表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/100

72話「酒蔵」風祭順。

 これは私の駆け出しの頃のお話。はっきり言って恥ずかしいから、短めでもごめんね。



 とある酒蔵さかぐらに取材に行ったんだよ。季節は冬。熱燗あつかんが美味しかったなあ。


 東北地方の酒造メーカーでは新参になるその酒蔵なんだけど、味はめちゃくちゃ良いんだよ。若者向けなんだけど、媚びてはない、っていうか。若い味をそのまま出してるっていうか。


 そこは湯楽酒天ゆらくしゅてんていうお店なんだけど、当時、店には私の他にもお客さんが居たんだ。


 写真家の三好みよしさん。私と同じ、フリー記者の内藤さん。酒飲みの田中さん。


 この3人と私とで見学させてもらってたの。写真撮影とかインタビューとかもね。


 それで午後4時くらいかな。試飲もさせてもらって、ほろ酔い気分で帰ろうとしたら、出れなくなっちゃって。別に酒蔵の人に閉じ込められた、とかじゃなくて、ちょうど大雨が降ってきたのよ。


 私達も天気予報は知ってたから、傘は持ってたんだけど、傘も意味をなさないくらいの豪雨で。結局、酒蔵の方のご好意で、少し雨宿りさせてもらう事になったの。まだ4時だから、帰りが遅くなりすぎる、って事もないしね。


 それで暇つぶしがてら、酒蔵の奥も見学させてもらう事に。手すきの従業員さんが1人いらっしゃったから、その方の案内でね。そこは昔使ってた道具の保管庫で、今はもう使ってない歴史的な資料みたいなものね。昔から受け継がれてきた道具はホコリをかぶってたけど、まだまだ頑丈そうに見えたわ。歳月の流れに耐えた道具達だから、当然かもね。


 私と内藤さんはそんなでもなかったんだけど、三好さんはとても楽しそうだったわ。写真も撮らずに、酒蔵の人から話を聞いてて。やっぱり、こういう歴史のある建物が好きなんですって。


 そして奥に行けば行くほど、歴史は古くなって、機構もより原始的に。


 出て来るお酒も、より古く。濃いものになって行ったわ。


 今のお酒みたいな綺麗さは全くない。ダイナミックなアルコール分と、雑味。お酒を飲んでいるというより、発酵はっこう食品をそのまま食べている気持ちになったわ。


 少しだけ。そんな感じでがれたおちょこは、言うまでもなく、何度も何度も満たされ続けて、ついには全員がべろんべろん。案内をしてくれた酒蔵の従業員さんもね。



 お酒って、本当に怖いわね。皆も飲み過ぎには気を付けて。以上よ。


 ・・・だから言ったじゃない。全然怖くないって。


 じゃ、じゃあ次の人、どうぞ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ