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73話「ボコッ、ボコッ」藤宮蛍。

 これも日本の古い昔話。ホラーなのかなんなのかは分からないけど。


 昔。九州のある地方での出来事。



 日本全国どこでもそうだけど、その村も貧しい村だった。天候に恵まれれば豊作。そうでなければ凶作。今とは違う時代だから、何をするにも限界があった。


 とある年。村には疫病えきびょうが流行った。きっかけは分からない。はっきり言えば、昔という時代は、いつ疫病が流行ったっておかしくはないんだからね。ウイルスや病原菌という言葉の生まれる前だもの。


 だから病気になっても安静にしておくしかなかったし、かと言って体力をつけられるほど食べ物の余裕があったわけでもない。


 病は家族へ、家族から村人へ、村人からよそ者へ。


 村はおよそ、地獄の様相をていしていたわ。どうやっても助からない。そんなこの世の終わり。


 でも地獄にも終わりは訪れる。


 流行り病は嘘のように収まって、体力の残っていた村人は全員症状が回復した。死人も、村が消えるほどには出なかった。


 それで一件落着、だったら良かったんだけどね。


 村では集合墓地が作られていた。死体を一々個別に埋葬まいそうする手間もかけられないほど、切羽詰せっぱつまってたんだね。


 その墓地の横を通りかかった村人が、言うんだ。


 何かが動く音がした、って。


 何か・・・。イノシシ?クマ?狼?猫?それとも猟師の犬か。動いて音を立てる生き物なんて、いくらでも居る。


 でもその村人が言うには、ガサガサと草を分ける音じゃなく、土がボコボコいう音だったんだって。まるで、巨大なミミズかモグラでも居るみたいに。


 まさか、幽霊?それとも鬼?


 ちょっとした怪談になったけれど、それだけだった。墓場に好き好んで行く人間も少なかったし、まだまだ肝試しが出来る余裕もなかった。


 でもそれから、ボコッ、ボコッ、という音を聞く人間は増えた。



 今でもその村に行くと、その音は聞こえるらしいよ。


 いつか、行ってみるのも楽しそうだよね。


 じゃあ次。

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