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失恋した直後に死んだら俺にハーレムができました。恋人達は俺が守る!!  作者: ゆうきぞく
第十一章 ラスボ討伐編 その1
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動き出すそれぞれの転生戦士、そしてゲダツ


 金森から聞かされた話では自分達の焼失市と同様に彼の暮らしている町にも転生戦士は複数人存在するらしい。そして彼を始め何人かの転生戦士はこの旋利律市へと既に踏み込んでいるそうだ。その狙いは言わずもがな転生戦士の恩恵を縛り付けているラスボである。


 裏路地を出た後は加江須たちは当初の目的である以前訪れた繁華街を目指して移動していた。ちなみに金森とは別行動を取っている。その理由はハッキリと言うならばあの男を完全に信用しきれていないと言う要素が大きいだろう。いくら同業者とは言えまだ対面して間もない男を信用は出来ない。それにあまり彼に対しての印象も良くなかった事も理由だろう。確かに相手は半ゲダツだったとはいえ騙して情報を抜けるだけ抜き取り用済みになれば殺す。そんな冷徹な態度には白やイザナミは特に嫌悪感を表情に晒していた。


 「しかしラスボってヤツは徹底しているわね。部下にも自分の所在地を教えていないだなんて」


 現状では結局ラスボにたどり着ける有力な手掛かりを得られておらず仁乃がそうぼやいた。


 金森が殺した半ゲダツは残念ながらラスボについて目ぼしい情報をほとんど所持してはいなかったのだ。

 彼等のボスであるラスボは自身の存在を極力不透明にするように心掛けているようだ。何しろ所在地どころかラスボの能力すらも教えてもらっていないのだから。余程慎重派なのか、それとも単純に半ゲダツなど仲間とすら見てもいないか。理由としてはどちらもありえそう、と言うよりも両方だろう。

 だがまるで何も情報を持っていなかったと言う訳でもない。多少なりともプラスになる情報は有していた。


 「しかしラスボのヤロウには他にも転生戦士や人型ゲダツの仲間が居たなんてな」


 氷蓮達は先程に金森から敵対する者が同じ、そして何より味方の証として情報共有の為に半ゲダツから搾り取った情報を教えられ、その情報の中にはあの形奈以外にもラスボには協力者が居たと言う事を知った。


 「やっぱり戦力を集めた状態で此処に来て正解だったわね。あの形奈と同じ転生戦士の味方を他にも引き連れていたなんて…」

 

 「ああ、だがそれはこちらも同じことだ」


 いつも通りすぐに敵陣に乗り込まなくて正解だったと胸をなでおろす仁乃。そんな彼女に加江須は同意しながら頷きつつも協力者が居るのは相手だけではないと告げる。


 「ここに居る俺たちだけじゃない。あの金森とかの話ではどうやらアイツの仲間…いや同業者も何人か潜入しているそうだしな」


 言葉の途中で仲間でなく同業と言い直したのは金森同様に未だ信用が置ける連中かどうか不明だからだ。

 とにもかくにも今はラスボに繋がる有力な手掛かりを1つでも得る事の方が重要だ。


 「とりあえず当初の予定通りまずは繁華街の方へと向かおう。ただあの場所はあからさまに治安の悪さが目立つから気を付けてくれ」


 加江須の忠告に対して仁乃たちは頷いて大丈夫だと伝える。まあゲダツと何度も戦って来た彼女達がただの半グレ程度にやられるとも思えない。とは言えあそこの治安の悪さを考えると警告しておいて損は無いだろう。


 こうして別の町から訪れていた同業者との思わぬ邂逅に少し時間をくってしまったが決して無駄な時間の浪費と言う訳でもないだろう。それにこの町にラスボを倒そうと続々と戦士が集まっている状況は好ましくすらある。

 そんな事を考えながら加江須達はまずは移動手段として扱えるタクシーを探し始めるのであった。




 ◆◆◆




 路地裏から出て来た金森は大勢の人間が行き交う表の道を歩いていた。

 すれ違う人間は誰もかれもが同じ目をしている。特に刺激も無く平凡な毎日を過ごしているどこか退屈さを含んでいる目だ。


 「(どいつもこいつも能天気な顔だ。この町には人食いの怪物が根を張っていると言うのに……)」


 すれ違う人々へと内心で軽い罵倒をぶつけながら鼻で笑ってやった。まあ別にこの町の一般人が何も知らずにのほほんと生きている事を責めるつもりは無い。と言うよりもこんなモブキャラなどどうでも良いとすら彼は思っている。

 

 ここでこの金森と言う転生戦士の事を少し話しておこう。

 この男は決して燃える様な正義の心など持ち合わせてはいない。この旋利律市へと訪れた最大の理由は、と言うより唯一の理由がラスボを討伐して再び自分の願いを、願望を叶えてもらう事なのだから。

 

 「1つ目の願いでもう金は十分すぎる程手に入ったんだ。次は意のままに出来る女が欲しいからな」


 女と言えばあの加江須とか言う小僧と一緒に居た女共は全員美形ぞろいだったなぁと下品な考えが頭によぎる。ラスボを倒した後はああ言う清純そうな女でも手に入れようかと考える。


 どこまでも自らの我欲に忠実な戦士、この場に加江須が居れば嫌悪感を剥き出しで呆れた様な視線を浴びせていただろう。だが人間と言う生き物から欲望を切り離す事は決してできないだろう。それは天よりも遥か高みからこの地上を観察している神々すら認めているところだ。だからこそそんな人間の欲を逆手にとって転生戦士が自主的に戦う制度を作り出したのだから。


 「しかし半ゲダツを絞っても大した情報を得られやしねぇ。こっちは早く本命を狙いに行きてぇのに……」


 この町に来てから彼は加江須達と遭遇する前、他に2人の半ゲダツからも情報を集めていたのだが大した収穫は無かった。このまま他の半ゲダツを狩って行っても新たな情報を手に入れられるとは思えなかった。


 そうとなれば……ラスボに協力している幹部連中を締め上げるべきかもしれない。


 「確か…転生戦士が2人、そしてラスボと同じ人型タイプのゲダツが2人だったな…」


 先程に殺した半ゲダツの話ではラスボには半ゲダツの様な雑兵だけでなく手練れの戦士が4人も存在すると言っていた。その中には自分と同じ転生戦士も居るのだから呆れたもんだ。


 「理解できねぇなぁ…。何でゲダツなんかに協力するんだか? それよりも寝首でも掻いてやりゃいいのに……」


 自分の為だけに戦っている金森からすればゲダツに手を貸す転生戦士の考えは理解できない。まあ加江須達からしてもその点は全く同じではあるが。

 

 とにかく今はもっと情報が入り用だ。次に半ゲダツを見つけ次第に幹部連中について重点的に話を聞いてみるとしよう。ラスボについての情報を持っておらずともその下に付いている連中の事なら色々と知っているかもしれない。


 だが彼は気付いていなかった。転生戦士は常にゲダツを狩る者とは限らない。時にはその逆、ゲダツが転生戦士を狩ろうと動く事だってある。

 その証拠に彼から少し離れた背後には二人の女性が金森を見ていた。


 「「………」」


 二人の女性は光が消えている不気味な計4つの瞳を数十メートル先で歩いている金森へと向け続けていた。




 ◆◆◆




 移動の為のタクシーを無事に拾った加江須達は目的の場所である繁華街の入口に立っていた。

 多くの商業施設が左右に立ち並んでいる道を眺めながら仁乃がゴクリと喉を鳴らして唾を呑んでいた。


 「な、何か如何にも治安の悪そうな感じね。もっと明るくワイワイした場所だと思っていたんだけど…」


 確かに繁華街は多くの商店が立ち並び、基本は多くの人間が行き交う活気のあるエリアだ。そのような場所ならば楽し気な雰囲気をイメージするのも無理ないだろう。だが問題はその繁華街内に居る人物達が半ゲダツをはじめガラの悪い連中が大勢住み着いているところだろう。


 「相変わらずドブネズミの巣窟って感じねぇ。まだ入り口前なのに嫌な視線をビンビンと感じるわ」

 

 ディザイアは手に持っている傘をクルクルと回しながらクスクスと笑う。

 確かに彼女の言う通り繁華街の中からはまるで刃物の様な鋭い視線を幾重も感じる。この中に潜んでいる人間が血の気の多い連中ばかりであることが伺える。それに以前にこの巣窟の中に足を運んだ際には早々に馬鹿な連中に絡まれた事を思い出した加江須は皆に最後に念押しをする。


 「これから乗り込むが全員常に警戒しておくように」


 一般人の短気な馬鹿共もそうだがこの繁華街内にはラスボの血を受け入れた半ゲダツも潜んでいる可能性がある。実際にこの場所で自分は入って早々半ゲダツと戦っているのだから。


 意を決して繁華街の中へと入り込んで行く加江須達であったがここで少し違和感を覚える。


 「(……何だ、この妙な感覚は……)」


 繁華街内は以前に訪れた時と同様に賑わっている。歩いていると薄汚い怒号と共に言い争っている馬鹿共の喧騒の声も聴こえて来るのだが……。


 「見られていますね…」


 イザナミが加江須へと小さく囁きかける。

 そう、このエリアへと入り込んでからジロジロと明らかに視られているのだ。そしてその視線は1つではない。この繁華街のあらゆる場所から自分達を見てきているのだ。

 この刺さるような数々の視線は他の皆も当然気付いており、余羽は不安から氷蓮の肩に手を置いて辺りをキョロキョロと見ている。


 「ね、ねえ何だか凄い見られている気がするんだけど…余所者が物珍しいのかな……」


 「いや、これはそう言う類の視線じゃねぇだろ」


 余羽の問いかけに対して彼女は首を左右に振って否定的な言葉を返してやった。

 この繁華街に入ってから自分たちを見つめてきているこの視線は明らかに敵意が含まれている。その視線の元を辿ると1人の男と目が合った。


 「……っ!」


 氷蓮に睨み返された男は慌てて視線を露骨に逸らしていた。他の視線の元にも同じような事をすると全員が同じように目が合うとすぐに他所を向いた。


 「ねえ、これヤバいんじゃないの? 加江須、ここは一度……」


 何だか周辺の異様な雰囲気に危険を感じ取った仁乃が加江須に一旦この場を離れた方が良いのではないかと告げようとするが、その瞬間にこの場に居る皆は半ゲダツの気配を感知した。


 「この気配は半ゲダツのもの。しかしこれは……」


 「ああ、タイミングが良すぎるな。全く同時に〝3方向から同時に気配が出現〟したんだからな」


 どう考えても罠と思えるタイミングで3方向から半ゲダツの気配を皆は感じ取ったのだ。偶然にしては出来過ぎているだろう。


 「とは言え無視はできないわよねぇ。どうする気?」


 ディザイアの言う通り、たとえ罠でも今はこちらも情報が欲しい状況だ。これだけの半ゲダツが待ち構えているのであれば罠と理解しても行くしかない。


 「よし、気配の出所は3か所だ。こっちも3手に分かれて行動するぞ」


 加江須はそう言うと戦力を出来うる限り均等に分けた後に少し大きな声で号令をかける。


 「よし、行動開始!」


 その言葉と共に彼等は3手にそれぞれ分かれて移動を開始するのだった。



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