゲダツ。上位体である私が相手してあげるわ…!」


 言葉は伝わってはいないのだろうが相手は彼女の発言に何かを感じ取ったのだろう。唸り声を上げながら標的をこちらへと変えて来た。

 そのまま獣らしく単純に爪を振り下ろして来るがソレを回避、そしてカウンターを入れてやるがまるで効き目無し。

 

 「(ああもうっ、どうして低級ゲダツがこんなに強いのよ! 私は人型にまで進化した発展型なのよ!!)」


 ゲダツは基本は人型の方がまだ異形の姿をした個体よりも力が有るだろう。だがそれはあくまで基本の話なのだ。ゲダツの中にだって亜種と呼ばれる存在は多少は存在する。目の前のこのゲダツはまさにそれであった。


 そして今まで直撃を避けていたディザイアもついに目の前の敵の攻撃をまともに受けてしまった。


 「ぐっ…あ…!」


 横ぶりに振られた爪は深くは抉らなかったがディザイアの横っ腹を軽く裂いた。

 肉に爪が喰い込む肉が多少引き千切れる感触と激痛、そして傷口からはまるで着火されたかの様な熱が生じる。

 そしてその痛みは彼女の動きを止めるには十分過ぎ、しかも体制まで崩してしまった。


 「グオオオオオオオオ!!!」


 まるで大地を震わせるかの様な激しい程の咆哮とともにトドメの一撃を振り下ろして来た。


 「ぐっ、避けきれない!」


 体制を崩してしまった彼女は降りかかってきている攻撃を目では捉えれても回避までは不可能であった。思わず覚悟を決めて目をつぶってしまった。

 

 だが…いつまで経っても目の前のゲダツの攻撃が自分に降りかかってくる様子がなく薄目を開けて様子を窺ってみて……背筋が凍り付いてしまう。


 「綱木……?」


 自分の足元では背中から激しい出血と共に地に伏している相棒が転がっていたからだ。



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