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失恋した直後に死んだら俺にハーレムができました。恋人達は俺が守る!!  作者: ゆうきぞく
第十一章 ラスボ討伐編 その1
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集まる転生戦士たち


 旋利律市へと入ってから早々に予想外の展開を迎えた加江須たち一同。この市内に降り立ってから真っ先に半ゲダツの男と遭遇出来た事は確かに幸運だったと言えるだろう。その半ゲダツを締め上げればラスボに関する情報を得られると思ったからだ。だが何故かその半ゲダツは敵対すべき存在である転生戦士と密会を繰り広げていたのだ。だがその転生戦士は今の今まで話をしていた半ゲダツの男をアッサリと加江須たちの目の前で殺してのけたのだ。


 視線の先では首の骨をへし折られ不自然な方向を向いている半ゲダツの骸。もう生気を失っている乾いた瞳はどこか恨めしそうに見え、口や鼻からは赤い体液を地面へと零している。


 「う……」


 あまりにも凄惨な光景に思わず余羽は氷蓮の背に隠れていた。

 だが他の皆はこの程度の事で動じる程に軟なメンタルをしてはいない。今まで何度も率先してゲダツと戦ってきた精神力は今更人死にを見ただけで激しく動揺する事は無かった。それが褒められるのかは微妙ではあるが。

 そしてこの不穏な空気を作り出した張本人である転生戦士の男は余裕を持った表情で両手を空に向けて上げ、交戦の意思が皆無であるとジェスチャーで伝えてきている。


 「そう身構えるなよアンタ等。心配しなくても俺はアンタ達と事を構える気はないからよ」


 「いきなり場の雰囲気を不穏にしておいて素直に信じられると思っているのかしら?」


 目の前の得体の知れない相手に対して仁乃が当然の様に疑りの強い瞳で射抜いていた。

 だが相手はそんな仁乃の発言に対して小さく吹き出したのだ。


 「な、何がおかしいのよ!?」


 馬鹿にされたのかと思った仁乃は少し感情的になりそうになった。だがここで余り騒ぎを大きくしてはいけないとすぐに自身の荒立っている憤りの感情を自制する。

 軽い咳払いで仁乃が落ち着きを取り戻している間に目の前の男は口を開き始める。


 「俺は転生戦士なんだ。そして俺が殺したコイツは半ゲダツ、なら殺しても文句を言われる理由はない筈だ。アンタ等だって今までゲダツや半ゲダツを葬って来たんだろう?」


 転生戦士として自分が行った行為に問題はないと主張する男だが、そんな彼に対して加江須がすぐさま言い返してやった。


 「確かにお前の言う通りだ。俺たちだってゲダツと戦いそして屠って来た。だが今の半ゲダツの男は明らかにお前と何かを話し合っていたよな? つまりはお前は転生戦士と言う身でありながら敵であるあの男と繋がっていた」


 「おいおいそれをそっち側が咎める気か? 見たところアンタ達と一緒に居るその傘を持っている女の人、気配から察するに人型タイプのゲダツだろ?」


 「………」


 どうやらあの男はもうディザイアの正体を見破っている様だ。確かに純粋なゲダツである彼女と行動を供にしている事は普通に考えれば異色だろう。だがここで退いては会話の主導権を向こう側に握られかねない。だから加江須は敢えて堂々とゲダツであるディザイアが自分たちと何故行動を一緒にしているか、その訳を話す事にした。


 「ここに居るディザイアは確かにゲダツだ。だがこの旋利律市に潜んでいるとあるゲダツを倒すために協力している訳だ」


 「とあるゲダツを倒す為ねぇ…。ゲダツがゲダツを倒すなんておかしくないか?」


 「そうでもないさ。俺たちが倒そうと考えているゲダツはこの旋利律市を根城にし、更には自分以外のゲダツも処理している輩だ。人間や転生戦士だって様々な理由から対立する事だってあるだろう」


 加江須はそう言いながら一切と表情を崩すことなく堂々と話を続ける。その一貫して焦りを微塵も見せない態度が功を奏したかは分からないが一応はこの言い分を相手は信じてくれたようだ。


 どうやらあの男は自分の言い分を聞いて納得してくれたようだ。それなら今度はこっちが深く追求して行こうじゃないか。


 「今度は俺が聞く番でいいよな? 改めて尋ねるがお前はそこで死んでいる半ゲダツと何を話していた?」


 加江須が僅かに目を細めると男は両手を上げたままため息交じりに口を開く。


 「やれやれまるで俺が悪者みたいな構図だな。まあ俺だって変に誤解されるだけならまだしもアンタ等全員を相手に戦いなんて御免だ。俺の目的はある人型ゲダツなんだからな」


 そう言うと彼は天へと向けて上げていた両手を降ろし、足元で動かなくなった骸をつま先で何度も小突きながら全てを話し始めた。


 「コイツはこの町を根城としているとあるゲダツの部下だった男だ。そのゲダツは目下俺たち転生戦士の最優先に排除しなければならない存在だ」


 そこまで話を聞くと加江須は思わず息をのんだ。何故なら自分たちがこの旋利津市へと訪れた理由と同じだからだ。つまりあの半ゲダツは自分たちが睨んだ通り……。

 加江須の表情の変化を見て相手の転生戦士も自分と狙いが同じであると悟ったのかこんな質問をぶつけて来た。


 「恐らくなんだがアンタ等もこの町に潜んでいるとあるゲダツを倒すために訪れたんじゃないのか?」


 「……ああ、そうだ。俺たちはラスボと呼ばれているゲダツを倒すためにここまでやって来た」


 加江須がそう口にすると相手はやっぱりと言う表情でどこか不敵な笑みを浮かべた。

 目的が同一であると知った相手は今まで以上に口調が軽くなりどこか馴れ馴れしく会話を求めて来る。


 「やっぱりアンタ等もラスボ目当てだったみたいだな。俺も神様から願いをもう一度叶えてもらえるようにするために元凶であるラスボをぶっ殺しに来たんだよ。これで俺たちが敵で無い事はもう証明されたよな?」


 「もう一度叶えてもらえるようにって…じゃああんたは一度は願いを叶えた事があるの?」

 

 何となく男が口にした一部分が気になったのでその事について仁乃が深く追求してみると相手は頷いてその通りだと返す。


 「ああ、一度だけ俺は願いを叶えてもらった事がある。膨大な量の金を手に入れて生涯遊んで暮らせる額が俺の口座にはあるぜ。少なくともこれで一生職に就かなくても遊んでいける程になぁ」


 そう自慢げに自分の戦歴を語った男であるが加江須の後ろで話を聞いていた仁乃達はあまりいい顔はしていなかった。と言うのも目の前の男は完全に自分の我欲を第一優先としているタイプだ。身の回りの被害を生み出したくないと言う理由から戦っている加江須達とは違う。だがそもそも願いを叶える権利は無償で働きたくないと言う人物達の為の措置だ。それにどんな理由でもゲダツと戦うのであれば責め立てるわけにはいかない。

 仁乃達の複雑そうな表情を見て男はニヤけていた表情がどこか呆れた様なものへと変わる。


 「おいおい後ろのアンタ等はなんて顔してるんだよ? 自分の利益を考えて戦う事がまさか許せないって言うつもりは無いよな?」

 

 「いやそんなつもりは無い。仁乃たちだって別に文句は無いだろう」


 加江須が首だけ背後に向けてそう問いかけると彼女達も無言で頷いた。

 まあ気持ちは分かる。確かにこうまでハッキリと損得を考えて動く輩は好ましく思えない部分があるのだろう。特に大切な仲間を救う為に動いている今は猶更だ。だが別に相手は特にルールを犯している訳でもなんでもない。むしろこの考え方が一般的な転生戦士と成った者の価値観なのかもしれない。

 少し場の雰囲気が淀み始めて来た事を敏感に察知した加江須は強引に話を切り替える。


 「動機云々はさておき、あんたが殺したその半ゲダツはラスボの手下で良かったんだよな? でもなんでソイツと敵であるあんたが繋がっていた?」


 「そりゃ簡単な事だ。コイツはボスであるラスボに忠誠心なんて微塵も持ち合わせていなかっただけの事だ」


 どうやら半ゲダツの中にはラスボを疎ましく思っている者も一定数存在するらしい。その為にこの町にやって来た転生戦士に裏で秘密裏にラスボに対しての情報を提供する者も居るのだ。ラスボの事を疎ましく思っている輩からすれば陰でラスボを仕留めてくれれば残された自分たちは自由に出来るのでむしろありがたいと思う者もいるのだ。何しろ半ゲダツはゲダツの血を取り入れて変容した存在。そのためにその血を渡した張本人のゲダツには逆らえない。そんな事をしようものなら血の張本人であるラスボの手によってあっさり殺されるからだ。一度でもゲダツの血を取り入れてしまえばその者は完全な木偶へとなり下がってしまう。

 加江須の視線の先で首を奇妙な方向へと捩じって事切れている半ゲダツの男は恐らくそんな傀儡同然の生活から抜け出したかったのだろう。それが転生戦士に情報だけ奪われて殺されるとは何とも無残な……。


 「(とは言えコイツだって自分からラスボの血を受け入れたんだろうな。そう考えるとこの末路も自業自得なのかもな…)」


 別段自分は聖人君主と言うタイプではない。少なくともラスボの様な輩の力を望んだヤツに同情なんてない。


 そんな事を考えていると相手の転生戦士は更に言葉をつなげて来た。


 「相手のラスボの情報を得るために俺はまず最初にヤツの下に付いている半ゲダツと接触を図ったと言う訳だ。この足元で死んでいる間抜けもその内の1人に過ぎない。どうだ、ここまで正直に話したんだから少なくとも俺が味方だって事は信じてくれたか?」


 相手の男はそろそろ信用して欲しいもんだと軽口を吐いている。

 全てを聞き終わった加江須たちは互いに顔を見合わせた後、最後に1つだけ質問を投げかける。


 「今更だがあんたの名前を教えてくれないか? 名前も知らないヤツなんてそもそも信用しろと言う方が無理があるだろう」


 「ははっ、それもそうだ。それじゃあ自己紹介と行きますか」


 確かに名前も素性も知らないヤツなんておいそれと信用はできない、それは当然の道理だろう。そう思った男は素直に自分の名を名乗り始める。


 「俺の名前は金森銭(かなもりぜに)だ。まあよろしく頼むぜ同業者さん達」


 そう名前を名乗る男はニカッと白い歯を見せながら相も変わらず不敵に笑うのであった。



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