表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/100

96話「窓」城新地。

 これは友達から聞いた話なんだけどよ。



 矢野が小学生の頃だ。親と一緒に買い物に出かけて、それで駐車場の車の中で待ってたんだ。もちろんエンジンはかかっててエアコンも効いてた。


 親の入った店に興味のない矢野は、買ってもらった漫画を読みながらジュースを飲んで、まあ悪くない環境だった。


 親が帰って来るまで、長くて10数分。矢野は当然、何の不安もなく車の後部座席でくつろいでた。


コンコン


 突然、窓を叩く音がした。


 矢野は親が帰って来たと思ったんだが、車の外には親はおろか、誰の姿も見えない。本から顔を上げるタイムラグはあったにせよ、そんな瞬間で車から離れるわけはない。もしくは窓の下に隠れてるかだが。そんなイタズラの目的が分からない。


 結局、気のせいという事にした矢野は、気を取り直して、また本を読み始めた。


コンコン


 再度の音。だが、ちらりと周囲を見回した矢野は、今度こそ無視を決め込む。両親じゃない以上、イタズラは無視で構わない。


ゴンゴン!


 音は、大きくなっていた。少しずつ、そして今は窓ガラスが割れんばかりに。


 もう本を読んでいるフリも出来なくなった矢野は、窓の外をギラギラした目付きで眺めたが、それでも何も見えなかった。


 矢野は考えた。ドアを開けるべきか否か。


 答えは簡単に出た。窓の外に居るモノを信用出来ない以上、親を待つ。


 矢野は全神経を集中して本を読む事に必死になった。耳がおかしくなりそうな轟音も、車が揺れるほどの振動も、全て無視した。


ガチャリ


 矢野の体感時間では、1時間。実際には8分間が経過した時、親が車を開けた。



 人生で一番怖かった瞬間は、親が帰って来た時だった。


 矢野は今は笑ってそう言っている。


 これでおれの話は最後だ。


 じゃあ、次。よろしく頼むぜ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ