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失恋した直後に死んだら俺にハーレムができました。恋人達は俺が守る!!  作者: ゆうきぞく
第十一章 ラスボ討伐編 その1
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予想外の敵との遭遇


 訪れた繁華街へと踏み込んだ加江須達は早々に3手に分かれてゲダツの気配が漂う場所へと移動を始める。罠の可能性は極めて高いが転生戦士である以上はゲダツの気配を探知しておいて無視できる訳がない。

 

 それぞれのチーム分けとしては加江須と白、仁乃と氷蓮と余羽、そしてディザイアとイザナミと言う具合に分かれている。出来る限り戦力を均等に分けた結果のチーム編成であった。


 「私たちは右の方へと向かうわ! 残りの2か所をお願い!!」


 仁乃は少し離れた右の方面側からゲダツの気配を感じる場所へと狙いを絞りそこへ向かう。そんな彼女の後を氷蓮、それと少し慌て気味に余羽が後に続いている。


 「それじゃあ私たちは左側へと向かおうかしらねぇ。付いて来てねイザナミさん♪」


 「……」


 ディザイアとイザナミの二人組は左方面から気配が漂っている場所へと足を運ぶ。

 どこか楽し気な表情でディザイアは後ろに続いているイザナミへと怪しげに微笑んでちゃんと付いてくるように促す。その発言に対して未だ彼女を心から信用しきれていないイザナミは複雑そうな顔のまま後に続く。


 「よし、じゃあ俺たちは真正面から続いている気配の発信源に行くぞ!」


 「了解しました。足を引っ張らない様に心掛けます」


 こうしてそれぞれが気配の発信源へと向かい、その中でもっとも最初に目的地に着いたのは仁乃たちのチームであった。


 「ゲダツの気配は…此処からね……」


 ゲダツの漂って来ている気配を探知し続けて彼女たちがたどり着いた場所は見るからにボロボロの廃ビルであった。外壁は亀裂が幾重にも走っており、ペンキも剥がれて下手なお化け屋敷などよりもホラー風味が醸し出されている。

 その如何にもな建物の風情に少し委縮しそうになる余羽であるがすぐに気を引き締め直した。

 

 「おっ、いつものいビビりはもう克服したみたいだな」

 

 「うるっさいなぁ。そう言う言い方やめてよ」


 緊張を解そうとでも思ったのか氷蓮はどこかからかう様な感じで余羽へと話し掛けると、彼女は不貞腐れた様な目で言い返していた。

 そんな二人の前方に立っている仁乃は拳を数度ぐっぱっと開き、意を決して二人と共に中へと突入する様に声を掛ける。


 「行くわよ二人とも。気配の数から相手は1人じゃないから気を付けなさいよ」


 仁乃の言う通り今から踏み込む空きビル内から感じるゲダツの気配は単独ではない。そしてこれが転生戦士を誘い出す為の罠であるなら相手も迎撃態勢で待ち構えているかもしれない。

 

 完全に外れている扉をくぐって建物内部へと入り込んだ仁乃たちであるが、予想通りにほとんど間を置かずに汚い怒声が上空から降り注いできた。


 「おっしゃあッ! まんまと来やがったな転生戦士共がッ!」


 「お前等を殺せばラスボ様から褒美が貰えんだよォッ!」


 二階の手すりから身を乗り出して階下へと複数人の男共が問答も無く襲い掛かって来た。その人数は全部で5人、しかもそれぞれの手には日本刀やナイフなど相手を明らかに殺傷する気が満々の得物を手にしている。

 上の階からこの下の階まではそれなりの高さがあるにも関わらず綺麗に着地する連中。この身体能力、そしてコイツ等の体内から感じる腐臭すらしそうな禍々しい気配は……。


 「どうやら全員半ゲダツみてぇだな。ならこっちも遠慮しねぇぞ!!」


 口元を余裕気味にニヤリと歪ませながら氷蓮は両手に氷で造形した剣を構え、そして一番先陣を切って襲い掛かって来る金髪坊主の男へと剣を振るった。

 先に手に持っている日本刀を振るったのは相手であるにも関わらず氷蓮の剣は眼前の男とは比較にならない速度で剣を横薙ぎに振るった。


 「ひゅっ…」


 氷蓮の横薙ぎに振るった剣はまるで豆腐の様に男の胴体をすり抜けて行き、相手の肉体は上下に二分された。

 肉体を切り離された男は口から小さな悲鳴に似た苦痛の声を一瞬だけ零し、そのままグルンと白目をむいて床に転がる。


 「ぐっ…や、やりやがったな。アッサリ殺しやがった…!」


 今まで強気な態度を顔に滲ませていた残りの男共は目の前で分割された仲間を見て青ざめる。

 正直に言えばこの連中は目の前の仁乃たちを見て油断していた。いくら転生戦士と言っても外見はただの女子高生にしか見えない、と言うよりも実際に普段はただの高校生や少女なのだ。

 だが彼等は知らない。ここまでに至るまで彼女達は命懸けの戦いを経験して生き残って来た立派な戦士であることを。ハッキリと言って彼女たちはいくら人に模していても半ゲダツを殺す事に躊躇いは無い。相手を殺す程度の覚悟なんてとうの昔から決まっている。

 だから彼等は次の彼女達の攻撃も避けれずまともに受けてしまう。


 「戦闘中におどおどしてんじゃないわよ!」


 そう言いながら仁乃は無色の糸、クリアネットを半ゲダツの1人の首へと飛ばして巻きかけていた。

 

 「え、何かが首に!?」


 まんまと首周りに糸を巻き付けられ異物感から半ゲダツの男が自分の首元を触る。だが反応が遅すぎた。糸を巻き付けられた後の今更に首元を確認しても何の意味もない。


 仁乃は容赦なく渾身の力で自分が握っている糸を引っ張ってやった。すると彼女の手には何か少し硬いものを切断する感触が伝わってくる。

 そして首に糸を巻きかけられている男の視界がグルンと逆さになる。


 「え…何で地面が回っているんだ?」


 何やら首元が一瞬涼しくなったと思った直後に視界が回転していた。いきなりの浮遊感に混乱していた男であるが視界が空中で回転しながら彼は見た。

 

 「え…これって……」


 回転しながら空中から彼の瞳に映り込んだのは首から上が〝無くなっている〟自分の体であった。そして自分が首を斬られたんだと理解したと同時に意識が薄れ絶命した。

 

 「うおおおおおおお!?」


 「う、嘘だろ!?」


 またしても一瞬で仲間が殺された事に他の3人の男は完全に戦意を喪失してしまっていた。今まで力強く握っていた得物はカタカタと震え、目の前の少女たちが恐ろしすぎるあまりに後ずさっていた。

 

 「て、テメェ等イカれているのかよ! いくら半ゲダツと言っても俺たちは元々は人間なんだぞ!!」


 自分たちは仁乃たちの事を殺害しようとしていたくせに身勝手な戯言を宣う半ゲダツの1人。そんな戯言を聞いて動揺するほどに仁乃たちは軟ではない。すぐに残りの3人を始末しようと考えた彼女であるがここで我に返った。


 「いや、危ない危ない。流石に全員殺すのは不味いわね。ラスボについて色々と話してもらわないといけないかしらねぇ」


 襲い掛かって来た敵を一気に返り討ちにしようと考えていた仁乃であったが情報を得ないといけない事を思い出し捕獲に移ろうとする。

 だが相手は勝ち目がないと判断したと同時に既に動き出していた。それぞれが微塵も躊躇なく背を向けるとそのまま走り去って行ったのだ。


 「なっ、待ちやがれクズ共!!」


 まさかの清々しいまでの敵前逃亡に一瞬だけ反応に遅れてしまう氷蓮であったが、すぐにハッとなると後を追い掛け始める。幸いなことは入り口前に自分たちが立っていたのでビルの奥へと逃げて行って外に逃げられる事がなかった事だろう。

 

 「ど、どうするの? 私たちも氷蓮の後を追う?」


 後を追い掛けて行った氷蓮の背中を困惑気味に見つめながら余羽は仁乃から指示を貰おうとする。

 このままあの連中を逃がすわけにはいかないので氷蓮に続いて後を追い掛ける事にした二人であるが仁乃は声の音量を少し上げながら氷蓮に叫ぶ。


 「出来る事ならアイツ等は生け捕りにするわよ氷蓮! もしかしたらコイツ等はラスボに繋がる情報を持っているかもしれないわ!!」


 「ああ分った任せろ…てっ、アイツ等バラバラに散らばったぞ!」


 先頭を走りながら仁乃の言葉に返事を返していた氷蓮であったが前方の逃げた半ゲダツは分かれ道の十字路の通路をそれぞれバラバラに逃げて行く。3方向へと散って行く男どもを舌打ち交じりに見据えて氷蓮はその内の1人に目を付ける。


 「お前たちは左右に逃げて行った連中を頼む! 俺は真っ直ぐ突っ切って行った馬鹿を捕まえる!」


 そう言いながら氷蓮は直進で逃げて行った男の方を受け持ち、仁乃は右方向、そして余羽は左方向へと別れて後を追った。


 「逃がさねぇよこのクソ野郎がッ!」


 流石は身体能力が向上された半ゲダツ、逃げに意識を集中したのならば中々に速い。だが神力で脚力をもう一段階強化した氷蓮は一瞬で男の背後まで距離を詰め、そして男の足元に冷気をぶつけてやった。一瞬で男の足元は氷で覆われ逃亡を封じられた男はそのまま前のめりに倒れ込んだ。

 

 「逃がさねぇよクズ。いきなり殺意アリアリの不意打ちかまして来たんだ。容赦はしねぇぞ」


 そう言うと足元を氷で固められて逃げられない男の髪の毛を掴み無理矢理顔を持ち上げてやった。

 至近距離で氷蓮に睨みを利かせられて思わず目を逸らそうとする男であるが、そんな彼の瞳に手から発生させた氷柱を突き付ける。


 「目ぇ逸らさず俺の質問に答えろよ。じゃねぇと眼球に氷柱が突き刺さった上に氷漬けの刑だ」


 少し低い声で脅された男は唇を震わせながらブンブンと首を上下に振って反抗の意思は皆無である事を必死に伝える。


 「な、何でも話しますので命だけは…」

 

 「よーし賢い選択だ。じゃあとりあえず……」


 こうして無事に半ゲダツの男を捕まえて尋問に至った彼女であったが、他の二人はどうなっているのだろう?


 左右の通路に分かれてからすぐに仁乃は氷蓮と同様にすぐに逃げた男を捕縛していた。能力で生み出した糸でグルグル巻きにした状態で尋問を行っていたが、そこで聞き捨てならない話を聞きだす事になる。


 「何ですって…それは本当なの?」


 「あ、ああ…こんな状況で嘘なんて言わないさ」


 仁乃に縛られながら半ゲダツの男は冷や汗と共にこう伝えていた。


 「今このビルにはラスボさんの組織の幹部の転生戦士が潜んでいる。アンタ等の様な外からくる転生戦士を殺すためにな」


 目の前の半ゲダツがそこまで言うと仁乃は思わず少し前に分かれた少女の名前を叫んでいた。


 「余羽さん!!」


 そして…仁乃と氷蓮が無事に捕獲を完了しているその頃、余羽は目の前に現れた予想外の敵に思わず息をのんでいた。


 「どうやらラスボの言う通り外から転生戦士が来たみたいだなぁ。なら、俺が遊んでやるよ」


 彼女の前に突如として表れた転生戦士、豪胆剛は凶悪な笑みを漏らしながら目の前で内心震えている余羽を見て大きく笑っていた。



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