表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
152/335

番外編 恋人たちにとっての久利加江須


 伊藤仁乃にとって久利加江須は自分と同じ転生戦士であった。


 えーっと…初めてあのバカとの出会いは正直あまり印象の良いものではなかったと思うわ。

 確か学校に登校中にあのバカとぶつかったんだっけ? まあそれは別にどうでも良いとしてあいつ…私のむ、胸を見ていた気がするわね。そのせいで変態呼ばわりしたっけ? いやあれは見ていたわ! そうよそう、うんあの時の私は正しい筈よ!!


 しかもその日の学校の昼休みでまたあいつと遭遇したわね。確か購買でパンを買おうとしていた時だったわね。しかもその後に屋上まで連れていかれてあの時は告白でもされるのかと心臓がドキドキしたっけ。まあ…今はあのバカとモノホンのカップルだけどさぁ。でもあんな強引に屋上まで引っ張られると誤解しちゃうじゃない…バカ…。


 あいつの正体が自分と同じ転生戦士である事を知った時は少し嬉しかったわね。なにしろ自分が赴くゲダツの戦いに味方をしてくれる人なんてあの頃はいなかったし。最初は自分よりも転生して日が浅いとの事で後輩呼ばわりしていたわね~。まあ今では逆に守られる事が多くなったけど、でもいつまでも加江須の背中に隠れてるなんてごめんだからすぐに強くなって見返してやるけどね! それに…あいつには脆い面がある事も知ってしまったからね。前に学校の屋上で感情むき出しで泣いていた事もあるし意外と子供の様なところもあるのよあいつは……。


 それにしても…それにしてもさぁ5人も恋人を持っているなんて少し流されやすい性格なのかしらね? まあ…別に嫌とかではないけどさぁ……。それに全員を命を懸けて守ると言ってくれた訳だし大事に想ってくれているなら口やかましく言わないで上げても良いけどさぁ。 もしかしてまた増えたりしないわよね?

 でもあいつは私たちの為なら体を張ってくれるけどそれが少し不安に感じる事も多々あるのよね。自分が弱いせいでゲダツとの戦いではあいつが私たちの前に立つ事が多いわけだし…。そんな姿を頼もしく思う反面に不安も感じる。私たちを置いて先立たないかなんて不謹慎な事も微かにだけど考えてしまうわね。だって実際に私たちとゲダツの戦いは命懸けだし。


 だからもう少し待ってなさい加江須。今にあんたと同じ、いやそれ以上に強くなってあんたの後ろでなく隣で戦って見せるから。そうすればまた後輩クン呼びでもして笑ってやるんだから。


 大好きなあんたを…絶対に失いたくないから……。




 ◆◆◆




 黒瀬氷蓮にとって久利加江須は協力者であった。


 初めて加江須の戦闘を遠くで観察していた時は思わず背筋が凍ったね。氷を操る能力者であるこの俺が。え、ソレは関係ないだろって? まあそれはともかくあいつの戦いを観察してこれは使えるなっておもってよ。自分よりも確実に強かったしよ。


 確かあいつが仁乃のヤツとデート? でもしていた時に声を掛けてみたら案外すんなりとチームを組む事が出来たわけだ。まああのおっぱい魔人はグチグチうるさかったけどな。いや今も口うるせぇかあいつは…。俺にはある叶えてぇ願いがあるがそのためにゃゲダツを倒してかなきゃならねぇ。その為に強い味方が必要だったわけだ。それがチームを組んだ理由だ。


 最初はゲダツを倒せる戦力が欲しかっただけだったのにな…それが戦いを共にするごとに今じゃあいつを一人の男として見るようになっていたっけ。でもゲダツとの戦いで俺を守ってくれたあいつはめちゃくちゃカッケーと思ったよ。そんで自分が異性に恋したのも我ながら驚いていたな。でも嫌な気は全くしなかったよ。


 余羽のやつのマンションで仁乃のやつに後押しされて俺も無事に自分の想いを伝えることが出来た。

 少し癪だけどあの時の仁乃のヤツには少し…本当にすこーしだけ感謝してやんよ…ケッ!


 ただのチームメイトから大切な彼氏様となったあいつはホントに優しくてよ。でも守られっぱなしってのは俺様の性に合わねえ。だから早く強くなってアイツに頼られる転生戦士になってやんぜ。だから期待して待っていろよ加江須!!




 ◆◆◆




 紬愛理にとって久利加江須は親友の幼馴染であった。 


 彼の事は黄美の話でしか聞いた事が無かったけど苦労人だって事は顔合わせの前からもう理解できたかなぁ。なにしろ黄美ったら今と違って極度のツンデレさんだったからねぇ。私が幼馴染と上手くやれているかなんて訊くと顔を真っ赤にして否定していたなぁ~。今はもう加江須君にデレデレ甘々っぷりを発揮しているけど。


 でも実は私の知らない所で加江須君と黄美の関係は最悪な方へと進んでいたんだ。どうやら黄美は照れ隠しの為に加江須君にけっこー辛く当たっていたみたいでね。そのせいで彼は黄美を幼馴染でなく他人として見ようとすることにしたみたい。徐々にやつれて行く黄美を見て居ても立っても居られなくなって加江須君に仲直りしてほしいって頼みにも行ったよ。今は二人が仲良くしてくれるようになって心底ホッとしたよ。


 私が彼を黄美の幼馴染でなく一人の異性として意識するようになったのはストーカーから助けてくれた時かな。でもそれと同時に彼が普通の人間でない事を知って驚いたっけ。だって神様とかゲダツとかファンタジーの世界だし驚くなって方が無理があるよ。


 でも人生どうなるか分かりませんなぁ~。まさか黄美と一緒に自分も加江須君と付き合う事になるなんて昔の私なら予測できなかっただろうね。

 でも色々あったけど今は幸せだと心の底からそう言えるよ。だって親友と好きな人、その二人の笑った顔をこんなにも近くで見ていられるんだから。


 とにもかくにも今後ともよろしくお願いね加江須君♪ 黄美を大事にするのもケッコーだけど私の事も構ってね。




 ◆◆◆




 イザナミにとって久利加江須は自分が生き返らせた人間の少年であった。


 そうですね…初めて彼と出会った時は少し怖い人ってイメージが私の中にありました。でも今の加江須さんはとっても優しくてそんな事はありませんが。それに…不安な私を甘えさせてもくれますし…♡ 


 地上ではゲダツが人々を喰らって世界に影響を与えている為、私は彼に転生戦士になってほしいと頼みました。少し悩んでいましたが加江須さんは引き受けてくれて戦う道を選んでくれました。それが有難いと同時に申し訳なくも思いました。せっかく生き返っても危険な戦いの世界に足を踏み入れる事になるのですから……。


 親からの縁談から逃げたくて地上に降りた際には彼の家へとお世話になりました。まあ今も加江須さんやそのご両親にはお世話になっていますが…えへへ……。

 でも行く当てのない私を家に置いてくれた時にこう思いました。初めて転生の間で出逢った彼は少し荒々しい性格かと思いましたが、本当の彼はとっても優しい心根を持っているんだと。


 そして私が彼に恋をした決定的な瞬間、それは私をこの地上に引き留めた時です。


 神界でのルールを破り連れて行かれそうになった時に彼は私を庇ってくれたんです。自分を連れ去ろうとしていた相手が神でありながらも彼はそれを恐れず私を正しい行いをしたんだと叫んでくれた。それが本当に…本当に嬉しかったです…ぐすっ…。

 しかし私は神界から追放されてしまいました。行く当てもない私はまた加江須さんの元まで足を運ぶと、彼は自分を迷うことなく家へと再び招き入れてくれました。そして内心で打ちのめされている私を優しい神様だと認めてくれ…す、すいません。ぐすっ…す、少し待ってください。思い出したら涙が…うぅ…。


 ずず……す、すいません続きを話しますね。私の様な追放女神を優しく、そして温かく受け入れてくれた彼に私は惹かれてしまいました。最初は自分の胸の中のこの恋と言う感情をひた隠そうとしました。でも他の恋人のみなさんに背中を押されて私は加江須さんに想いを伝えました。その結果彼は私を心の底から受け入れ、今では私はとても幸せを実感できています。


 ありがとうございます加江須さん。こんな私を認めてくれて…そして愛しい人として迎え入れてくれて。




 ◆◆◆




 愛野黄美にとって久利加江須はずっと大好きだった幼馴染であった。


 今の私はカエちゃんとラブラブに過ごせているけど、でも昔の私は本当に酷い幼馴染、いや酷い人間だった。なにしろカエちゃんに対して散々心にもない罵声を浴びせて苦しませていたんだから。

 

 小さなころは二人でよく一緒に遊んでいた。カエちゃんとあだ名まで決めて笑い合っていたわ。でも少しずつ年齢や精神が大人になるにつれて私は素直に振舞えなくなった。今までカエちゃんと呼んでいた私は彼を久利と呼び、そして事あるごとに侮蔑した。本当は大好きなのに……。

 それでもしばらくはカエちゃんは私に対して昔の様に優しく接して来た。でもその度に私はそんな彼を恥ずかしさから拒絶し追い払った。


 でも私にそんな態度を取られ続けてとうとうカエちゃんは私を見放したんだ。もう私を赤の他人として見ると言われたっけ。当たり前と言えば当たり前だけど…。

 今更ながらその瞬間に私は自分がどれだけ彼に対して酷い事をして来たかを思い知った。そして都合よく嫌われてからようやく昔の関係に戻ろうと必死になったの。でもカエちゃんは私を中々受け入れてはくれなかった。

 そんな中で仁乃さんと仲良くしている彼を見て嫉妬に塗れもした。そんなやっかむ資格なんてあの頃の私にはあるはずもないのにね。本当に滑稽だったわ。

 

 だけどカエちゃんはもう一度だけ私とやり直そうと言ってくれた。その時に私はもう二度と自分に嘘をつかないと決心した。彼を好きだと言う気持ちも隠さず彼と遅れながら一緒に学園生活を送れるようになった。


 そして…カエちゃんは私を、私たちを受け入れてくれた。

 

 本当に嬉しかった。ただただ嬉しかった。私を受け入れてくれた事、そして私を許してくれた事を。

 勿論交際したからと言って私の醜悪な過去が消えてくれるわけでもない。あの罪深い自分の過去を決して忘れてはいけないと自分でもわかってる。


 今までごめんなさいカエちゃん。でも、もう間違えないから。この先は自分の素直な気持ちを隠さずあなたの隣に立つ事を許してください。


 そして恋人として共に歩ませてください。私の大切で愛おしい人……。



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ