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失恋した直後に死んだら俺にハーレムができました。恋人達は俺が守る!!  作者: ゆうきぞく
裏第三章 対人型ゲダツ編
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河琉VS烈火 2


 「ははッ、次から次へとキリがないな!」


 楽し気な声と共に河琉は次々と自分の足元から突出してくる土の槍を回避して行く。

 一度でも立ち止まれば烈火の能力で操っている大地の力に即座に捕まってしまうだろう。そうならない為に足を止めずに超高速で彼女の周囲を移動し続ける。


 「ここだッ!」

 

 烈火の操る地面からの攻撃を避けつつ彼は一気に彼女の元まで接近して行く。やはり彼女は能力を広範囲に展開する事はまだ出来ないらしい。恐らくは部分的に地面を操る事が出来るのだろう。そうでなければ地面を駆け回っている自分などもうとうに捕まえている筈だ。

 この河琉の読みは確かに当たっていた。地面を操る範囲や規模を大きくすればするほど烈火の神力の消費量も早い。しかし逆に言えば神力の消耗を気にしなければ今の様な部分的でなくより一層広範囲に自身の能力を発動できるとも言えた。


 接近して距離を詰めた河琉の爪が烈火に振るわれる。だがその爪が我が身に届く前に烈火本人の周辺の地面が盛り上がりドーム状となって彼女を守る。

 河琉の振るった爪はガギンと言うまるで金属でもぶつかったかのような音と共に跳ね返される。


 「硬い…そうとうの神力を練り込んでいるな」


 恐らくはあの防壁にはかなりの量の神力を練り込んでいるのだろう。今も足元から飛び出て来る土の槍もかなりの硬度だがあの防壁ほどではない。だが決してあの壁を突破出来ないと言う程でもない。先程攻撃をした箇所を見てみると大きく爪痕が残り抉れている。あと数度あの傷のついている箇所を重点的に攻撃すればあの壁も突破できるだろう。


 河琉が攻撃する場所に狙いをつけていた頃、ドームの内部でも烈火がどう攻撃するかを考えていた。


 「う~む…このドームを展開しつつ更には今も地面を操り攻撃もしているこの状況は……あまり好ましくないな」


 攻撃と防御の二つに対して特殊能力を、つまり神力を消費し続けるのは少し得策とは言えない。このままではこちらが先にスタミナ切れでばててしまう。

 だが相手もこの防壁を突破するにはもう数度アタックを仕掛けてこなければならない筈だ。ならばもう一度接近した瞬間を狙って攻撃を加える。


 「よし…そう言う事なら隙を見せてやらないとな」


 向こうから攻撃を仕掛けてもらう為にわざと攻撃の手を緩めようとする烈火。しかし本当にさり気なく、慎重に攻撃を緩めないといけない。あまりにも露骨に攻撃の勢いを緩めてしまえばあの勘の鋭い彼の事、違和感を察知して接近を躊躇うかもしれない。


 「慎重に…さあ近づいて来い……そうだ…そのまま突っ込んで来い」


 ドーム内から視覚ではなく感覚で相手の接近を察知する烈火。

 大地を操る特殊能力を持っているからなのか彼女は地面の上に立っている者の気配を察知できる力が有る。地面に足が付いていれば足音が発生する。地面に伝わる足音を感知して河琉がこちらへと近付いて来る事を完全に理解した烈火は準備に備える。

 そしてドームの外から再び凄まじい衝撃が伝わってくる。彼がこの壁を打ち壊そうとあの爪で攻撃を加えて来たのだろう。


 「今だ、捕まえたぞ!」


 彼女がそう叫ぶと彼女の事を守っているドームの形が変容した。

 半球形のドームの左右の壁が不自然に盛り上がって巨大な手となり、そのまますぐ近くの河琉の体をガッチリと捕まえた。

 これには河琉も完全に予想外だったようで驚きの声を上げていた。


 「うおっ、何だこの手は!」


 ドームで隔たれているとは言え距離が近い為か河琉の驚愕の声は烈火の耳にも届いており完全に虚を突かれたと言う感じだ。

 

 「どうやらこの勝負は私の勝ちの様だな……」


 勝利を確信した烈火であったがその顔はとても勝利者とは言えない表情であった。まるで自分が敗北する事を望んでいたかのように。


 ドームの内側では勝利を確信している烈火であるが、外の方では河琉が自分の間抜けさを嘆いていた。


 「ああもう馬鹿かオレは。あいつが操っているのは地面、つまりカンカンに硬い鉄とかじゃないんだぞ。それなら自在に形を変えて操って来てもおかしくないだろうに」


 神力を籠めていたせいで硬度が強化されていたので彼女の操る地面が元から鉄の様に硬い物質だと勘違いをしていた。つまり今自分を捕まえている様な人間の手を模した複雑な形に変形するとは思わなかったのだ。だがよくよく考えれば彼女を守っているドームだって隆起していた地面からの攻撃とは形状が異なる。この段階で相手が地面の形を変えて攻撃してくることを読んでおくべきだった。

 どうにか抜け出せないかと腕に力を籠めてみるが自分を両手で掴んでいる巨大な土くれの手は放してくれない。これは相当な量の神力を練り込んでいるのだろう。


 「一杯やられたよ烈火。でもな…まだ勝負はついていないぞ」


 完全に掴まって手も足も出せない状態でも未だに敗北を認めていない河琉。

 普通に考えればただの負け惜しみとも思えるだろう。だが実際は違った。確かにこうして捕らわれたのは少々想定外であるが彼女に近づくことが彼の目的だったのだから。


 「手も足も出せないからもう負けだと? いや違うね。まだ口が動くんだからな」


 そう言うと彼はカパッと口を大きく開いた。その開かれた口の向いてる先には先程爪で削った脆いドームの弱所。


 「すううううう……ガアアアアッ!!」


 大きく息を吸い込んだ後、彼は体内の神力を圧縮して口から獣の様な咆哮と共に神力をエネルギーの

塊にして吐き出した。

 彼の口から放たれた光の束は土くれのドームへとぶつかり、そのまま彼は光線を当て続ける。


 「な、何だ!」


 もう勝負がついたとばかり思っていた烈火はドームに加えられている攻撃に驚く。

 完全に手足を拘束した事で勝ちを確信した彼女もまさか口から光線をぶっ放すとは思ってもしなかった。

 そして彼の放つ神力の束は威力も凄まじく、徐々に徐々にとドーム全体に亀裂が走って行き、そして遂に防壁が崩壊した。


 「な、何だと! このドームをこうもあっさりと突破するとは!?」


 ドーム全体が壊れて崩れていけば当然彼を拘束している土くれの両腕も一緒に崩れ落ちる。

 ようやく万力の様な締め付けから解放された彼は着地と同時に一気に地面を蹴って烈火へと直進して行く。


 「ぐっ、まだだ!!」


 慌てて能力で地面を操ろうとする烈火であるが、彼女が能力を発動するよりも一瞬早く決着はついた。

 

 「まだやるか?」


 河琉の突き出した2本の指が烈火の眼球の手前で突きつけられて止まっている。指の先から伸びている爪はあと数センチでも前に腕を伸ばせば彼女の眼球を潰すだろう。

 

 「……参った。私の負けだな」


 どう考えても自分が何かをする前よりも先にこの鋭利な爪は自分から光を奪う事が出来るだろう。その未来がもうハッキリと見えているなら大人しく降参するしかないと諦める。だが敗北をしたにもかかわらず彼女はどこかスッキリとした顔つきであった。




 ◆◆◆




 「いやー参った参った! まさか手足を封じても口から攻撃が飛び出て来るとは完全に予想外だったよ!」


 「ああそうかい。たくっ…あんな激しい戦いの後だってのに元気なやつだね」


 正式に勝負の決着がついた後に二人は座り込んで話していた。

 手元に生い茂っている雑草を引き抜きながら河琉は先程の戦いを思い返していた。


 あの時に四肢を封じられた自分ではあるが何とか大逆転に成功した。しかし思えば自分が捕えられた際にそれ以上の追撃が来ることはなかった。もしも相手が慢心せずに動けなくなっている自分に追い打ちを加えていれば勝負はどうなっていたか分からない。

 今回の戦いはとても刺激になったがそれだけではない。相手が超人や化け物である場合慢心一つで死に至る事があると改めて強く認識できた。何故なら転生戦士、そしてゲダツには自分と同様の人智を超えている身体能力、そして多種多様な能力を兼ね備えているのだから。もう勝利だと確信した瞬間にとんでもないどんでん返しで敗北、最悪は死に至る事もあるだろう。


 「……それで?」


 「ん? それでとは何だ?」


 河琉の口から出て来た『それで』と言う断片的な言葉の意味が分らず首を傾げる烈火。

 我ながら少し言葉足らずであったと河琉も理解して改めて一から質問をする。


 「お前が勝負の前に言っていたオレと戦いたい理由その2だよ。1つは自分の転生戦士としての力を存分に振るって力量を確かめたいがため。だがもう1つの理由に関してはまだ教えてもらってないぞ。確かオレが勝てば教えるって言っていたよな」


 「あ…ああそのことか……」


 「約束通り教えてくれよ。お前がオレと戦いたかった2つ目の理由とやらを…」


 そこまで絶対に知りたいという訳でもないが勝負前の約束を守ると言うのであれば教えてもらってもいい筈だ。

 

 河琉に理由を問い詰められた彼女はまたしてもどこか照れているかのような表情になり、モジモジと指を合わせ始めてすらいる。

 そこまで言いにくいことなのだろうかと思っていると、ついに2つ目の理由を彼女は述べた。


 「わ、私が君と戦いたいもう一つの理由、それは君が〝強い男〟だと思ったからだ」


 「……そりゃお前と同じ転生戦士だからな」


 「いやそう言う訳ではなくてな……その……」


 しばし口を紡ぐ彼女であったが、ついに意を決して全てを話す。


 「私は強い男と出逢いたかった! そう、この私よりも強い男に! 何故なら……何故なら私は自分よりも強い男を伴侶として探し続けていたからだ!」


 そこまで言うと彼女は河琉の手を握って頬を染めつつ大声でこう言った。


 「玖寂河琉君! この私と結婚をしてくれないだろうか!!」


 あまりにも唐突過ぎる告白、いや婚約に彼は思わず目を点にしてしまった。 



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