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失恋した直後に死んだら俺にハーレムができました。恋人達は俺が守る!!  作者: ゆうきぞく
第十一章 ラスボ討伐編 その1
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到着早々から始まる尾行


 電車に揺られて目的地である旋利律市へと到着した加江須達は予定通りにまずは以前に足を運んだ繁華街へと向かう事にする。今自分たちの居る駅からあの繁華街付近へと向かうには徒歩では時間が掛かり過ぎる。かと言ってこんな人の目の多い場所で人知を超えた身体能力を披露するわけにもいかないだろう。現に以前に訪れた際にはタクシーを用いていた。


 「よし、みんな聞いてくれ。俺たちは今旋利律市へとやって来たがラスボが何処に居るかまでは解らない。前もって計画していた通りまずは以前訪れた繁華街へと向かう。その為にまずはタクシーを拾って……!?」


 駅の付近に停車しているタクシーに2組に分かれて乗り込むように指示を出そうとしていた加江須だが、何かに気付き彼は最後まで言葉を言い切る前に口を止めた。

 いきなり口を閉ざせば何があったのか疑問符を浮かべるものであるが誰も疑念を感じている様子はない。何故なら彼が言葉を区切った理由が理解できたからだ。


 「ねえ加江須あの人って……」


 仁乃が傍によって来て加江須に耳打ちして来た。

 彼女が何を言いたいか理解できてる彼は小さく頷きながら代わりにその先を口にした。


 「微かに感じるこの気配は恐らく奴は半ゲダツだろうな」


 この旋利律市にはラスボの手で多くの半ゲダツが生み出されており、その数は間違いなく自分の住んでいる町以上だろう。しかもラスボからの血を自分から望んで受け入れる輩ばかりなので質が悪い。この市内に侵入してから早々に遭遇してもおかしくは無いだろう。だがこの展開は加江須たちからすれば好都合かもしれない。


 「これは好都合だな。俺らはラスボのクソ野郎の居場所を把握できていねぇんだ。あいつがもしラスボの手で半ゲダツにされたヤツなら何かしらの情報を持っているかもしれねぇな」


 そう言う氷蓮はそのまま遠巻きに歩いている男を確保しようと動き出そうとするが、その出鼻を仁乃が押しとどめた。


 「何で邪魔すんだよ仁乃。はやくあの野郎を捕まえて吐かせねぇのかよ?」


 「冷静になりなさいよこのバカ。こんな人の多い場所で捕まえて騒ぎにでもなったらどうするのよ」


 彼女の言う通りここは多くの人間が行き交う駅の真ん前だ。こんな所で捕り物などしようものなら大勢の人間に目に触れることになる。


 「どうやらアイツもこの駅前をあのまま通り過ぎて行くみたい。周囲に人の気配が薄れたタイミングを見計らって捕えた方が良いわ」


 仁乃の言い分を聞いた氷蓮は渋々ながらも首を縦に振って頷いた。周りのメンバーも特に異論はないようで無言のまま頷いていた。そんな中で加江須は内心で仁乃に対して感心していた。


 「(仁乃が氷蓮のことを引き留めてくれて助かった)」


 もしも仁乃が制止の言葉を投げかけなければ氷蓮に便乗して自分もあの男を即刻確保しようとしていたところだ。やはり胸の内では一刻も早く黄美を生き返らせてあげたいと言う気分が先走っているようだ。

 自分の思慮の浅さに反省しつつ目を付けた男の後を追う加江須たち一同。


 「…アイツ何処に行こうとしているんだ?」


 しばし距離を置いて尾行をしていたのだが視線の先に映る男の行動を読み切れない。何故なら彼はどこか挙動不審でチラチラと自分の近くの人間の様子を窺っているのだ。あの様子はまるで尾行者が居ないかどうかを疑っているかのような……。


 「ね、ねえ加江須君、もしかして私たちの尾行がバレているんじゃないの?」


 自分たちが後を付けている事がもう気付かれているのではないかと不安からそう問いかける余羽だったが、そんな彼女の事をイザナミが安心させようとする。

 

 「それは恐らく大丈夫だと思います。確かに周辺の様子を訝しんでいる様ではありますが私たちに気付いている様子はありません」


 イザナミの言う通りあの男は自分たちの存在に気付いている様子はない。だがあの挙動不審の様子は明らかに普通ではない。まるで誰かに後を付けられると不味い場所にでも向かっているかのようだ。


 それからしばし細心の注意を払って尾行を行っていると周辺よりも一際高いビルの間にある路地裏へと男は入り込んで行ったのだ。


 「隙間の方へと入って行きましたね。皆さん少し足を止めて下さい」


 そう言うと白は両手に神力を集約させて能力を発動させる。すると彼女のかざしている両手のひらの間から一瞬激しい発光がした後にドローンが出現した。

 何もない空間からいきなり現れたドローンに思わずディザイアは感嘆の声を漏らす。


 「へぇ面白い力ね。これが噂に聞いていた『空気から物質を生み出す特殊能力』ねぇ。色々と応用が利かせれそうな便利な力ね」


 この地球上に蔓延している身の回りの無限と言えるほどに存在する空気、ソレを白の持つ特殊能力は形ある物質に変換する事が出来るのだ。それは銃や刀の様な戦闘の為の武器に留まらない。今回の様に相手の行動をひっそりと観察する監視の為の道具も生み出せる。


 「先程からあの人の行動は挙動不審な部分があります。少し距離を置いて様子を窺いましょう」


 そう言うと彼女は能力で作り出したドローンを遠隔で操作し始める。このドローンは以前にプールでも活躍した物であり、白の視界とリンクしている。

 ほとんど音もなくすいーっと男の後を追ってドローンが路地裏へと上空から入り込んで行った。


 路地裏へと入り込んだドローンは上空から男の後を尾行し続けていたが、すぐにその動きは空中で静止する。この道へと入ってすぐに尾行対象の男がすぐに足を止めたからだ。カメラに映るやり取りが操縦者の白にそのままリアルタイムで流れ込んで来た。


 『……時間通りにやって来たぞ。さあ早く報酬をくれよ』


 『まずはお前の持っている情報が先に決まっているだろう』


 カメラが捉える光景には二人の人物が映り込んでいた。その内の1人は言うまでもなく今まで尾行をしていた半ゲダツと思しき男だ。だがこの路地であらかじめ待ち合わせをしていたのかカメラには新たな1人の男性が向かい合って立っていた。どうやらあの尾行していた男はこの男と密会する為に周囲を警戒して向かっていたようだ。


 「(相手の男はゲダツの持つ下卑た気配を感じない。しかし彼から感じるこの気配は…)」


 転生戦士となってから白も何度も命懸けの戦いを経験しており、そのために彼女の感覚はかなり研ぎ澄まされている。その結果彼女はゲダツ以外の気配も大まかではあるが感じ取れるようになったのだ。

 カメラを通して映り込んでいる新たな男から感じるこの気配は自分たちと同じ――転生戦士の持つ神力なのだ。


 「これは…どういう事ですか…?」


 ドローン越しに感知出来た神力から相手がただの一般人でないどころか自分たちと同じ転生戦士の可能性まで出て来た。流石に動揺を隠せず思わず体に反応を表していると加江須が声を掛けて来た。


 「おい白、あの路地裏から神力を持った人間の気配を感じる。ドローンに映っている映像はどうなっているんだ?」


 加江須達も夏休み中の特訓を経て神力を感知できるまでに成長を果たしている。それも彼等を指導していた人物は元神であるイザナミなのだ。教官が優秀である為に短時間で今まで以上に神力に対する精密な扱い方や感知能力も全員が上昇していた。それ故に加江須だけでなくその後ろに並んでいる仁乃たちも路地裏に居る人物に対して怪訝な顔つきをしながら疑問符を頭の上で浮かべていた。


 「何で半ゲダツと思っていた男のすぐ傍から神力を持っている輩が居るんだよ? おい白、あの路地で何が起きてんだよ?」


 加江須に続いて氷蓮も一体カメラにはどんな光景が映し出されているのか問うてくる。

 カメラには何やら二人が怪しげな密談を交わしている事を告げるとディザイアがおもむろに歩き出し始めた。


 「こんな所で駄弁っている暇があるなら直接聞いた方が早いんじゃないの。転生戦士と半ゲダツの密会なんて如何にも怪しいじゃない」


 そう言いながらずんずんと二人が曲がった路地裏へと彼女は入り込んで行った。その後に加江須たちも少し遅れて後を追った。

 路地裏に入ると白がドローンで捉えた通りの光景がそこには広がっていた。


 「こんな陰鬱な場所でコソコソと隠れて何の会議? 私も混ぜてくれないかしら?」


 「なっ、誰だお前等!?」


 いきなり背後からディザイアに声を掛けられて思わず上ずった声を上げる半ゲダツと思しき男。

 もう片割れの男の方は多少驚いた表情をしてはいるがそこまで過剰な反応をしてはいなかった。だがディザイアの姿を見て一瞬だが目を細めた。


 「どうやらお前は尾行されていたみたいだな。誰にも気づかれずに来ただなんてよく言えたな」


 転生戦士と思しき男は半ゲダツの男に非難めいた顔を向けながら不満をぶつけていた。その責められるような物言いに少し腹が立ったのか横目で睨む半ゲダツの男だったが、今は目の前に現れた集団の方に意識を優先させる。

 一方で一番先頭に立っていたディザイアを軽く押しのけて加江須が前に立つと二人へと問いを投げかける。


 「お前たちが一般人で無い事は分かっている。そっちのお前は半ゲダツ、そしてもう一人のお前は転生戦士なんだろう。本来水と油のお前たちがこんな人目の避けた場所で何の相談をしているんだ?」


 「何でお前等にそんな事を話さなきゃならないんだよ! テメェ等には関係ないだろうが!!」


 いきなりやって来て話に割り込んで来た事に怒りを露わにして感情を剥き出しに噛み付いて来る半ゲダツの男。

 だがそんな彼とは違いもう一人の男はニヤリと笑うと目の前でいきり立つ男の肩を掴んで引き留めた。


 「いやいや少し落ち着けよ。コイツ等はどうやら〝俺と同じ目的〟を持っていそうだ」

 

 「ああ? 何の話をして…かひゅッ!?」


 振り向いて何の話をしているのかと聞こうとした半ゲダツの男であったが彼が首を後ろに向けようとするよりも早く首をへし折られた。

 口から血泡を吹きながら半ゲダツの男は骸となりその場に崩れ落ちていった。


 「ひっ、な…何で…?」


 いきなり味方の首をへし折り殺した男に恐怖から後ずさる余羽。

 他の皆もそれぞれ体に力を入れて迎撃の体制を取る。だがそんな加江須達に男は手を向けて早まるなと言って来た。


 「そう身構えるなよ。俺はお前たちと同じ転生戦士だ。少し話をしようじゃないか」


 そう言うと男は自分が無抵抗である事を示すかのように両手を頭の上にあげて加江須達へと語り始めるのであった。



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