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80話「事故物件」亀戸玄武。

 これはぼくの兄貴が出会った話なんだけど。



 兄貴は数年前に結婚して、ちょっと良いマンションに新居を構えた。家族が増える事を想定して、広めの家にね。


 ぼくも何度か遊びに行ったけど、本当に居心地の良い部屋だったよ。


 それで、兄貴が引っ越した直後の話なんだ。


 隣近所への挨拶も終わって、荷解きも進んで、新生活もなんとか落ち着きを見せて来た。


 そんな時、部屋の真向かいにあるマンションの一室で、こっちを見ているような位置に望遠鏡がセットされてた。多分、天体観測用なんだろうけど、イヤな位置に置くなあ、と思ったんだ。


 ところがその望遠鏡は、夜になってその部屋に明かりがついても、こちらを見ていた。どころか、望遠鏡をのぞいている人間が、こちらに手を振っていた。顔は望遠鏡で見えなかった。


 ムカついた兄貴は、野球のボールを投げつけ、一発で望遠鏡を破壊した。兄貴はプロ野球選手なんだ。


 それから向かいのマンションの階層を確認して、兄貴は望遠鏡野郎の部屋に突入した。チャイムを鳴らして出て来なかったら、ドアも破壊するつもりで。


 しかし思惑に反して、扉は素直に開けられた。中からは、なよなよした男が出て来た。


 「てめー、どういうつもりで人んちのぞいてんだ」「あの、いや、その」


 中々明瞭な返事は返って来なかったけど、兄貴は辛抱強く聞いてみた。


 すると、だいたいこんな経緯らしい。


 今、兄貴達が生活している部屋で、事件が起きた。警察の捜査も入って、近所は大騒ぎになったらしい。こいつの望遠鏡も、その時の捜査を見物するために購入したとか。


 そんな事故物件に一年ぶりに新しい住人が入ったから、興味本位でのぞいたんだと。


 兄貴は別に殴りもせず、話を聞いていた。


 「それで。どんな事件だったんだよ」「・・・自殺者が出たんです」


 自殺?そんな事で、そんな大規模な捜査になるのか?疑問を顔に出していた兄貴は、さらなる情報を引き出した。


 自殺は自殺でも、自殺サークルの舞台になったらしい。だから一部屋にぎっしり人が入って、20人以上での大規模自殺だったらしい。


 そういえば、そんなニュースを聞いた事がある。ここだったのか。兄貴は舌打ちした。


 情報を得た兄貴は、もうのぞくなよ、と注意だけして帰った。うかつにおどすと、自分も器物破損で訴えられるからね。


 それから数日後。


 お義姉さんとぐっすり眠っていた兄貴は、人の気配に目を覚ました。


 周囲には人がぎっしり入っていて、その全員が土気色をしていた。


 兄貴は、心底、ブチ切れた。


 1人1人、幽霊の頭を掴んで、握り潰して行った。


 兄貴は新婚生活の邪魔をされて、静かに怒り狂っていた。


 それから兄貴は幽霊の気配を感じなくなったらしい。



 ぼくは格闘技をやっていてまあまあ強いんじゃないかな?と思ってるけど、兄貴とはケンカしないよ。


 兄貴は、無茶苦茶な人なんだ。


 じゃ、次!

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