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失恋した直後に死んだら俺にハーレムができました。恋人達は俺が守る!!  作者: ゆうきぞく
第十一章 ラスボ討伐編 その1
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突入前夜

 

 加江須達のラスボ討伐の為の計画を練り続けて気が付けば外はもう暗い漆黒の世界へと包まれていた。


 「もう随分と暗くなってきたなぁ…」


 窓の外から見える景色を見て愛理が小さな声でそうぼやいていた。


 今回は彼女は旋利津市へと突入はしないのがだからと言って決して無関係ではない。旋利津市へと自分たちが出向いて居る間に彼女も彼女で皆の留守を守らなければならないのだ。元々ディザイアから聞いた話ではラスボは焼失市にも領土を広げようと目論んでいた輩だ。であるならば自分達が留守の間にこの町を守る事は下手をすれば直接乗り込むよりも重要な仕事かもしれない。


 「本当におひとりで大丈夫ですか愛理さん?」


 どこか不安が拭いきれない顔で白が愛理へと留守を守るのは1人で大丈夫かと尋ねる。

 ちなみに今まで苗字で呼び合っていた加江須達と白は今は互いに名前で呼び合っている。これは愛理が一緒に戦うならもっと気を抜いても良いのではないかと言う意見から来たものだ。だが白とは元々面識もあり同じ転生戦士同士で名前呼びで馴れ馴れしい雰囲気も違和感はない。


 「それじゃあ本格的に乗り込むのは今週の土曜日からだ。朝早くから乗り込もうと思う」


 加江須がそう言うと周りの皆は揃って頷いた。

 当日の作戦としてはまずラスボの手先を捜索する事から始めるつもりだ。そもそものラスボの居場所も把握できていない以上はまずはヤツの潜伏先を見つける事が先決だ。その為に部隊を二手に分けてまずは以前に足を運んだ繁華街へと最初に向かおうと考えている。初めてあの場所に足を踏み込んで加江須達はラスボの血で半ゲダツと成ったチンピラと遭遇している。

 一度足を運んでいるディザイアはクスクスと周りの面子を見つめながら口を開いた。


 「やっぱり二手に分かれて捜索するなら一度あの物騒な繁華街に足を運んでいる私とそこの彼がそれぞれ纏め上げ役として先頭に立つべきよね。でも果たして私と一緒に行動したいと思える娘がこの場に居るのかしら?」


 彼女の言う通り二手に分かれるのであれば以前に旋利津市に訪れている加江須とディザイアが先頭に立って案内をすべきだろう。だが加江須はともかくディザイアの後に続こうとする者は率先してはこの場に居ないだろう。いくら協力関係とは言え相手がゲダツであればその嫌悪感も無理ないかもしれない。

 だがディザイアのからかう様なセリフに対してイザナミが軽く手を上げて自分がディザイアのチームに行く事を告げた。


 「二手に分かれた場合は私がディザイアさんの方に付きます」


 「あら以外ね元神様。この中であなたが一番私と行動を共にしたくないと思っていたけれど」


 「今の私は地上に堕ちた人間ですよ。それに…いざとなった時にあなたを抑える為にも立候補しました」


 基本的には相手より下手に出るタイプのイザナミであるが珍しく相手に鋭い眼光を向けている。今はただの人間だと口にしてはいるがイザナミは元神様だ。やはり人型ゲダツと手を組むのは思う所があるのかもしれない。そして元神であるが故にこの中でゲダツの恐ろしさを一番強く理解しているのだろう。


 「何だかこのメンバーの中であなたが一番私を信用していない様に見えるわね。やっぱりゲダツは信用できない?」


 どこか含んだ笑みを向けながら目を細めてイザナミに問いかけるディザイア。

 居間の空気に少し圧が加わり愛理や余羽が僅かに冷や汗をかく。そしてディザイアから直接的に重圧的な視線を向けられているイザナミも同じく目を細めて眼光に鋭さを増させる。


 「加江須さんがあなたを今回の仲間と認めたと言うのであれば共に戦う事に異論はありません。ですが…もしこの戦いで裏切るようであるのならば……」


 そこまで口にするといつもの穏やかな彼女の雰囲気が完全に一変して針の様な鋭い眼力でディザイアの事を射ぬいた。


 「とにもかくにもよろしくお願いしますねディザイアさん」


 「ええこちらこそ。ふふ…流石は元神様ねぇ。その気になればそんな怖い顔もできるのね」


 しばし笑みを浮かべるディザイアと鋭い視線のイザナミが向かい合った後、空気が弛緩したタイミングを見計らって加江須はその後の旋利律市での動きを纏めて話し合いは何とか騒動も無く無事に終わった。




 ◆◆◆




 旋利律市突入の為の大まかな作戦、そして突入メンバーを整えた加江須達は気が付けばもう旋利律市への突入の前日まであっという間に時間が経過していた。明日に備えて英気を養う為にそれぞれが今頃は自宅で体を休めているだろう。

 明日から祝日を含めて3連休、学生である彼等が旋利律市へと突入する日程は学園が休みのその日に決まった。まあもちろん最悪学園をサボってでも旋利律市へと向かうつもりではある。だが学生と言う身分である以上は不用意に学校を休めない。何故なら下手をすれば学園を休んだことが親に知れ、そして自分たちが転生戦士である事が漏れる可能性が否めないからだ。自分たちとゲダツとの戦いは陰の世界の戦いだ。表の住人に知れてはならない。


 「………」


 明日に備えて今日は早く就寝しようと考えていた加江須であるが何故だか中々眠れずベッドの近くの窓際をぼーっと見つめていた。

 万全な状態で旋利津市へと突入する為にはきっちりと睡眠を取らなければならない。そう頭では理解できているが中々眠気に襲われない。


 「くそ…緊張でもしているのか?」


 確かに明日の戦いは今までの中で一番大きな戦いになるだろう。だが眠れない理由は恐らくそれだけではないのだろう。もしもこの戦いでラスボを倒せなければ最愛の人である黄美を生き返らせる事も出来ないだろう。それこそが一番自分が緊張を抱いている理由だろう。

 漠然とした不安から気持ちが落ち着かないでベッドの上でゴロゴロと何度も体の位置を左右に置き換えていると部屋の扉をノックされた。


 「……はーい」


 こんな夜遅くに部屋の扉をノックされるのは少しおかしな話だが思わず返事をしてしまう。

 入室を許可すると扉を開けて部屋へと入って来たのはイザナミであり、彼女はどこか不安そうな顔をしながら自分の眠っているベッドのすぐ傍まで寄ってくると顔を寄せて話しかけて来た。


 「眠れないみたいですね加江須さん…」


 「…ああ、そう言うイザナミだってそうなんじゃないのか? こんな夜遅くに俺の部屋に来たんだからさ」


 一瞬だけそんな事はない、なんて強がりを口に仕掛ける加江須であったがすぐに本音を口にした。こんな時までやせ我慢なんてするだけ恥ずかしいだけだと思ったからだ。

 素直に弱音を吐いた彼にイザナミは力なく笑うと私もです、と言ってくれた。


 「今までの神としての力を封じられ、しかも黄美さんを生き返らせれるか否かの重要な戦い。流石に私も緊張していつも通りには眠れません」


 そう言いながら彼女は布団をめくると自分のベッドの中に潜り込んで来た。

 

 「イザナミ…?」


 「すいません。その…今日はご一緒に寝ても構いませんか? こうしていると不安も拭えそうなので……」


 少し頬を染めているイザナミであるが布団の中で自分の手を握ってくる彼女の手を握り返して見ると微かに震えていた。先程の言葉通り明日の戦いに対して不安を抱いているのだろう。だが無理も無いだろう。今まで神界で過ごして来た彼女が下界で大きな戦いの赴く事になったのだ。それもこの地上で仲が良くなった少女の未来もかかっている戦いなのだ。


 「ごめんなさい。明日は大事な決戦が控えているのにこんな情けない姿を見せたりして。元神がみっともないですよね」


 元々は神でありながらの体たらくに謝罪を述べるイザナミに対して加江須は布団の中で彼女の手を強く握り返しながら口を開いた。


 「戦いに赴く事に恐怖を感じないヤツの方がおかしな話さ。俺だって今のお前と同じで怖くて怖くて仕方がないよ」


 今まで何度もゲダツと戦って来たからと言って次の戦いに恐怖を感じないわけがないのだ。もし命懸けの戦いに対して恐怖と言う概念を捨て去ってしまえばそれは戦闘狂の類になるしかない。そうあの狂華の様に。ましてや今回の戦いに勝利できなければ大切な人を蘇らせる事も叶わない。そう考えると恐怖を感じないはずが無い。


 「気を付けてくれよイザナミ。あのディザイアは理性があるとは言えゲダツだ。以前に共闘した際にその事を強く思い知らされたよ」


 「はい、正直に言えば私もまだ完全には彼女の事を信用しきれていません。ですのでいざという時は私が力づくで押さえます。そうならない事を願いますが…」


 同じ布団の中で互いに手を握り合いながら話し合う加江須とイザナミ。

 愛する者同士での会話は明日の戦いに備えて緊張していた心を解し、気が付けば両者隣に居る者のお陰で眠気が襲って来た。


 「加江須さん…絶対にラスボを倒して黄美さんを助けましょうね……」


 そう言うとスイッチでも切ったかの様に一気に眠りの世界へと誘われるイザナミ。そのまま規則正しい寝息を立てて彼女は眠りについた。

 そんな彼女の頭を一度優しく撫でて加江須も最後に一言口にして眠りについた。


 「ああ頑張ろう…な…」


 そう言い終わると加江須も安堵したかのような表情でイザナミの手を優しく握りしめながら眠りへとついたのであった。




 ◆◆◆




 旋利律市の中にいくつもあるアジトの1つでは転生戦士である形奈は一人の青年と向かい合って重要な話をしていた。


 「なるほどな。それがついさっき転生の間に呼ばれてお前が神から言われたことか」


 「ああ、どうやら私がお前と手を組んでいる限りはもう新たに願いを叶える事を許さないとのことだ」


 形奈は転生の間に呼ばれ神からラスボと手を組む限りは願いを叶えてはやれないと告げられた事を目の前のラスボ本人に話していた。しかもどうやら他の転生戦士もラスボ討伐までは願いを叶えられないらしい。


 「どうするんだ? このままだとお前を狙って多くの転生戦士がここへ攻め込んで来るぞ」


 形奈がこのままでは流石に面倒ごとになるのではないかと疑問を投げかけると彼は面倒そうな顔をしつつ、溜め息の後にこう口にした。


 「仕方がない。とりあえず今散らばっている〝転生戦士や人型ゲダツ〟を呼び戻すぞ。話はそれからだ」


 

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