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64話「幽霊屋敷」透真瞬一。

 皆さんは家族連れでの旅行などされますか?私は今は独身生活を楽しんでいるので、実家に帰った時でもなければそういった機会もありません。


 子供の頃は、近所のデパートに連れて行ってもらうだけで、大冒険でした。子供の足ではとても回りきれないほど広く感じたものです。


 今回は、そんなデパートにまつわるお話です。


 これは友人から聞いた話なのですが。



 友人はとあるデパートの企画で、幽霊屋敷の運営に関わっておりました。すでにいくつもの企画を成功させていたので、今回も手応えを感じながら、上手くスタートさせたようです。


 事件は、幽霊屋敷イベントが運営されている真っ只中に起こりました。


 友人は一日の営業を終えた施設内の最終確認を行っていました。何かのアクシデントでお客様が残っている場合もありますし、それ以上に視認性の悪い施設の中では落とし物の数がバカになりません。職員が合間合間にチェックしていても、です。


 今回もそんな落とし物が一つ。


 物は皿でした。結婚式の記念品?それを子供が持ち歩き、親の気付かぬ間に落とした?


 もちろん、事前に割れ物を持っていたなら、受け付けで止められます。単純に危険ですからね。


 という事は、幽霊屋敷に入ってから、取り出されたもの。面倒な真似を。


 友人はとりあえず皿を手に持ち、他にも落とし物がないか、巡回を続けました。スタスタ歩けばあっという間に終わる道ですが、一々物陰をチェックしていれば、それなりに時間もかかります。


 デパート全体の終業時間までにはまだ時間はある。そう考えながらも、友人はなんとなく足早になっていたそうです。


 その時だけは、何か嫌な予感がしたとか。


 なんとか施設内および外側のチェックも終了。最後まで残っていた友人も、やっと帰れる事に。


 しかしその時、すでに異変は起きていたのです。


 デパートの3階にて行われている幽霊屋敷。そこから帰ろうと階段を降りた先には、また3階の表示が。


 疲れによる幻覚?錯覚?


 しかしどちらでもない。友人には、その時周囲で働いているはずのデパート従業員の声も何も聞こえなかった。それどころか、店内BGMすらも。


 精神的に疲労してしまった友人は、元の場所。異変が起きる前の場所である、幽霊屋敷に戻っていました。


 少し座って休んだ後、友人は再度、幽霊屋敷に足を踏み入れました。そこに行けば、元に戻れるような気がしたのです。


 スタッフの帰った幽霊屋敷では、当然ながら、何も動くものはありません。


 では、恐怖演出の一切ないお化け屋敷とは、一体どんなものでしょうか?


 答えは、綺麗な廃墟。生活感の一切ない、確かな人の痕跡がありながら、住み家ではない場所。


 それでも電灯の明かりを頼りに歩いていると、確かに自分は文明の中に居るのだと感じられました。電気のある世界に居るのだと。


 それから、わずか数分。幽霊屋敷を一周して外に出てみると、そこにはスタッフが戻っていました。


 行方不明になった自分を探しに来てくれた?少し感激した友人ですが、よくよく考えてみると、友人の異変はどんなに長くとも数十分だけ。


 では、なぜ?


 スタッフと会話してみると、驚きの事実が友人を襲いました。もう次の日だったのです。


 つまり友人はあれから夜間の時間を全てデパート内で過ごした事になります。



 以上が私が友人から聞いたお話です。


 友人は言っておりました。


 幽霊屋敷は時間が経つのも忘れるほど素敵な場所だと。もちろん、今でもそこで働いていますよ。


 皆さんはどう思われますか?


 では、次の方。

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