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68話「蝶」明野未明。

 これは私の先輩から聞いた話なのですが。



 先輩は研究のために、東南アジアの某国を訪れていました。日本とは風土も気候も違う土地に刺激を受け、先輩のスケッチブックはドンドン埋まって行きました。


 そして先輩は地元住人に教えてもらった穴場スポットに向かいました。漁船で連れて行ってもらう小島です。観光ガイドにも載っていない本物の穴場。人間が滅多に入り込まないので、自然環境が手付かずのまま残っているとか。


 先輩は心をときめかせながら、その島に到着しました。


 島は確かに野生の力にあふれていました。ヤシガニ、リクガメ、コモドオオトカゲ。先輩は危険極まりない島に居ながらも、自分の発想限界が伸びるのを感じていました。


 幸せな気持ちを抱えながら、帰りの時間になりました。さて船に乗ろうとしたところ、先輩の足は動かなくなりました。力が入らなくなったのです。


 毒?動物に噛まれた覚えはないから、毒草に触れてしまった?


 先輩はパニックにおちいりながらも、船員に助けを求めました。しかし船員は来てくれません。


 むしろ船は、先輩を置いて、島を出てしまいました。


 動かない体で先輩は絶望しつつ、それでも考え続けました。この毒が致死毒でなく、かつ肉食獣に襲われなければ、生き残れるかも知れない。


 かろうじて動く手先のみでリュックサックをあさり、ケータイをつつきました。いざという時の緊急番号を片っ端から試しました。大盤振る舞いです。


 そして先輩は賭けに勝ちました。


 ケータイの発信を探知した地元海上警察が救助に来てくれたのです。


 そして先輩は病院で毒の原因を聞きました。


 その由来は、蝶。島に生息するある種の蝶の鱗粉りんぷんを摂取してしまうと、肉体が麻痺してしまう。


 言われて先輩は思い出しました。ヤシガニを見ている時も、リクガメを愛でている時も、いつも蝶が飛んでいたのを。



 先輩の今のテーマ、なんとなく分かりますよね。


 あの蝶を追いかけているんです。


 殺されかけた、そう言い切って良い相手ですが、先輩はその蝶の魅力に取り憑かれました。全く芸術家はがたいものです。


 では、次の方。

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