城門前にて
たかしは何とか城門前へと到着した。トシヒロの姿は見当たらない。すでに城の中へと通されてしまったのだろうか。
城門前には、またしても2人の門番がいた。町の門番と違うのは、町の門番が銀の防具をつけていたのに対し、城門前の門番は金の防具を装備していたことだ。
「何用だ! ここは、貴様のようなおかしな服装をした平民が立ち入っていい場所ではない! 今すぐ立ち去れ!」
「殺されたくなければ、立ち去るほうが懸命であるぞ」
2人の門番は、たかしに金の長槍を突き立てる。
「ヒッ! ……あの、聞きたいことがあるんですが、さっき、トシヒロという私の友達がコチラに呼ばれたと思うのですが……?」
「お前に答える義理はない!」
「トシヒロなんていうガキが、裏門から入ったなんていうことは、断じてない!」
「え? 裏門?」
「このバカ、言わなくていいことを……そうだ、トシヒロというガキは、裏門から入らせた。だが、これ以上詮索するようなら、容赦なく貴様の首を真っ二つにしてやる!」
「そ、そうだ……斬って、今の失言をなかったことにしてやる!」
「ヒッ! し、失礼しましたー!」
たかし は 逃げた。
たかしは、そのまま裏門へと向かった。
「ふぅ……ここか」
裏にある鉄門扉は正門とは違い一般の家の玄関扉ほどの大きさで、門番は1人しかいなかった。こちらも金の防具を身に着けていた。ただ、正門とは違い、こちらの門番は、扉の向こう側にいたのだった。
「あ、あのー」
「なんだ?」
扉の向こうの門番は、気だるそうに答えた。
「実は私も先程の友人と同じ理由で王様に呼ばれているので、入らせてください」
たかしは嘘をついた。
「ということは、貴様も選ばれし勇者の1人、ということか?」
「え、あ、はい、ソ、ソウデスネ、ハハハ」
「ん? 聞くところによると、勇者を招いたのは3人ということだったが……まぁいいか」
何やら不穏な空気が一瞬流れたが、扉の向こうの門番は自分の勘違いだと思い、扉の鍵を開けた。
ガチャンッ!
ギーというサビレた音とともに扉が開く。
「それにしても、おかしな服装をしているな。靴くらい履いたらどうだ?」
「あー、これ最近流行りのファッションなんすよ。あ、どうも」
「城内に入ったら、3番めの角を右に曲がったらあとは真っ直ぐに進んでいけ。最奥が王様のいる玉座だ」
「あざッス!」
たかしはまんまと城内に入ることに侵入した。しかし、なんで裏門から? 正門からではいけない事情でもあるのだろうか?
「深く考えるのはやめておこう……」
たかしは首を横に振ると、王様のいる玉座へと向かうのだった。