表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
失恋した直後に死んだら俺にハーレムができました。恋人達は俺が守る!!  作者: ゆうきぞく
第十一章 ラスボ討伐編 その1
240/335

旋利津市突入前の下準備


 「ヒノカミはこう言っていた。人型ゲダツであるラスボを討伐しなければ願いを叶える権利を転生戦士達に受理するべきではないとな」


 「じゃ、じゃあ何よ。あんたが以前話していた旋利津市に居るそのラスボとか言う人型タイプのゲダツを倒さないと黄美さんを生き返らせれないの?」


 加江須の口から出て来た言葉を聞いて仁乃が少し焦りを見せていた。

 もしも彼の言う通りであるならこの町に居るゲダツを率先して何体も倒しても無意味という事になる。


 「……ある意味納得できる話です」


 そう口にしたのは元神であるイザナミであった。

 今すぐにでも黄美を生き返らせて上げたいと言う気持ちはこの場に居る皆と同じだ。だが彼女も元々は転生戦士を生み出していた側の存在だ。そして神が転生戦士を生み出すのはゲダツと言う悪意を排除する為、その見返りとして願いを叶える権利を与えている。その報酬がゲダツの為に利用されては本末転倒だろう。


 「神々にとってゲダツは殲滅すべき対象です。そのゲダツに自分達が遣わせている転生戦士を利用される事は甚だ受け入れられないのでしょう」


 「じゃあ…やっぱりラスボとか言うゲダツを倒さない限りは……」


 「ええ、黄美さんは生き返らせれないと言う事です…」


 仁乃の言葉に対してイザナミは認めたくはないと言った苦い表情で小さく頷く。


 死んだ黄美を生き返らせる事が思った以上に難解である事を理解した仁乃たちは一気に表情に影が差していく。

 だがそんな中で加江須だけは力強い瞳をしたままゆっくりと立ち上がり、沈んでいるこの空気を一気に払拭するかの様に声を張って口を開いた。


 「だが黄美を諦めるなんて選択肢なんてあるはずがない。俺は必ず彼女を生き返らせる。その為には旋利津市に潜んでいるラスボを打ち取る」


 黄美を生き返らせる事が一番の理由であるが、そもそもラスボとは少なからず因縁もある。かつてディザイアと共に共闘して旋利津市に乗り込んだ際には彼女からはこんな話も聞かされているのだ。


 「黄美を生き返らせる為と言うのはもちろんだが、そもそもラスボはこの焼失市にも魔の手を伸ばし自分の支配下に置こうと言う目論見があるみたいだしな。どちらにせよこのまま放置してくのは危険だと思っていた。それにそのラスボと協力している転生戦士の形奈とか言う女もこの焼失市に乗り込んで来たしな」


 加江須のその言葉で仁乃と愛理の二人は自分たちの母校付近で繰り広げられた戦いを思い出してしまう。そしてあの戦いが切っ掛けとなり黄美は精神的に追い込まれてしまった。あの時、もしもあの形奈が自分たちの学園に攻め込んで来ようとしてこなければ黄美は今も生きていたかもしれない。そう考えるとあの場に居た仁乃と愛理の二人の心には怒りが滲んでせりあがってくる。


 「そもそもどうしてあの形奈とか言う女はそのラスボとか言うゲダツに協力しているのよ! 要するに自分の願いを叶える権利をいい様に横取りされている訳でしょ!?」

 

 そう叫びながら目の前の机をバンッと感情に任せて思いっきり叩く仁乃。

 今この場に形奈が居る訳でもないので彼女の口から出て来た疑問に対してのその答えは加江須達には当然だが出てこない。だが彼女の怒りに関しては皆も同じ思いである。


 「転生戦士でありながら積極的にラスボに協力している形奈の狙いはわからない。だが今はその疑問を解くよりも先にラスボを倒す事に意識を向けるべきだ」


 もしかしたら形奈は自分とディザイアの関係と同様に手を組まざる終えない理由があるのかもしれないが、本人を抜いて考えたところで正解など出てこない。それに今は形奈ではなくラスボについて思考を優先すべきであるだろう。


 加江須は一度少し大きく咳ばらいをしてこの場に居る全員の意識を自身へと集中させる。


 「とにかく俺は一刻も早くラスボの討伐へと繰り出そうと考えている。そのことに対して何か異論はある者は居るか?」


 加江須が恋人達を見渡してみると皆の表情は全員が同じ様な強い瞳を自分へと突き刺している。分かりきった事を聞くなと言わんばかりの強い眼に自分のこの質問は愚問であったと心の中で反省する。


 「わざわざ確認する必要なんてないでしょうが。黄美さんは私たちを本当は嫌ってなんていなかった。それが分ったのなら彼女を生き返らせる為に出来る事を何よりも優先して行うべきでしょうが」


 「そういうこった。加江須だって俺たちの答えなんて分かりきっていただろう?」


 仁乃と氷蓮の言葉に対してイザナミもうんうんと頷く。

 

 「………」


 だがその中で愛理だけは少し気まずそうな顔をしていた。その理由を何となく察することが出来た加江須は敢えて何も言わないで話を続ける。


 「ああ…そうだな。訊くだけ野暮だったな」


 黄美の本心が全て分った以上はここに集まる皆の想いは同じはずなのだ。

 しかしいくら恋人達が自分と同じ思いを、そして覚悟を胸に抱いているとは言えこのまま旋利津市に乗り込むのは少々危険だろう。


 「出来る事なら今すぐにでもラスボが拠点としている旋利津市に突入したいところではあるが少し問題がある」


 ラスボ討伐の為には加江須には2つの懸念点が存在した。

 

 1つ目の懸念点、それはラスボの潜伏している具体的な居場所についてだ。旋利津市に腰を据えて居る事は把握できてはいるがそれだけではあまりにも大雑把だろう。まあこちらの点に関しては最悪ラスボが従えている半ゲダツを捕えて多少強引にでも情報を抜き出せばいいだろう。旋利津市に入れば前回の時の様に向こうから接触があるだろうし。だがもう1つの懸念点が加江須の中には残留していた。


 2つ目の懸念点、それは今の戦力で旋利津市に突入して無事にラスボ討伐に至れるかどうか、つまりは戦力不足感が否めないと言う点であった。何しろ加江須達は未だにラスボ当人と戦いどころか顔を合わせてすらいないのだ。そのゲダツの下に付いている劣化型の半ゲダツと1人の転生戦士だけに煮え湯を飲まされ、更には黄美を殺されている。


 加江須は自分の中の不安を包み隠す事はせず恋人達へと正直に話した。


 「ラスボを倒す為には俺個人は今のこの場に居る戦力だけでは正直不足している気がしてならない」


 彼がそう言うと仁乃達は今までの強気な発言とは裏腹に全員が無言で黙り込んだ。

 それは彼女達が自分と同じ不安を抱いていると言っているのと同義であった。現に彼女達も自分と同じように形奈や半ゲダツ達にいい様にしてやられているのだから当たり前と言えば当たり前だろう。

  

 「ねえ加江須君。私は…やっぱり今回は同行しない方が良いよね?」


 無言の静寂の中に自信の無さそうな愛理の言葉が小さく響く。

 彼女の口から出て来た言葉はとても弱々しく、自分ではこの戦いの足を引っ張る事を理解している様であった。だからこそ黄美を助ける為に旋利津市に乗り込むと言った際に彼女だけはどこか気まずそうな表情になっていたのだ。出来ることなら自分も加江須達と一緒に行きたい。だが経験の浅い自分ではとてもこの戦いに付いていけるかどうか分からないのだ。

 愛理としても自分一人が危険な目に遭うだけであるなら同行しているだろう。だが周りの足を引っ張り皆を危険にさらす事だけは我慢できなかった。特に加江須の性格を考えれば自分の身を案じて彼が自ら盾になる不安もある。


 「……そうだな。愛理は今回は大人しく留守番してもらうのが無難だろうな。ハッキリ言って雑魚相手ならまだしも人型タイプとのゲダツと戦うには足手まといになりかねない」


 腕を組みながら氷蓮はそう口にする。少し冷たいセリフの様にも感じるだろうが、しかし彼女の安否を想っての気遣いからくる言葉でもある。それが分かっているから彼女とは犬猿の仲である仁乃も特に氷蓮に対して言い過ぎだと文句を口にする気配もない。

 

 「今回は私も氷蓮の意見に賛成かしらね。愛理さんがこの戦いに参戦するのは少し不安だわ」


 「お、お二人とも少し言い過ぎじゃ…」


 ズバズバと言いにくそうな事を愛理に突き刺す二人を諫めようとするイザナミであるが、そんな彼女に大丈夫だと手で制する愛理。


 「気にしなくても良いってイザナミさん。むしろハッキリ言われなきゃ私もその気になって足を引っ張るかもしれないと思いつつも無理にみんなに付いて行こうとするかもしれないし」


 自分の頭を困り顔でかきながら苦笑を浮かべる愛理。


 「それにみんなが旋利津市でラスボをぶっ飛ばしに行っている間は焼失市には加江須君たちが居なくなる訳でしょ? その間は私がこの町を守るからさ」


 ラスボが率いる大勢の半ゲダツや転生戦士との戦いには付いて行けないかもしれないが、下級ゲダツぐらいなら愛理の力でも何とかなる。それに最近ではこの町にゲダツが現れる数も増加している気がする。それならば彼女には自分たちがこの町を留守にする間の守りを担当してもらうべきだろう。


 「よし…それじゃあ愛理、俺たちが居ない間はこの町の守りを頼むよ」


 「OK! そっちもラスボを倒して黄美を生き返らせてちょうだいね!」


 加江須と愛理は互いに拳を軽くコツンと合わせてそれぞれの健闘を祈る。

 こうして今回は愛理は町に留まり、加江須、イザナミ、仁乃、氷蓮の4人が本命が潜伏している旋利津市への突入に踏み込むことが決定した。しかしあくまでこの場に居る5人の行動方針が決まっただけだ。最初に加江須も口にしていた様に出来る事なら戦力をもう少し増加して戦いに赴きたい所だ。


 「ヒノカミはラスボ討伐までは願いを叶えられないと言っていた。これはつまり大半の転生戦士にとってはラスボに願いを叶える権利を奪われたも同じこと。俺たちの様にラスボを一刻も早く討伐しようと考えている転生戦士は他にも大勢いるはずだ」


 「となれば…私たちの次に行うべきことは…」


 イザナミが途中で言葉を区切り加江須の顔を見ると、彼はゆっくりと頷いて次に自分たちのすべき行動をこの場の皆に伝える。


 「次は戦力を集めようと思う。旋利津市に一緒に突入して共に戦ってくれる戦士を捜し出すぞ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ