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失恋した直後に死んだら俺にハーレムができました。恋人達は俺が守る!!  作者: ゆうきぞく
第十一章 ラスボ討伐編 その1
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イカれた戦闘狂の参戦


 仁乃たちが豪胆と激突している同時刻、別行動を取っていたイザナミとディザイアの二人組も同じく戦闘を繰り広げていた。

 二人が気配を頼りにたどり着いた場所は繁華街を抜けてすぐ近くにある公園であった。しかし見たところ公園内は手入れをされている様子もなく荒れており、子供はもちろん人もほとんど寄り付いていない事が伺えるほどに廃れた風景であった。


 そして二人の周辺には多くの半ゲダツである男達が倒れており死屍累々の惨状が描かれていた。


 「口ほどにもないとはこのことねぇ。数だけ居ても中身が伴っていなければ意味がないわよ」


 そう言いながら足元で転がっている半ゲダツの1人を足蹴にするディザイアであるが返答はない。何故ならもう既に息を引き取っているからだ。


 「……とにかくこの方達の〝処理〟をしましょう」


 そう言いながらイザナミは神具である亜空封印箱を取り出し周辺の半ゲダツである男達の亡骸を納めて行く。その際に彼女はどこか複雑そうな表情をしていた。


 「あら、まさか同情しているの?」


 イザナミの表情の変化を敏感に察知したディザイアは少し面白そうなものでも見たかの様な顔をしていた。


 「元とは言え神様であるあなたがこんな連中の為に胸を痛める必要があるのかしら? ゲダツの討伐は元々は神様たちが人間に託した行為でしょう?」


 「そうですね。ですが…彼等は元々は人間です」


 人々の悪感情から生まれて世界に蔓延っているゲダツの退治は確かに神々が地上の人間に託した使命である。しかし半ゲダツは元は人間である事もまた事実だ。そう考えるとやるせない気持ちになってしまう。何故元は純粋な人である彼等をゲダツとして葬らなければならないのかと。


 イザナミのそんな葛藤など気にもしないでディザイアは自分の言いたい事を口から吐き出して彼女にぶつけて来た。


 「あなたは少し純粋すぎるわね。半ゲダツとなった連中は大抵が下らない我欲から力を求めた連中よ。ここで転がっている連中を見てそんな事は百も承知だったでしょう?」


 その言葉に対してイザナミは何も言い返す事が出来なかった。確かに襲い掛かって来た彼等は身勝手な理由を宣いながら笑っていた。ディザイアの言う通り騙されて半ゲダツと成った訳ではないだろう。

 

 「今のあなたはもう神の座から降ろされたのでしょう? もう少し柔軟に生きても良い気がするけどねぇ」


 「…はやく加江須さんたちと合流しましょう」


 そう言うと公園内に散らばっていた半ゲダツの遺体を収納し終わり他の皆との合流をしようとこの場を後にしようとする。

 

 だが二人がこの場から立ち去ろうとした瞬間、一際大きな神力の気配がすぐ近くから感じ取れた。


 「やれやれ、また面倒なお客さんの登場ね」


 そう言いながら気配が放たれている公園の入り口付近に目をやるディザイア。

 寂し気な公園に踏み込んで来た人物を見るや否やディザイアの表情が曇りを見せ始める。


 「お前とこの旋利律市で遭遇するのはこれで二度目だなディザイアとやら」


 「ええそうね…東華形奈……」


 二人の前に現れたのはラスボに協力している転生戦士である東華形奈であった。

 隻眼の開いている右目はまるで刃物の様に研ぎ澄まされており容赦なくディザイアとイザナミの二人を射抜いていた。

 この場に現れた形奈はしばしディザイアへと視線を送っていたがすぐにその隣に居るイザナミへと移した。


 「そっちの顔は初めてだな。あの久利加江須の仲間かなにかか?」


 そう言いながら彼女は腰に差している鞘から日本刀を引き抜いて獰猛な笑みを浮かべる。


 「遠巻きに公園内での戦闘を見ていたがナヨナヨしている見た目とは裏腹に相当戦い慣れている様だったな。かなり神力の扱いに長けているようだな」


 「それは…お互い様ではないですか?」


 イザナミはこの公園内で半ゲダツと戦っている最中も周辺の気配を探知し続けていたのだ。にも関わらずこの公園内に踏み込むまで彼女は形奈の接近に気付けなかった。それはほんの僅かな神力すらもコントロールして消していた証とも言えるだろう。


 「(どうやら加江須さんから聞いていた通りかなり力の扱い方が上手いみたいですね)」


 この旋利律市へと踏み込む前に加江須から形奈については色々と話しは聞いていた。そして彼女の神力の扱いは自分よりも上である事も彼は話していた。どうやら彼の言う通りかなりのやり手の様だ。

 中々に神力に対しての精密な扱い方が研磨されている事は対峙しただけで十分理解は出来た。だが彼女の持つこの力は本来であればゲダツを倒すための力だ。


 「どうして…どうしてあなたはラスボとやらに従っているんですか?」


 「んん? お前は問答や説得をする為にここまでやって来た訳ではないだろう。今更私がゲダツ側に付いている理由を訊いてどうなると言うんだ?」


 「……確かに問答は不要なのかもしれません。ですが…それでも私は知りたいんです。この世界を陰から救う力を与えられておきながらその元凶に味方する理由を……」


 イザナミは元々は転生戦士を生み出して来た神であった。彼女はどうか世界の混沌と立ち向かって大勢の人間を救って欲しいと言う願いと共に転生戦士となった人物たちを何度も見送って来た。それなのにその力を悪用する、ましてやゲダツに従う事が納得できなかった。


 イザナミの真剣な瞳を見て最初は何も答える気などさらさらなかった形奈の心境に変化が訪れる。それはただの気まぐれなのかもしれない。だがディザイアと違い彼女からは敵対している相手とは思えない澄んだ瞳をしており何かを感じたのかもしれない。


 「何故ゲダツに協力をするのか…か…。最初に断っておくがお前が思っているよりも陳腐な理由だぞ」


 そう言うと彼女は日本刀を鞘に納めると不敵な笑みと共に話を始めた。




 ◆◆◆




 「うそでしょ! じゃあコイツがよく噂になっている戦闘大好き狂人女なの!?」


 いつの間にか自分たちの前に現れた狂華を指差しながら余羽は氷蓮の背中へと避難しつつ派手に驚いていた。そして彼女に盾のようにされている氷蓮は豪胆の時と同様に完全に敵を見定めている様な瞳をぶつけている。


 「コイツが加江須の命を狙っているふざけたクソ野郎か」


 転生戦士としてゲダツを狩るのは当たり前、そして刺激を味わえるのであれば同じ転生戦士すらも標的とする狂ったバトルジャンキー。しかも自分の大切な加江須の事まで狙っている相手である以上は明確な敵に間違いない。

 前置きも無しに彼女へと大量の氷柱を射出して串刺しにしてやろうと考え実行に移そうとした氷蓮であったが――次の瞬間には目の前で仁王立ちしていた狂華が〝消えた〟のだった。


 「そんな怖い顔をしないでもいいじゃない」


 「ッ!?」


 今の今まで目の前に居た狂華はいつの間にか氷蓮のすぐ隣に移動を終えており、瞬間移動の様にパッと現れた彼女に驚きつつ彼女は距離を取った。


 「うわっ、いつの間に!?」


 氷蓮の背に隠れていた余羽は前触れもなく出現した間近の彼女に驚き間抜けにも尻もちを付いていた。

 気が付いた次の瞬間にはもう既に視界から消えて移動を終えている狂華を見て仁乃は苦々しい顔をする。


 「相変わらずふざけた能力ね。時間停止能力…」


 「くそ…マジで時間を止めれるのかコイツ…」


 事前に加江須や仁乃からは狂華が時間を操れる事は聞いていたがこうして直接体験してみるとでは印象がまるで違う。自分がどれだけ気を張っていても次の瞬間には行方を見失う。これは戦闘においてはかなり厄介な力だ。


 それにしても何故このタイミングでこの女がこの場に現れるのかと仁乃は思ったが、よくよく考えれば転生戦士にとってはラスボは共通の敵だ。そう考えればコイツがこの旋利律市に現れてもおかしくない。


 「アンタはこの町に潜んでいるラスボを狙って足を運んできたわけ?」


 仁乃が焦りをひた隠しにしながらそんな質問を投げかけた。

 相手はラスボの下に付いている訳ではないので自分たちと同じように外からやって来た転生戦士にはそこまで警戒する必要は無いのかもしれない。だがこの女だけは別なのだ。戦いに魅入られ狂ってしまっているコイツの場合はラスボだけでない、自分たちだって標的にされてもおかしくないのだ。

 チラリと横目で氷蓮の事を見てみると彼女も自分と同じ考えをちゃんと持っておりいつでも戦える準備だけはしている。一方で余羽はまだ事態が呑み込めていないのか右往左往している。


 「何だか重苦しい空気じゃん。まるで今から一戦始めようとしている勢いよ」


 そう言うと彼女はナイフを取り出すと手の中で弄んでいる。


 「やる気満々と言った感じね…!」


 仁乃は大量の糸を放出し、ソレを束ねて槍を形成してその切っ先を狂華に向ける。氷蓮も続いて双剣を、余羽もようやく事態を呑み込めてきたのか構えを取る。

 だが3人から敵意を叩きつけられているにも関わらず狂華は特に慌てる事もなく鼻歌すら歌い出しそうな雰囲気だ。


 「いいじゃん、そーゆー敵意に満ちた眼は大好物♪ ところでひとつ確認しておきたいんだけど久利加江須もこの町に来ているのかしら?」


 「だっ、だったらどうだって言うの?」


 下手な事は答えるべきでないと考えていた仁乃と氷蓮の内情を無視して余羽が口を滑らせてしまった。今の言い方では加江須だって一緒に来ていると言っているも同然だ。思わず氷蓮は余計な事をと呆れ半分に睨みを利かせている。


 「ふ~ん…あいつも来ているだ。じゃあ――まずはそっちに挨拶しに行こうかな」


 そう言った直後にまたしても彼女は3人の視界から一瞬で消失してしまう。


 「くそっ、今度はどこ行きやがった!?」

 

 苛立ち気味に周囲を観察する氷蓮であるがもう狂華の姿はどこにも確認できなかった。

 

 「無駄よ氷蓮。もうどこを探しても多分アイツは居ないわ」


 先程の加江須がこの町に来ていると知った時に見せたあのいやらしい笑み、恐らくはあの女は自分たちを放っておいて加江須を探しにでも向かったのかもしれない。


 「面倒な展開になって来たわね…」


 とにかくもうこのビルには敵は居らず無人状態だ。今は一刻も早く加江須たちと合流するべきだと判断し3人は神具で遺体を回収し、すぐさま廃ビルから出て行くのであった。


 

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