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半グレの粛清完了、そして始まる捕食


 数十人の半グレ共がそれぞれが持参したバットや鉄パイプの様な危険な得物を握りしめて加江須へと雄叫びと共に走って向かってくる。

 自分へと血眼でなだれ込んでくる連中を加江須は取り立てて慌てず落ち着いて観察し、そして一番先頭にいた男が奇声の様な掛け声とともに武器を振り下ろした。


 「よっと」


 だが加江須はその一撃を軽々と避け、そのまま相手の手首を掴むと一瞬で骨を外してやった。

 

 「あ、あれ…」


 手首が急にブランと重力に従い下へと垂れ、その直後に凄まじい激痛が外された関節部から発生して男の脳に痛覚を知らせる。

 しかしその激痛に男が悶える事は無かった。何故ならば男が痛みを口にするよりも早く加江須が黙らせたからだ。

 手首が外されポロリと手に持っていた木刀が男の手から落ち、その木刀を地面に落ちるよりも早く加江須が手に持つと男の腹部を木刀で叩きつけて意識を刈り取ったのだ。


 「て、てめぇ!!」


 仲間の一人がやられた事で他の連中は次々に容赦なく武器を加江須へと振るってくる。

 その猛攻に対して加江須は全く焦らず、自分の真ん前に居る男の頭部を踏みつけて宙へと舞い華麗に地へと着地する。

 加江須が目の前に降り立った半グレの1人は慌てて攻撃しようとするが遅すぎる。彼が腕を振り上げた瞬間には木刀の柄で腹部を深々と殴りつける。


 「ごぼぉッ!?」


 腹部に走った衝撃に大量の胃液を吐き出して崩れ落ちる男。

 そこから加江須は脚に力を入れると凄まじい速度で次々と半グレ共を狩って行く。


 「ぐぎゃっ!?」

 

 「うげえぇぇぇぇ!?」


 「ぶほぉッ!?」


 手に持っている木刀の一振りで次々と半グレ共を行動不能へと陥らせる。

 もちろん相手側だってただ黙ってやられるつもりはなく各々の手に持つ武器で応戦しようとするがまるでお話にならない。


 「あ、当たらねぇ! げぼばぁッ!?」


 半グレ共の攻撃はまるで目の前の少年の体をすり抜けているのではないかと思う程に当たってくれない。まるで煙にでも殴りかかっている様な感覚だ。そして攻撃が空振りした直後にはたった一撃の反撃で戦闘不能にさせられる。


 そうして加江須が攻撃を開始し始めてからわずか1分足らずで半グレの残りの数は5人まで数を減らしていた。他の者達は全員が気を失ったり、腹部を押さえて嘔吐していたり、殴られて箇所を押さえて蹲っている。

 

 「うそだろ…このガキ本当に人間か?」


 未だに生き残っている半グレの1人が震えながら加江須の事を異形でも見るかのような目を向けて恐怖を抱いていた。そして生き残りの中に居るチャラ男に関してはもう完全に戦意を喪失していた。


 「(やっぱり勝ち目なんてなかったんだ。物の数分で、それも全員を一撃の下で沈めてんだぞ。大体あの動き人間離れしてるじゃぇねか)」


 もう勝ち目などないと思い今からでも逃げ出そうとするチャラ男、いや彼だけでなく他のメンバーも同じ思いであった。それを証明するかのように皆は一応は武器を握ってはいるが力なく武器が首を垂れるかの様に下へと垂れ下がっていた。

 今は加江須は様子を窺うかのように動きを一旦停止しているが、もし再び脚を動かし始めてこちらへ来ようものなら武器を放り出して逃げ出すかもしれない。


 「たくっ…だらしねぇな…」


 しかしこの中で未だに戦意が萎えていない男が一人いた。

 そう、この集団のリーダーを務めている刈り上げ男である。彼だけはここまで加江須の圧倒的な強さを見ても気力は衰えていなかった。


 「随分と調子づいているじゃねぇか。俺とも遊んでくれや!!」


 そう叫ぶと刈り上げ男は金属バットを固く握りしめ一気に加江須へと迫って行く。

 そのスピードは今までの半グレ共よりも速くはあるが加江須は特に慌てない。


 「……お前がこのカス共の親玉なんだよな? なら黄美たちを襲って不埒な真似を働こうとした計画もお前が言い出しっぺなんだよな?」


 そう独りでに口にすると加江須は木刀を捨て拳を固く握りしめた。

 

 「死ぃねぇ!!!」


 刈り上げ男が飛び上がると加江須の脳天目掛けて金属バッドを振り下ろして来た。容赦なく鈍器を人間の頭部に全力で振り下ろせば人の命だって奪いかねない。しかしこの男は全くの躊躇などせず殺す気で加江須の頭部を狙って振り下ろす。

 その命すら奪いかねない猛威に対して加江須はその場から動こうとはしなかった。このままでは頭をかち割られかねないにもかかわらずだ。


 「よっと」


 だが男の振るったバッドを加江須は荷物でも受け取るかのような気安さで受け止めた。

 普通であれば上段から全力で振るわれたバッドを素手で受け止めるなど思いついてもやらないだろう。仮に出来たとしても素手でそんな事をすれば受け止めた手がボロボロになりかねない。

 だが加江須は手の平を神力で覆っていたので振り下ろされた際に小さな衝撃を感じただけで済み、そのまま流れるように固く握りしめた拳を腹部へと叩きこんでやった。


 加江須の振るった拳は車がぶつかったかのような轟音と共に深々と刈り上げ男の腹部へとめり込んだ。


 「お…おお…?」


 自分の腹部へと視線を下げると加江須の手首手前まで拳がめり込んでおり、その拳が突き刺さっている箇所に鈍痛が走る。その痛みは徐々に重みが増していき男の口や鼻からは涎や鼻水が出て来る。

 だがこれだけの人間をまとめ上げているだけはある。苦悶の顔をしながらも男は加江須に掴みかかって来ようとしてきたからだ。

 だが男が伸ばした両手は加江須の肩を掴む事は出来なかった。


 「俺の恋人を狙った報いだ。こいつはオマケだ!!」


 そう叫びながら加江須の硬く握った拳が男の顔面に突き刺さった。その威力は絶大で殴られた男の体は比喩でも何でもなく吹き飛んでいった。

 空中から地上に落下した男の体はチャラ男の方まで滑って行った。


 「うわっ…ひでぇ…」


 自分の方まで転がって来た男の顔は酷いものだった。なにしろ鼻は曲がり歯も何本も折れているのだ。

 まるで漫画の様な人間の殴り飛ばされるシーンを見てチャラ男を含めた5人はもう逃げの一択を選ぶことを余儀なくされる。


 「逃がさねぇよ。全員制裁は受けてもらう」


 しかし逃亡しようとしたチャラ男がほんの少し走り出したときには他の生き残っていた仲間は全員倒れていた。電光石火の如く自分以外の人間がやられてしまい、そして加江須は最後の生き残りである自分の目の前まで移動を終えてこちらを睨んでいた。


 「ひっ…か、勘弁してくれ。もう十分だろ! これだけ圧倒的な力を見せつけりゃもう兄貴や仲間達もアンタには手を出さねぇよ」


 「そうだな…本当ならお前にもガツンと一撃入れてやりたいところではあるが、お前が協力してくれたお陰でこの馬鹿共をこの場に集められたのも事実だ。お前だけは勘弁してやるよ」


 「あ、ありがとうございます」


 自分だけは助かったと思い安堵の息を吐くチャラ男であったが、そうなると今度はこの後の兄貴や仲間達の報復に不安を抱き始めた。自分が嘘の報告で彼等を呼び出したのだ。怪我が治れば連中は自分に詰め寄ってくるだろう。そうなれば本当に殺されかねない。


 「な、なあ…物のついでだ。コイツ等に俺には手を出さない様に警告しておいてくれないか? アンタの言う事なら多分従ってくれるだろうしさ…」


 「ふざけるな。元々はお前のまいた種だろ? 俺に復讐をするために仲間を集めて襲おうとしてよ。何でそんなお前の事を弁護してやらなきゃならねぇんだ?」


 そう言われてしまうとチャラ男はもう何も言えなくなってしまっていた。そりゃそうだろう。そもそもの発端は自分が彼に因縁を付けた事から始まったのだ。完全なる自業自得なのにどうしてそんな自分を庇う気になどなれるだろうか。


 「とにかく後の事は自分でなんとかするんだな。俺はもうこれで……!?」


 半グレ共の粛清を終えたのでもうこの場に留まる理由もなく立ち去ろうとする加江須であったがここで異変に気付いた。


 自分たちの立っている浜辺からゲダツの気配を感じたのだ。


 「これはゲダツの気配。いやだが…」


 ゲダツの禍々しい気配を感知する事が出来た加江須であったがその数は1つではない。感じる気配の数は全部で5つもあるのだ。しかも気配の出所がまたおかしいのだ。


 「……間違いない。気配はこの浜辺…地面の下を移動しているぞ」


 自分たちの周辺の砂浜から気配を感じられたと思っていた加江須であるが気配は地面の上ではなく下を移動しているのだ。しかし下と言ってもここは砂浜だ。一体地面の中をどう移動していると言うんだ?


 「な…何だよ…?」


 突然険しい顔になりブツブツと言い始めた加江須の事を不審そうに見つめるチャラ男。

 だが今はそんな視線など気にしている場合ではない。


 そんな事を考えているとゲダツの気配の1つが倒れている半グレの真下まで移動して来た。


 そして気配が地中から上昇し――飛び出して来たゲダツが半グレの男に喰らい付きそのまま地中へと沈んでいった。


 「え…何だ今の?」


 チャラ男の目にはゲダツの姿は見えなかったが、しかし仲間の姿は視認できる。彼の瞳には倒れている仲間が不自然な体制で砂の中へと潜って行った様に映ったのだ。

 呆然としているチャラ男であるがそんな彼に加江須が一刻も早くこの場から立ち去るように叫んだ。


 「おいお前! 死にたくないなら今すぐにでもこの場から消えろ!」


 「な、なあ…何が起きているんだ?」


 「いいからこの場から立ち去れ! 今だってこの砂の下を5つの気配が動き回っている!」


 そう叫ぶがその怒号は結局無駄に終わった。

 何故なら加江須が叫んだ直後に砂の下からサメの様なゲダツが飛び出て来てチャラ男の腕に喰らい付いたからだ。



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