7話「ゾンビ3」水野智之。
ごほっ、えー。初めまして、皆さん。水野 智之と言います。昆虫学者を目指している大学3年です。今回は昆虫を探して山をうろついていたんですが、なぜか迷ってしまって。ここ、地元なんで、迷う理由が無いんですけどね。まあ河童の川流れという事で。
それで、なんですか。百物語ですか。
正直、皆さん、すごいですね。よくそんなにお話知ってますね。ぼくなんか、虫以外何も知りませんよ。本当に。
でも、ちょうどきっかけを作ってもらえたんで、なんとかやってみましょう。
さっきのゲームの話。ぼくも知ってますよ。
ゾンビとかなんとかは全然興味ないんですけど、ゾンビらしい生命体には興味あります。一般的には寄生虫とかですかね。
宿主からエネルギーをもらったり、操ったりして生きる生命。ゾンビも、そこにヒントを得ているんでしょうかね?
そうした生命活動に惹かれて、大学の友人に貸してもらってプレイした事があります。まあ、結果的には、難しくて投げちゃったんですけど。
それでも、友人に貸してもらった攻略本に載っていた設定資料は、楽しかったですよ。
ゾンビもまた、命令を聞く。そうした種類のゾンビも存在する。
ゲーム中の黒幕は、人間を群体にしたいようですね。ハチやアリみたいに。
分からないではないです。命令に絶対服従して、決して裏切らない。ワガママも言わないし自分勝手な行動も取らない。下っ端として見れば、理想の存在でしょう。
ただ、人間同士のコミュニケーションが重要視される仕事では、まだ全然使い物にならない感じです。自我が破壊されるから情報のやり取りが出来ないし、行程の変更なんかには全く対応出来ないでしょう。もちろん、一緒に計画を練ったり、意見を言ってもらうなんて、とても出来ない。
本当にアリやハチぐらい単純な仕組みでないと、使い物にはならない。しかも、それら昆虫と同じく、殺虫剤で死ぬ。正確には血清でしたっけ。
アリほどの繁殖力も、ハチのような飛行力も無い。人間サイズの大きさで、複雑な命令は実行出来ない。
あんまり、有用ではなさそうですね。日本国内で一般人を襲う、それぐらい難易度の低いミッションなら出来そうですけど、それって誰でも可能ですし。歯に衣着せぬ物言いをするなら、自動車に乗った一般人はゾンビより怖いです。
結局の所、ゾンビより強い生き物が世の中にはわんさと居て、どうやっても崩壊には持ち込めない。
これはつまり、地球に存在する全ての核爆弾を均等に地上を覆うように爆発させたとしても、恐らくゴキブリやアリは生き残っている、という議論に似ています。人類が正気を保てなくなったとしても、自滅したとしても、他種族は平気で生き残る。
その前では、ゾンビなどという人の成れの果てなど、脅威と呼ぶに足りない。
真に怖いモノは、既に存在している。
いや。
人類より、遥かに長生きしている。
畏怖こそが自然感情。
ゆえにこそ、その畏敬を忘れたヒトのためのホラー、でしょうかね。
恐怖を忘れてはいけない。人が生きているのは、当然ではない。
他の生命体との弛まざる生存競争のまっただ中に居るのだと、覚えておかなければならない。
長々と変な事を語ってしまいました。
では、次の方、お願いします。