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失恋した直後に死んだら俺にハーレムができました。恋人達は俺が守る!!  作者: ゆうきぞく
第十一章 ラスボ討伐編 その1
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旋利津市突入前の下準備 2


 旋利津市を根城にしているラスボ討伐の為に乗り込むことを決意した加江須たちであるが、すぐに突入する様な真似は避けて置く。何しろ討伐対象の人型ゲダツのラスボとは加江須たちは未だに相対していない。しかも相手はラスボだけではないのだ。そのラスボに何故か協力的な転生戦士の形奈、そしてラスボの血を取り込み半ゲダツとなった下っ端達。現状把握しているだけでも戦力としては相手の方が遥かに上回っている。しかも厄介な事にこれはあくまで自分たちが把握している限りの情報だ。もしかしたらまだ協力している人型ゲダツ、転生戦士の存在が無いとは言い切れない。

 だからこそ加江須たちの次の行動方針は戦力の補充と言う事となる。相手の戦力が不透明な部分が大きいのであればこちらも味方を増やすまでだ。相手は人型まで進化を果たした上級ゲダツ、石橋を叩いて渡る位は当たり前の行動だろう。


 加江須たちの仲間集めはそれぞれ分かれて行われる事となった。あまり長々と時間をかける訳にもいかない。何しろ敵であるラスボは自分の住んでいる焼失市にも手を伸ばしつつある。あまり敵に時間を与えてしまえば相手も戦力を増加して行ってしまう事は目に見えている。転生戦士の味方は増やしにくくとも半ゲダツの雑兵はその気になればいくらでも補充できるはずだ。


 加江須からの報告の翌日から皆は行動を起こしていた。それぞれが協力者を集めようとする中、一番最初に味方を確保できたのは氷蓮であった。

 彼女は加江須の家からマンションに戻るとその日のうちに同居人である余羽へと事の顛末を伝えた。


 「……という訳だ。悪いけどお前の力を貸してくれねぇか?」


 「そ、そんな事態になっていたの?」


 マンションへと戻って来た氷蓮から聞かされた話に余羽は驚きを露わにしていた。まさか自分の知らない所で加江須たちがそんな事態に陥っているとは思いもしなかった。しかも彼の恋人の1人である黄美が死んでいるなんて考えもしなかった。加江須たち程ではないにしても余羽にとっては決して赤の他人と言う程薄情な関係でもない。話を聞いていて思わず胸がズキリと痛んだ。

 しかも一番の問題は黄美の死ではない。彼女が死んだ事は悲しき事だが転生戦士の願いを叶える権利を使えば生き返らせると思っていたが、話を最後まで聞いて事はそう単純なものでない事を知る。

 

 「じゃあそのラスボを倒さない限りは私たち転生戦士は願いを叶えられないって事?」


 「ああ、そーゆーこった。願いを叶える為に転生の間に呼び出された加江須がヒノカミって言う神様から直接そう言われたそうだぜ」


 「……そっかぁ」


 氷蓮から話を聞き終わった彼女はしばし俯き、そして何かを決心した様な目を目の前の氷蓮に向けると彼女の手を掴んでこう答えた。


 「勿論協力するよ。他ならぬあんたの頼みだし。それに…私だって黄美さんには生き返ってほしいし」


 「ありがとな…」


 自分の手を固く握ってくれた彼女に対して氷蓮は深く頷き短い礼を述べる。たった5文字の短い感謝の意ではあるが彼女が心から礼を述べている事が深く伝わってくる。

 愛理の本音としては危険な人型ゲダツとの戦いは不安も恐怖もある。だがそんな感情よりも目の前の同居人である少女が苦しんでいる現状を放置する事が出来なかった。


 「(私も随分とほだされたなぁ…)」


 思い返せば一人で暮らしをしていたこの空間にずかずかと入り込んで来た氷蓮であるが、いつしかこの空間に彼女が居る事が当たり前となっていた。だからこそ目の前の彼女が柄にもない困窮した表情を浮かべていると手を貸したくなってしまう。そう考えれば余羽の協力する一番の理由は氷蓮の存在が大きいのかもしれない。


 「(てっ、何を考えてるんだろうね私は…)」


 自分の頭の中に浮かんできおかしな考えを払拭した余羽は他の協力者の存在について氷蓮に尋ねてみた。


 「でも私1人だけ加わってもそこまで勝率が上昇するものなの?」


 余羽の持つ特殊能力はかなり応用性のある力と言えるだろう。彼女の両手で触れた物は修復がなされる。それは回復にも転用が効く。たとえ深手を負っていても命さえ有るのであればその傷は綺麗に元通りに出来る。だが残念ながら今の黄美の様な遺体の状態では損傷した肉体は綺麗に修繕できるが失われた魂までは復活できない。だがそれでも強力な能力である事は間違いないだろう。だが純粋な戦闘能力については少し心元ない点がある。勿論一般人などとは比べようのない強さだが、転生戦士や人型ゲダツと比べると少し劣る部分は否めない。それは当の本人である余羽自身も理解している。


 「私も久利君の家…いや異空間でトレーニングはしたけど氷蓮なんかと比べるとそこまで役に立つかどうか……」


 こうして口に出すと自分の不甲斐なさをひしひしと痛感して情けなさを感じる。元々最初の頃の自分はゲダツの討伐を率先して行おうとは思わず、それどころか面倒ごとに関わるまいとしていた側の怠惰な人間だ。


 自分の強さに自信を今一つ持てない余羽であるが、そんな彼女の肩を軽くバシバシと叩いて活を入れる氷蓮。


 「お前は少し自分に自信を持てよ。自分で思っているよりも強くなっているぜお前は。前に夏休み中に俺と組み手をした時に大分強くなっていたじゃないか」


 確かに氷蓮の言う通り余羽の戦闘能力は当初に比べて上がっている。少なくとも愛理以上は強いだろう。


 「それでも…う~ん……」


 氷蓮にそう言われると少しはモチベーションも上がるがそれでも不安は拭いきれない。だがそんな彼女をこれ以上不安にさせまいと氷蓮は続けてこう言った。


 「心配しなくても味方はお前以外にも居るよ。明日は仁乃とイザナミの二人が顔見知りの転生戦士に会いに行く予定だからな」




 ◆◆◆




 氷蓮が余羽からの協力を得たその翌日の事、仁乃とイザナミの二人は神正学園の校門前まで訪れておりある人物と話しをしていた。


 「わざわざ時間を割いてくれてありがとうございます。武桐白さん」


 「ごめんなさいね武桐さん、わざわざ呼び出したりして。でもどうしてもあなたと早急に話したい事があったの」


 「いえお気になさらず。実は私もあなた方とは是非ともお話しが、共感しておきたい事が……」


 仁乃とイザナミにいきなりの呼び出しをされた事に頭を下げられたが、それに対して白は何の問題もないと告げる。

 ちなみに今日は祝日であり、神正学園に呼び出したのはあまり接点の無い彼女と一番待ち合わせに都合の良いと判断した場所が彼女の母校であったと言う理由からだ。


 「しかし…事前に連絡を受けて事情は把握していましたがイザナミさん…本当にこの下界に降りて来たんですね。それも久利君の恋人にまで発展しているとは……」


 以前にイザナミと顔を合わせていた白は元々は神である彼女がこの下界に移住していると電話越しで加江須から聞いた昨日は驚いたものだ。

 まじまじとイザナミの顔を見つめる白であるが、そんな彼女の視線を仁乃は前に立って遮った。


 「悪いんだけど今は正直時間が惜しいの。イザナミさんが地上に降りた詳しい詳細については後日と言う事でお願いできるかしら?」


 「ああすいません。イザナミさんも顔をまじまじと見つめ少々不躾でしたね」


 「あ、いえいえ! お気になさらずに!!」


 別段不快感を感じてはいなかったので頭を下げられてむしろ慌ててしまうイザナミ。そんなどこか緊張感の抜けたやり取りを一通り終えた後、仁乃は白とコンタクトを取った理由について話を始めた。


 現在転生戦士がゲダツを討伐する為の最大理由である願いを叶える権利の獲得、その恩恵がラスボと呼ばれる人型ゲダツに協力する転生戦士のお陰で一時凍結状態となっている。再び恩恵を受ける為には全ての元凶たるラスボを討伐しなければならない。


 「……と言う訳で私たちはラスボの潜伏している旋利律市に乗り込もうと考えているわ。そうでなければ死んでしまった黄美さんも生き返らせれない」


 「なるほど…あなたたちも〝私と同じ思い〟でしたか…」


 「え…同じ思いって…」


 てっきり自分たちの事情を聞き多少の驚きはあるものだと思っていたが、予想に反して白は冷静であった。と言うよりもどこか納得のしている表情をしているのだ。

 仁乃が何故今の話を聞いてもそこまで動揺が無いのか不思議に感じていると、先にその理由の答えに到達したイザナミが口を開いた。


 「既に知っていたのですね武桐さん。今仁乃さんが話した事情について」


 「ええ、数日前にゲダツ討伐の功績が一定を超え転生の間に呼ばれました。しかしそこで私は願いを叶える事はなく今の仁乃さんが話した内容をそのまま伝えられました」


 どうやら加江須と同じように彼女もまた神の1人から事情を説明されていたようだ。確かにこの話は加江須だけが限定的に聞かされたものではない。転生の間に呼ばれた者ならば皆が聞かされているだろう。

 妙に落ち着いている白の態度に納得をする仁乃であるが、次に気になったのは彼女が口にした〝私と同じ思い〟と言う発言であった。


 「ねえ武桐さん、同じ思いってどういう事か聞かせてもらえる?」


 「正にそのままの意味ですよ。私も近々旋利津市へと足を運ぼうかと目論んでいました。まあ私の場合はラスボと呼ばれる人型ゲダツの討伐と言うよりも敵情視察と言った方が正しいでしょうが」


 加江須と同じく事情を把握していた彼女は近々一度旋利律市への調査を考えていた。しかし何分彼女は加江須の様な転生戦士同士のチームを組んでいた訳ではない。

 

 一応は同じ神正学園に転生戦士の同僚が居るのだが、正直なところあの薄黄色の髪をした少年を信用できるかどうか分からなかった。

 だから彼女は敢えて1人で旋利津市に入り込もうと考えていた。


 「私も転生戦士がゲダツと本格的に共闘をしているのは好ましい状況とは思えませんでした。そこで単身様子を探ろうとしていたのですが……」


 「そうだったの。でも…それなら…」


 仁乃が全てを言い切る前に白はゆっくりと頷いた。


 「旋利律市への攻め込みには是非とも私も協力させてください」


 こうして思いのほかあっさりと白に協力を取り付ける事が出来た仁乃とイザナミだが、この同時刻に加江須もまたある人物に協力を申し出ていた。


 加江須の自宅には1人の女性が彼から呼び出されて訪問していた。


 「そう言う訳だ。お前の力を貸して欲しいディザイア」


 「ふふ、転生戦士の間では随分と面白い展開になっている様ね」


 怪しげな笑みと共に彼女はまるで小馬鹿にするかの様な笑みを加江須へと向けるのであった。



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